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十 行動開始

 さて、テロリストに乗っ取られた宇宙航空局所属の訓練実習に当たっていた航宙艦『フレイド』

 今そこでは、学生であるプランキッシュ・ゲリラとライトニング・ブルーの面々が、テロリスト相手に怯えると思いきや、対テロリストのゲリラ活動に当たろうと作戦を練っていた。

「遭難者がテロリストとは、普通思わないわなー」

「でもこれが現実。ありがたくない現実だけど」

「さて、どうする?」

 対処を間違えば、この船と乗組員クルー、自分達の命がない。

「でも、なんでこの船を奪取することを選んだんだ? たまたまではないだろう?」

「クルーを殺していないことも頷けない。なぜ全員無事なんだ? なぜ生かしておく?  船を盗むのが目的じゃないのか?」

「たぶんね」

 グレイスは考え込んだ。

 ――この船そのものが目的ならば、人員は不要なはず。消しにかかるはずだ。

 ――それをしないのは何故だ? 操船が難しいようであれば操船員を残し、他の者の命を消せば彼らの労力は半減する。

 暫く考え込んだ後、グレイスはフレッドに指示を出した。

「フレッド、この船が訓練実習に当たる前、何の任務に就いていたか調べられる?」

「やってみよう」

 フレッドは端末を操作した。

 端末がアクセス権を要求し、フレッドは自分のアクセスコードを入力した。

 だが、収穫なし。

「アクセス権拒否された」

フレッドはそう言った。

「つまり、アクセス権を要求するほどの任務に当たっていたということね」

 グレイスの言葉に、はっとする面々。

「彼らの目的は、船でも人員でもない。……この船が当たっていた任務の情報、もしくはこの船から入手できる諸々の情報なんだわ」

 そう考えれば、テロリストの行動も納得できる。

「つまり、人質を殺さないのは……」

「艦長に対しての圧力ね。乗員の命と情報を天秤にかけるつもりなんだわ。艦長は彼らをテロリストと認識したときに情報のアクセスにロックをかけたはずだから」

「じゃあ、艦長は……」

「艦長は苦境に立たされるけれど、……彼らの要求を呑むはずがない。人質を盾に情報開示を要求しても突っぱねる筈。……それが出来なければ、宇宙航空局の艦長を勤めあげることは出来ないわ」

 冷たいようだが、宇宙航空局の機密に関する内容であれば、たとえ自身の部下の命が無くなるであろう事態においても、機密保持を優先する。それが、宇宙航空局に求められる士官であった。

「俺、この船のクルー好きなんだよな。つっけんどんとしたところもあるけれど、優しく見守ってくれているってのがわかってさ、無くしたくないんだよ」

「それは、俺らも同じさ」

「だから、生きましょうよ、全員で」

 どうすれば自分自身とクルーの命を助けられるか。

 それが自分達の肩にかかっている。

 自分達がいる場所が備蓄品の格納倉庫だったことを幸いに、武器になりそうなものを探してゆく。

 銃火器は専門の保管所に置いてある。当然テロリスト達は監視をつけているだろうから、そこからの奪取は論外となった。

「おおっ、カッターにセロハンテープ、ガムテープがあるぜ。使えないかな?」

 その質問に、グレイスが答える。

「使えるわ。段ボールから出してくれる?」

 その言葉に、カイルは頷き、あるだけの物品をグレイスの前に広げた。

「他にも何かないか?」

「薬品もそこそこあるが……」

「催涙ガスや催眠ガス、調合してみるか……」

 フレッドがぼそりと言った。

 それに待ったをかけたのはグレイスだった。

「その前にガスマスクがないでしょ、私たちまで影響が出るわ。それにフレッドとウォン、あなた達、研究室半壊させた前歴があるから却下よ」

「あれは俺たちのせいじゃない。薬品のラベルの貼り間違えが原因だ」

「ふん、しっかり新液体爆薬開発として論文書いた奴とは思えない発言ね」

「新発見だ。発表しないともったいないだろうが」

 話が脱線しかかり、カイルがストップをかけた。

「待った! 話はそこまで。現実に戻ろうじゃないか」

 その言葉を聞いて、グレイスはカッターナイフを手にすると、ジーンに手渡した。

「私が何を言いたいか分かる?」

 それを聞いて、ジーンはカッターナイフの刃を出すと、グレイスに向かって言った。

「俺に先陣を切れってか?」

「そうよ」

 ジーンは、フレッドに負けず、格闘技の腕は一流であった。SP資格もある。

 包丁は使えなくても、サバイバルナイフの腕前は一流。

 彼ならばカッターナイフでも代用できるはずだった。

「最初はあなたのほうが適任だわ。二陣として私が行く」

「おい、それは……」

 女性の力はどうしても男性よりも弱くなる。それを気にしての言葉だった。

「私はSP訓練を受けているし、ジーンが一瞬の隙をつければ私の相手は男性でも可能よ。見る限り、相手は格闘の専門訓練は受けていないみたいだし」

 訓練を受けたものから見ると、銃を持っているとはいえ隙だらけの状態だ。

「相手から六メートル以内であれば、銃よりもナイフが有利だしね」

 ジーン、グレイス以外に、このメンバーではSP訓練を受けている者はいなかったが、このメンバー達、格闘技の腕前も学年の上位にいる。

「フレッド、もう一度多目的室の映像を見せてくれる?」

 フレッドが端末を操作し、映像を表示した。

「多目的室の見張りは三人ね。ジーン、フレッド、行ける?」

「もちろん」

「カイル、救急箱は見つかった?」

「ああ」

「じゃあ、最後に続いて来て。怪我人が出た時の対応をよろしく。ウォンとケンはこの場に残ってバックアップをして。他のメンバーは一緒に行くわよ」

「了解」

 役割分担を決めると、彼らはカッターナイフ、セロハンテープ、ガムテープを個々にもち無言で行動に移っていった。


 こうして、艦内に局所的に爆弾低気圧が発生し、テロリスト、乗組員を巻き込んでいこうとしていた。




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