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どうやら俺は魔王を倒すらしい

前回のテンプレポイント

長文あらすじタイトルの高校生が事故死して異世界へ行くチート

「…まぶしっ」


 ついさっき言ったような言葉を発して意識が戻る。

 目を開けた瞬間、緑が視界を覆う。そこは森の中だった。森と林の違いが分からないけどたぶん森の中だ。木々の枝葉に日の光が遮られているが暗くはなく、森林浴をするにはうってつけの場所、という感じ。心地良い場所ではあるが360度見渡してみても木々の切れ間というか、どこまで森が続いているのか分からない。


「もりーっ!すぅーっ!はぁーっ!…あんまり良いにおいじゃない…」

「確かにそうですね。ですが森とは良い匂いであるのが一般的です。恐らく人の手が届いていないせいか、この森が独特かのどちらかなのでしょう」


 どちらへ向かえばいいのか途方にくれていると、急に背中から声がした。かなりびっくりしたががなんとか声だけは喉の奥にしまえた。グッジョブ俺。

 とりあえず人がいるみたいでよかった。道を聞けば街か村かへいけるだろう。これからのことは着いてからゆっくり考えよう。

 そう思って振り返り――その瞬間に目を奪われてしまった。急に現れた2人の女の子は、ただただ美しかった。

 1人は俺より頭2つ分くらい低い。好奇心が強そうなキラキラした目をあちこちに向けている。

 もう1人は俺と同じくらいの身長かな。小さい方とは対照的に落ち着き払った様子で小さい方をじっと見た後、こちらへ向いた。

 目が合う。ただそれだけで鼓動が跳ね上がり顔が赤くなっていると自覚する。美女と美少女の差はあっても、その美貌に優劣の付けようがない。森の独特な雰囲気も相まって、それを背景に立つ彼女達はまるで幻想の産物みたいだった。


「あっ!こんにちはーっ!」

「初めまして。あなたがオガキ・レイタですね?」


 ガチガチに固まって(性的な意味ではない)話しかけることも忘れてしまってた俺に、向こうから声を掛けてくれた。それだけでも嫌になるほどドキリとしてしまう。

 いかんいかん。固まってもいられない。言葉を返さない俺を不思議そうに見ている2人に、慌てて返事を返す。


「あ、ああ。その通りだが…どうして俺のことを?」


 変なことは言わなかったよな?なんでもない返答だけでもそんな風に意識してしまい、それがまた俺の顔を熱くさせる。


「失礼しました。私はハルキゲニア、そしてこちらはアシュアイア。あなたをサポートする為、創造神ブラフマーより生み出された者です。どうぞハル、アイアとお呼びください」

「アイアだよーっ!よろしくねっ!」


 そう言ってから大きい方、ハルは紙切れを差し出してくる。なんでも、ブラフマーからの伝言を預かってきたんだそうだ。一時的にでも彼女達から意識を離せることに、残念に思いながらも助かったという相反する気持ちがない交ぜになりながら手紙を読む。


 『やあやあ、いきなり現れた可愛い子を前に童貞臭い反応を見せてはいないかな?』


 思わず破り捨てそうになったが堪えて続きを読む。


 『こういう話に不可欠な要素って何か分かるかい?そう、ヒロインだ。

でも、そう都合よく出会えるかは運次第だしもし出会えても童貞の玲太君では上手いこと落とせないかもしれない。

これは困った!』


 困ったじゃねえよ。軽々しい彼の言動を思い出しイライラが更に募る。もう破ってしまおうか。


 『だからとりあえず女の子を2人、用意してみました!これでハーレムと言っても差し支えないよね!やったね!いやー、我ながらよくできて――』


 やれどこの造詣を頑張ったとか性格の設定がややこしかったとか、自画自賛の文章が長々と綴られているので全て読み飛ばす。

 長い自慢話が終わってそうな辺りから続きを読む。


 『――だから、創造神であるこの俺を崇め奉ってもいいのよ?

………………………………………

……………

…あ、以上です』


「なんの用だあああああああああ!」


 ビリビリと細かく破って捨てた。なんだこの手紙!結局貶されて終わったんですけど!?いったか!?この手紙必要だったか!?

 今まで堪えていたタガが外れてしまったが、深呼吸して気分を落ち着ける。アイアが俺の服の裾をクイクイと引っ張って気遣わしげに見上げてきた。

 …うん、ちょー可愛い。なにこの可愛い生き物。それだけで俺の心に蟠る鬱屈としたものが綺麗さっぱり取り払われる気分だ。

 な、なでなでしてもいいのだろうか…?

