零 ついてない男
零 ついてない男
とある星のとある場所で……。
こんなやり取りが行われていた。
「いい加減認めろ。これはお前の所持品だな?」
「だから何度も言っているじゃないですか、それは俺の物ではなく、拾ったものです。警察に届けようとしていたところだと話したじゃないですか」
「そんな都合のよい話が信じられるか! タレこみを元に現場を張っていたら、お前が来たんだ。これを持ってな。嘘に騙されるほどこちらは甘くはないぞ。素直に認めたらどうだ」
怒鳴った年配の男の向かいの椅子に腰かけていた若い男は、頭を抱えた。
何を言っても、信じてはもらえない。
相手は、自分をこの所持品の主と決めてかかっている。
うんと頷かない限り、この場所から離すことは出来ないのだ。
机の上を見る。
自分が拾った薬包がのっている。
広場でぶつかった男が持っていたものだ。
どう見ても薬としか見えなかった。持病でもあるのかと思い、親切心から拾い、警察に届けようとした。
その矢先……。
二人の男に両脇を抱えられ、無理やり車に押し込められ……。
今居る建物の一室に連れ込まれ……。
――現在に至る。
「何度も言っているじゃないですか。それは俺の物ではありません。拾いものです」
「はん、拾いものねぇ。こんな高級なものがそうそう落ちていてたまるか! さあ、素直に吐け」
ホントに落ちていたんです!
高級な薬とは知らなかったんです!
人は先入観があるとそれを肯定したがる。この年配の男はその薬包の持ち主が自分であるとそう思って疑っていない。そのいい例がこれだ。
元凶である白い薬包に目が行く。
十二連に繋がったこの薬の正体が問題だった。
「特別行政府の人間が犯罪に関わるとはねぇ。しかしこれで、特別行政区に手を入れることができるわけだ」
年配の男は鼻歌を歌いそうな表情で、薬包を見た。
所持しただけで犯罪となる、そんな薬だった。
「特別行政区の者には手出しが出来ない。特別行政区の者は品行方正だというその神話が崩れた訳だ。これからは管轄権問題もなく特別行政区にも捜査が出来るようになる訳だ。様様だな」
そう言うと年配の男はにやりと笑って、捕まえた男の身分証を見る。
「アカデミーの三回生が犯罪の温床か。他にも加わっている奴がいるだろう。芋蔓式で捕まえてやる。観念するんだな。……ジーン・アルファイド君?」
そう呼ばれた男は盛大な溜息を吐いた。
まさに暖簾に腕押し、馬の耳に念仏状態。
彼の感情を脇に置いて、急展開で物事が進んでいた。
アカデミー最上級生、三回生後期課程のジーン・アルファイドは、ブラックエンジェルと呼ばれる麻薬所持の現行犯で警察に逮捕されたのであった。