80! 白髪の男
その景色は無慈悲に闇を割くほど眩い焔を中心として絵になりそうであった。しかし、それを気にする程の余地はなかった。
「何でこんな…」
「たっ!助けておくれぇぇ!」
一体のオークがヘリオスに話しかけた。
「一体何があったのですか!?」
「…は、白髪の男が!!俺の家を…俺の家を燃やして火元にしやがった!!」
自然発火では無かったらしい。人事によるものかも知れない。しかし、その白髪の男という言葉を聞いてダルダルは目を見開いた。
「…馬鹿な!まさか…ジェドなのか…!?」
ごまちゃんはダルダルの言っていることを理解し、身を震わせてしまった。嘘だろうと思いたい。コトが重体ならば以前の様なチャンスは訪れない。絶対に怨みを晴らすために彼の息の根を止めに行くはずだ。
「…コト…!?」
目の前にルブトが現れた。
「任務お疲れ様です。」
「うぬ、ご苦労だった。王は?」
「今、貴族領に避難して…」
「そうか…行こう。」
「そーか。」
クレタ達は貴族領へと向かおうとした。しかし、ごまちゃんはルブトの目の前に来た。
「…あのさ…一人重症を負っているけど…貴方…治療とかできる?」
ルブトは顔を縦に一度振った。
「…こっちに来て!今直ぐ!」
ごまちゃん達は馬車の中に入った。
その白髪の男は貴族領に丁度居たところだった。真正面から入場し、門番に止められた。
「おい!テメェ、此処で何勝手に入ろうとしてんだ!此処は、貴族領なんだぞ!っておおああああっ!」
「ぐああああっ!指から粉々に…散っていく!」
門番達は錯乱してしまい、彼を宮内へと入れてしまった。その彼とは…
「やはり、ジェド…貴様か…」
「王族は呑気に俺の事を忘れているだろうと、俺達は思っていたぜ。間抜けヅラが…。」
「そーですかー。」
「…くっ!」
ヘリオスは身震いした。しかし、それは恐怖によるものでは無かった。ただ、先に手を出したのはクレタでもなく、ヘリオスでもなく、
「!!!?」
背後を取ったクリスタ王であった。
「また来たようだな…」
「憶えていたようで…くっ!」
剣を首に当てた。
「もうこの前の様にはいかない。さあ、王となりたいのだろう。貴様ならどうする?」
ジェドは笑みを浮かべて応えた。
「ふん。こうする。」
ジェドはクリスタ王に顔を向けた。
「…っ!?まさか!」
クリスタ王はジェドから離れ、正面を避けてまた背後に回ろうとした。
「かかったな…」
クリスタ王に掌だけを向けた。すると、爆炎が燃え広がった。
「王!!」
ダルダルは叫んだ。クリスタ王は生きていた。煙の中に紛れて顔を見せた。
「首飾り…その為だけにか?」
「他の部下よりは良い策を練ったはずなんだがな。」
「その首飾りはコトを殺して奪うのか?」
「勿論。彼から出したとしても今も消えないこのもどかしさを埋めなければならないのだから。」
ジェドは威圧を放ち、ヘリオスはその圧力に圧倒されてしまった。
「…終いだ…。特別に貴様を隠し技で止めを刺す必要もなくなったからな。」
(さて、この魔界を統一する時も…近づいてきたか…待ち遠しいものだ!)