 ちょっと緊張しつつ『大丈夫だよ』という意味も込めてふわふわの金髪を撫でてあげると、くすぐったそうにしながらもにぱーっと笑ってくれた。かっ…可愛すぎる…!


「それではこの世界のことについて説明します」


 綺麗な湖面を思わせるような、ハルの透き通った美声が鼓膜を優しく叩く。眠たげな目に感情のこもらない表情は正しくクールビューティー。

 そんな彼女に見つめられると、どうしても心音が跳ね上がるのを抑えられない。


「あ、ああ。お願いします」

「まず、この世界はレベルとスキル制です。レベルが上がるとポイントが得られ、戦闘スキルや生産スキルなどに割り振ることでやりたい事が決まってきます。

あなたが前世でやっていたマビ○ギに近いですね」

「おい」

「チートを与えられたあなたの場合は、ほぼ無制限にポイントを割り振ることができます。

私達もあなたほどではないですが、それに準ずる力を与えられています。マビ○ギで言えば累積1万越えのプレイヤーくらいですね。

もちろんマビ○ギのように転生システムはないですし、マビ○ギとはスキルの振り方も違いますが。加えてマビ○ギとは違って称号に何の効果もありません。他にマビ○ギとの相違点は-―」

「ちょっとマビ○ギ連呼は止めようか!」


 なんか狙ったように連呼してないか?ヒヤヒヤするからやめて欲しい。

 アイアは俺達の周りをぐるぐると走り回って話を聞いていないので必然的に俺が止めるしかない。なんなんだよ、こいつはよ。

 今ので何かが吹っ切れたらしく、もはやハルの美貌に対して気圧されていた自分は綺麗さっぱりなくなっていた。


「とりあえず凄いのは分かった。実感は湧かないけど」

「頭で念じればステータスやスキルの一覧が見られます」


 言われた通りにやってみると目の前に半透明のタブレットみたいなウインドウが現れた。すごいな、本当にゲームみたいだ。聞くと、この世界の人はさすがにこんなウインドウは現れないらしく、分かりやすいように改変しただけだとか。

 俺のステータスには様々な数字が並んでいたが比べようもないので、今そっちは無視する。

 スキルの方に目をやった瞬間、眩暈を覚えた。スキルの数が多すぎるのだ。確かにこれはウインドウ形式でやってくれないと見にくくてしゃーないわ。横のスクロールバーがかなり小さくなってるもんな。

 そうしてブラフマーへの評価を上下させつつ、スキルを吟味しようとして――


「ねえねえ、れーた!あっち!あっちいこーっ!」


 さっきまでそこら辺を走り回っていたアイアが俺の手を取ってある方向を指差す。

 小さくてすべすべでぷにぷにな可愛らしい手の感触が幸せ…じゃなくて、彼女の急な行動に困惑する。


「彼女が行くべき道を教えてくれます。どこへ行けばいいのか、何をすればいいのか、あなたに選択肢を提示するのが彼女の役割です。

そして私はこの世界の知識を与えられて生まれました。分からないことがあれば言ってください」


 なるほど、道案内はアイアがしてくれるのか…なるほどなるほど…………すっっっっっっっごく不安なんですけど!可愛いんだけどね?でもこの子、ほんのちょっとだけアホっぽいというか、いや、そこがまた可愛いんだけどね?ただ、行き先を決めるのがこの子となるとものっそ不安なんですけど。せめて役割を逆に…いやいや、それはそれで怖いか…

 くそ、俺の心を癒してくれるみたいな役割だけでよかったのに!

 ブラフマーめ、いいことしたと思った端からいらんことしやがって…!


「ではさっそく行きましょうか」

「待ってくれ!待ってください!これって拒否権あるんだよな?手紙にも書いてたし」

「はい。アイアが提示するのは選択肢の1つでしかありません。決定権はあなたにあります」


 『だったら』と言おうとして、アイアが俺をじっと見つめているのに気付く。


「れーたは行きたくないの…?」

「………あれ?なんだかアイアに付いていきたくなったぞ?よし、すぐ出発しようそうしよう!」

「うんっ!こっちだよ!」


 悲しそうな顔をされたら否定するなんてできないじゃないか。

 表情は変化していないはずなのに、ハルの視線がちょっとだけ痛かった。


◆ ◆ ◆


「な、なんだ貴様ら!?どこから…いや、そもそもどうやってここまで来れた!?城の周辺には結界が張ってあったはずだ!」


 景色が一瞬で切り替わるといかにも魔王っぽそうな男が慌てていた。

 アイアがテレポートで移動すると言うから任せてみた結果がこれである。

 嫌な予感しかしなかったけど的中しちゃったよ。ホントは断ったんだよ?でもあんな泣き出しそうな顔されたら嫌とは言えねえよ。言える奴は鬼か何かじゃないのか?

