75! 魔宝剣
蒼き炎はとうとう壁を伝って闇を晴らした。部屋全体が見えていく。蒼き炎は呼吸時にほぼ害は無い。彼がそこに居ても変化は無かった。
しかしながら、彼は焔に包まれ焼かれている状態。一溜りもない筈だ。なのに、叫び声すら上げない。暫く待つと焔からまた別の色の光が放たれた。その光は焔を周りへと寄せた。
「………?これって、魔宝剣?」
自身の剣が純白で形はそのまま整えられている物に変貌した。自分の意思で掴むことができた。
(ああ…そうか…やってしまったんだ…一体何が起きるか分からないけど…)
魔宝剣の能力についてコトはもう忘れてしまっていた。ただ、その様な存在がある事は知っていた。でも竜を倒さなきゃ進めない。彼は竜の方へ歩く。足を踏み込んだと同時に彼の両手首、両足首に光の輪が再び現れてきた。
蛍の如く光は漂い散っていく。彼はその間に光大剣を前方に、高く跳んで真上に、そして地面に着いた後直ぐ背後を向いてもう一つ。計三回光大剣を繰り出した。
「光大剣…包囲陣だ!!」
光の輪が消えていく。
一瞬の内に光大剣が竜を襲う。上前後の三方向から一気に散り散りにする。その上、斬撃も暫く残ったのでこれは魔宝剣の力と確信した。光は竜を消した。そして光は焔以外消滅した。
ただ、コトは其処で倒れてしまった。何故倒れたのかは彼自体、全く以って知らなかった。コトは目を微かに開いたまま焔に囲まれた。
『コトは此処、旧魔王城にて死ぬ。私からの予言よ。これで少しは怖がるかしら?』
「出鱈目言わないで。」
回廊を駆け上がる途中にネオルの声が聞こえた。シルバが咄嗟に反応して、その間にクレタ、ヘリオスがとうとう追いついた。
「どこ行ってたんですか?あれ、彼女は…」
「あ!えぇと…その、」
「シルバ。コトの姉。また、ジェドの妹よ。」
「嘘だー。」
クレタは相変わらずである。そこにダルダルが突っ込む。
「いや、嘘ではなかった。グホッ…実際にコトと似ている点も多くあった……ウェッホヴゥェッ!!」
「大丈夫っすか?」
ヘリオスが止めに入る。
「とにかく、早めに四階まで上がらなければならないから、一緒に付いてきて!!」
シルバが先導を切った。ごまちゃん達は先を急ぎ、ヘリオス、クレタの二人はダルダルを抱えて上の階に向かった。
回廊は長い。明らかに二、三階の間よりも段数も多いので、シルバ以外疲れ気味になってしまった。
『兄が残した最後の魔法…『無限回廊』ね。まるで登っていないように見せる幻覚の魔法。最後の最後で悪足掻きしても、もう遅い気はするけど、助かった。』
「…ふぅ…漸く上りきった…」
「…。」
その様子を目にした時、四人と一匹共に口を開けたまま呆然と立っていた。
目の前は魑魅魍魎。
「…嘘だ!!!」
其処にネオルの姿は無く、
「…嘘だ!!!!」
味方も疲れきっている。
「…嘘だぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
ごまちゃんはただ嘘だと自分に言い伝える様に叫ぶことしかできなかった。