 誰だっけ、決定権は俺にあるとかいった奴?選択肢1つしかなかったよ!敷かれたレールの上をまっしぐらだよ!


「ここはデスパイア山麓、通称死の森です。そしてデスパイア山麓の中央にあるのがここ、魔王城となります」

「よし、とりあえず通称の方で呼ぶようにしようか」


 俺の言葉を聞いているのかいないのか、鉄仮面のような無表情を保っている。あ、これ聞いてないな。


「そうか、貴様らが噂に聞く勇者達ということか」

「いいえ、違います。そんな一昔前のテンプレを今更するわけがないじゃないですか」

「確かに勇者になった覚えはないけど、理由が酷くないか?」


 真っ向から否定された魔王は『そ、そうか』と引き下がる。アイアはまた俺達の周りを走り回っている。あら不思議。それだけで絶妙に微妙な空気が出来上がりました!

 …なあ、この空気どうしてくれんだよ。雰囲気も何もあったもんじゃねえよ。


「ま、まあいい。どうやって結界と城の警備を潜り抜けてきたのか知らんが、ここまで来た褒美にワシの手で貴様らを葬り去ってくれよう!」


 そう言った瞬間、空気が粘つくように感じた。まるで水の中にいるようだ。

 これこそ絶対的強者が放つ威圧感というものだろうか。これが魔王――そう認識した頃にはもう遅かった。

 肌からはジリジリと炙られる痛みがあるのに、極寒の地に放り込まれたように全身がブルブルと震えている。威圧感が上から重く圧し掛かり、指1本動かせそうにない。

 さっきまでぐるぐる走り回っていたアイアも、魔王の威圧を受け涙目になって震えている。…あ、俺に抱きついてきた。やだ、なにこれ可愛い。怖かったよな、よしよし。

 小さな彼女の体を抱きしめ返して頭を撫でたところで気が付く。

 やっべー、無意識に抱きしめ返しちゃったよ。嫌がられてない、よな…?…じゃなかった!危ない、もうちょっとでトリップするとこだった!

 気付いたのはそっちではなく、指一本動かせないと思っていた体が動くことだ。


「運悪くスタンに引っかかってしまったようですね。今のは精神抵抗スキルを習得すれば無効に出来ます」


 なるほど、これがスタンなのか。風邪でも引いたかのような嫌な感覚だ。というかハルは平然としてるし、アイアはビビッてたけど普通に動いてたし…これ、もしかしなくてもスタン食らってたのって俺だけ?…まじで?


「ほう、威圧程度では動きを封じられないか。ここへ来られたのはまぐれではないみたいだな。フハハ!久方ぶりに骨のある相手が来たようだ!」


 魔王はゆっくりと動き出す。それは紛れもなく余裕からくるものなんだろう。王者の風格的なものがビシバシ伝わってきてすぐにでも逃げ出したいくらいだ。彼が一歩一歩と踏み出す度に俺の心はズシリズシリと重くなっていく。

 こ、こんな強そうな奴を俺達3人で倒せというのか…


「うん?まさか貴様1人で戦う気か?」

「は?なに言って――って、2人ともなんでそんなに離れたところにいるんだよ!?これ3人で戦うやつだろ!?」

「大丈夫です。邪魔にならないよう、注意しますので」

「がんばれ、れーた!」

「フ…フフフ…フハハハハハ!ワシも舐められたものよ!よもやこんな小僧1人で十分と思われるとはな!

初めてだぞ…このワシをここまでコケにした馬鹿野郎はな!

…よかろう。ならばその思い上がりを粉々に砕き、絶望の中じわじわとなぶり殺しにしてくれる!」

「待って、1人で戦う方向で話を進めないで!」

「そうです、待ってください。そこまで台詞を似せるならいっそ『はじめてですよこのわたしをここまでコケにしたおバカさん達は』くらい言ったらどうですか」

「ハルはちょっと黙ってようか!」


 魔王はもの凄い怒ってるし、ハルは余計なこと口走ってるし、アイアは『ワンパン』連呼してるし。散らかりすぎて処理が追いつかないんですけど!

 …ってちょっと待て、さらっと流してしまったけどアイアさん?ワンパン連呼はまずいです。魔王の形相的な意味と、パロ的な意味で2重でやばいんです。勘弁してください。


「ワンパン、いいですね。アニメもやっていることですし、丁度いいと思います。さすがアイアですね」

「えへへ~」

「何が丁度いいのかさっぱり理解できないし、したいとも思わないんですけど!?」

「よもやこのワシを1撃で倒すとまできたか。こ、ここまで愚弄されるとは思わなんだぞ…貴様はただでは済ません!この世の痛みという痛みを全て味わわせてくれる!」

「知らないのですか?ワンパンというのは…」

「解説しなくていいから!

…なあ、さっきから魔王のヘイトが俺にしか集まってないんですけど!どう見たって俺悪くないよね!?」

「問答無用!」


 魔王は何もないところから大剣を取り出して縦に振る。間一髪避ける。見れば大剣が叩きつけられたところを中心に小さなクレーターができていた。破壊の音が広間に反射してまだ響いている。

 …や、やばいって!あんなのくらって無事でいられるわけないって!


「待って、待って!一旦落ち着こう!話せば分かるって!なっ!」

「そうです。話はまだ終わってません。

レイタが勝てば、あなたの娘を好きにしていいと誓ってください」

「わーんぱん!わーんぱん!」

「もう勝った気でいるか!よかろう、勝てるものなら勝ってみろ!ただし、ワシも本気を出させてもらう!ヌウウウウウウウウウン!」

「頼むから勝手になことしないでくれるかな!?もうどこからツッコんでいいやら――でかっ!」


 本気を出した魔王はさっきの3倍くらい大きくなっていて、見た目の禍々しさも増大していた。

 体に合わせるようにこれまた大きくなった大剣を片手で軽々と振り回し、空いた手で黒いビームみたいなものを撃ち出してくる。

 速さも鋭さも格段に上がった攻撃を間一髪で避ける。チートのお陰かビームも含め攻撃は全て回避できてるんだけど、あまりにもの猛攻撃に反撃ができない。


「ええい、ちょこまかと!逃げる者に勝利は訪れんぞ!」

「いや、ほんっ…!ちょ、待って…!武器…うおっ!なしとか無理だろ!お前卑怯だぞ!卑怯!」

「あれほどまで煽っておいて、今度は卑怯か!戦っていてここまで不快な気分にさせられたのは初めてだぞ!」


 いや、うん。煽ったのはあっちの2人だよね?まあ、武器があっても戦えるわけじゃないから俺も人のこと言えないのか…?


「武器…いいですね。では武器は日本刀にしましょう。日本刀で戦う主人公は異様なほど多いので、これはテンプレポイント高いですよ。アイアも異論は無いですか?」

「うんっ!…ねえねえ、じゃあわたしがぶきにヘンシンすればいいの?」

「美少女が武器になるのはアリですね。さすがアイアです」

「えへへ~」


 あっちでのほほんとお喋りしているけど、敵の攻撃が激しすぎてツッコミ入れたくてもできない。

 そのポイントなんだよとか、ポイント制だったのかよとか、ハルさんなんかテンション高くないですか?とか言いたいけど言う余裕がない。というかこんな泥臭い戦闘するんじゃなくて、俺もそっち側で観戦してたい派なんですけど!?


「口先と逃げ足だけは一人前だな!忌々しい、ならこれはどうだ!?」


 魔王は攻撃の手を止めるとよく分からん言葉を唱え始めた。すると彼の両手に黒いオーラ的なものが集まっていき、どんどん大きくなっていく。やばい…なんか凄い嫌な予感がする。


「武器になるといっても今は2通りありますね。ウィルスに感染している方か、特撮ヒーローばりに変身する方か、どちらがいいですか?」

「んー?わかんない!」

「あの!なにかするんだったら早くしてくれませんかね!?今やばい!何か分からないけど凄くやばそうな雰囲気だから!」


 あとどっちかっていうと、ちゅーして変身する方でお願いした…い、いや、なんでもないです。ロリコンじゃないからどっちでもいいし。ホントだし。

 俺の言葉を聞き入れてくれたのか、ハルに耳打ちされたアイアがトテトテとやってくる。はあー…可愛いわぁー癒されるわぁー…


「何をしようがもう遅い!この一撃で葬り去ってくれる!」


 大剣を握ると横に大きく振る。するとその軌跡をなぞるように、さっきの黒い靄がその場に留まった。さらに目にも留まらない速さで何回も剣を振ると、これも同じように留まる。10を数えた頃、今まで留まっていた靄が一斉に動き出した。それぞれが意思をもっているのか、斬撃の形をした靄は俺を取り囲みながら襲ってくる。

 これは避けられそうもない――って、こっちに来てたせいでアイアまで巻き込まれてるじゃねーか!

 彼女の元まで走り、彼女を抱きしめて庇う。

 ………いったい何してるんだと思わなくもなかった。会って間もないというのに身を挺して守ろうとするとか何考えてるんだ。それに、ちっぽけな体1つであんな攻撃から彼女を守れるなんてできるわけもないだろう。

 俺は本当に馬鹿だよな。こんなところでヒーロー気取りだなんて、今時はやらねーよ。でもな、どうしても彼女の笑顔を守りたいって思ったんだからしょうがねーだろ!


「ぐわああああああああああ」


 俺が彼女を庇ったのと、魔王の攻撃が殺到したのはほぼ同時だった。俺の背中に何度も衝撃が襲う。


「あああああああぁぁぁ………ああ?」


 ただ…なんというか、背中を軽く押されたくらいの衝撃を感じただけで攻撃が止んでしまった。

 あ、あっれー?激痛くらいは予想してたんだけど…ハルかアイアが何かしてくれたのか?

 そう思ってハルを見ても首を振るだけ。アイアはよく分かっていない様子で首をキョトンと傾げた後、じゃれつくように抱きついてきた。ああ、可愛い…可愛いけど、2人とも違うっぽい…


「な、なにィ!?今のはワシの魔法と剣技を複合させた究極の技!逃げることも防ぐこともできないはずだというのに、何故無傷でいられる!?」

「あ、やっぱ今のってそんな凄いやつだったのか。なんともなかったからてっきり手加減してくれたんだと思ったわ」


 もうね、すっごくやばそうな雰囲気だったのに肩透かし感がハンパない。あれだけ焦ってたのにコレとか、恥ずかしすぎて逃げ出したいくらいだ。

 魔王の説明を受けても『あ、そうなんだ』くらいにしか思わない。というかあんまり驚かないでくれませんかねえ?さっきの1人芝居していた俺を思い出して恥ずかしさ倍増なんですが。


『れーた、れーた!』


 アイアの声が頭に直接響いた気がして思考を中断する。

 するとさっきまで俺に抱きついていたアイアの姿がなく(残念には思っていないぞ)代わりにというか、日本刀を握りこんでいた。

 いつの間に…と考える暇もなく、直感的にこれがアイアなのだと分かってしまう。


「えっ、まさかアイアなのか!?」


 分かったとはいってもその直感を信じることまではできず、思わず問いかけてしまった。『武器になるとかまた変なこと言ってるな』くらいにしか思わなかったが、本当に武器に変身する能力まであったのか…

 俺の問いかけに『そだよー!』とこれまた頭の中でアイアの声が響く。こいつ直接脳内に…!


「魔王退治ばかりに時間も掛けていられません。すぐに倒して次のテンプレに移りましょう」

「酷い言い草だなおい!」


 段々、魔王が可哀想になってきた。別に俺は何かされたわけでもないんだけど、悪いやつらしいし倒してしまっても…ほんとにいいのか、コレ?


「ふ、ふん!ちょっとばかり防御に優れているようだが、その分他が犠牲になっているのは自明!それでワシに勝てぎゃあああああああああ!」


 最後まで言い切る前に、魔王は最期を迎えた。うまい。

 それはさておき。あっさり過ぎやしないか魔王さんよ。グダグダやってた時間の方が長かったんですけど。戦闘の描写とかなかったんですけど。これでは俺が凄かったのか、武器が凄かったのか、魔王が凄まじく弱かったのかよく分からなくなってるんですけど。

 普通はやられ役みたいなのが出てきて、魔王の強さを引き立たせてから倒すものだろ!これ絶対やらかしたやつだろ!駆け足でやろうとするからこうなるんだよ!もうどうしようもねえよ!

 心の中で愚痴っている(言っても無駄なので)横でハルが『おかしいですね…』と全くおかしくなさそうな無表情で呟く。

 え、なに?まだなんかあるの?


「今時、魔王を倒すなんて話はRPGでも珍しい方です。そんな一昔前のテンプレをアイアが提案するはずないのですが…」


 …どうしよう、言ってる意味が分からない。分かるんだけど分かりたくない。

 ハルはアイアの目線に合わせるようにしゃがみこんで確認している。


「んー?えーっとねー………れーたが魔王になるの!」


 両手をバンザイして『がおー』と唸る。ああ…ちょっとあざとい気もするけど可愛いよお…癒されるよお…なんか穏やかじゃない内容だったけどどうでもいいよお…


「なるほど、それなら納得がいきました。確かに主人公が魔王になるパターンは30近くあります。十分テンプレと言えるでしょう。夏にもアニメやってましたしね」


 何が納得なのか分からないけどどうでもいいよお…アイアのドヤ顔が可愛すぎてもう何もかもどうでもいいよお…


「魔王様!先程四将軍最後の1人が倒され、勇者一行がこちらへ向かって来ています!彼奴ら、想像以上の強さですぞ…

ムムムッ!貴様ら何者だ!?」

「先代の魔王ならその辺りに転がってますよ。それより勇者が向かってきているとは好都合です。レイタ、ついでに勇者も蹴散らしてしまいましょう………聞いてませんね」


 ハルが何か言ってる気がするけど、アイアをナデナデするのに忙しいからよく聞き取れなかったよお…嬉しそうにされるがままになっているアイア、可愛いよお…


「魔王はここか!お前の野望は俺達が阻止してやるぞ!」

「やっとここまで来れたのね…回復は任せて!どんな傷でも私が治してあげる!」

「へへっ、四将軍も相当な強さだったが魔王はもっと強いっていうじゃねえか。こうも強い奴と戦えるなんて、レオンに付いていって正解だったぜ!」

「魔王は四将軍が束になっても勝てないと聞きます。バルカス、今回ばかりは勝手に突撃してレオンの足を引っ張らないようにしてください」


 なんか周りが騒がしくなったけど全く興味ないよお…ナデナデしてたらナデナデし返してくれるアイア、可愛いよお…


「一足遅かったようですね。魔王は先程代替わりを果たし、この一見冴えないどこからどう見ても普通な彼が新しい魔王となりました。

………おや、悪口でも反応しませんか。

レイタ、そろそろ戻ってきてください」

「…はっ!トリップしてた…って多いなっ!なんか人増えてるんだけど!」


 俺がアイアと戯れていた間になんか大きな変化があったらしい。凄いイケメンな奴を中心に4人組が臨戦態勢に入ってるし、魔王の遺体の傍ではフードを目深に被ったローブ姿のおっさんが『魔王様!』とか叫んでいるし。

 …これどういう状況?


「………クハハハハハハ!魔王め、死におったわ!本当は勇者達をぶつけて消耗したところを始末してやろうと思っていたが、手間が省けたわい!

この魔王の心臓こそ、所有者に絶大なる力を与える究極のアイテム!」


 急におっさんが元気になった。と思ったら魔王の心臓とかいう奴を口に入れた。ホルモン類は生で食ったら腹壊すぞ…

 まあそんな冗談はさておき、心臓を丸呑みしたおっさんの体はさっきの魔王のように何倍にも大きくなっていき、禍々しいオーラ的なものが足の先から頭の天辺まで噴出し始めた。


「おお…感じる…力が次から次へと溢れていくのを感じるぞ!これが魔王の力…なんという全能感だ…!

その者、いかなる手を使ったかは知らぬがよくやった!褒美に勇者諸共このゲウィヴ様の力を披露してやろう。死ねい!」


 その言葉を共に俺達と勇者達を巻き込むような形で床に魔方陣が浮き上がり、そこから湧き出した黒い光に飲み込まれてしまった。

今回のテンプレポイント

ハーレム…+10点

マビ○ギのようなスキル制…+6点

魔王を倒す…+1点

ワンパン…+3点

武器が日本刀…+6点

美少女が武器に変身…+4点

主人公が魔王…+5点


短評:項目数は多いですが、分量と比較するとどうでしょうか?もう少しテンプレポイントを詰め込めたと思います。辛口になってしまいましたが、どの項目も高得点を得ているのは褒めるべき点ですね

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