66! 魔境
馬車が動き始めた。その道中で僧侶の姿が見えた。
ほんの僅かの間であった。しかし、彼らは見向きもしなかった。そして、馬車は僧侶を通り過ぎた。
同刻、旧魔王城の下町を巡回していたネオルとゲルニオはシルバの姿を見て彼女に近づいてきた。
「ま、当然よね。魔神もいるし、コトの次に強いジェドにやられたもん。真正面から逆らえばそりゃ駄目でしょ。そんな未来なんてあり得ないわ。」
ゲルニオはシルバの顎を引いて言った。
「ジェドを倒せばアンタも自由なんだろ、その目的がコトでありそして王となる。そんな事は嫌だね。」
「おや、ジェドも殺さなければあっちからも逆襲してくると思うけど。」
「ジェドはコトの後だ。コトを俺の手で殺せたなら、首飾りも俺の物になる。」
(そして、奴らよりもこっちが上だと証明させ、いずれこの土地を拡げてやろうか…)
ゲルニオは不敵な笑みを浮かべて城へと戻ろうとした。ネオルはシルバを引きずりながら城へと戻った。
パルタンと魔境は隣り合う。つまり、馬車でも早く辿り着くことができる。辺りが暗くなってきて、ヘリオスとクレタは集中した。コトも遠方を見る。
「ひえええあっっ!!!」
前方で大声が聞こえた。騎手の声だ。コトは早速前へ前へと窓から出た。ヘリオスは左側、クレタは右側を引き受けた。後方には誰も居ない。ごまちゃんは自分を擁護しようとしたが、ダルダルの事を思い出し、急ぎダルダルの下へと向かった。案の定だった。ダルダルは活きた骸骨に襲われていた。剣の跡が残っていた。彼女は直ぐに剣を構えて骸骨を挑発した。
「そんな豚一匹狩れないなんて、緩いにも程があるしダサいわ。…こちらとの相手がお好みでしょ!」
骸骨は彼女の方を向き、剣を構えて走った。
「えい!…と。」
剣で骸骨の脚、腕と順番に折ってから額に突きを入れた。骨は下へと崩れていった。暫くしても骸骨は立ち上がらなかった。
「ごまちゃん!外は片付けておいたよ!」
相変わらずコトは仕事が早い。ごまちゃんはやっと一体を倒したのにコト達はその間に外の連中を倒したのだから。コトは照れた。
「…これで再開できるでしょー!行こー!」
クレタは相変わらずマイペースであった。ごまちゃん達は気を取り直し、再び旧魔王城を目指した。
現魔王城では今ジェドが指揮をとっている。不機嫌であり、ジェドはパルタンへと勝手に向かった。
「おーい!秘密の石はいいのかー!」
「もう一つの首飾りを取ってからだ!今は陣地を獲るだけだ!」
現魔王城からパルタンまでは少しかかる。今は少しでもコトを不利にした方が良いと察したらしい。
「まあ良いか!」
魔神はジェドの事を全く心配しなかった。
「え、もう着いたのですか?」
いつもならばもっとかかる移動だが、騎手は乗客達のお陰と言う。目の前には縦長の城があった。
「此処から先はダルダルさんらが資料を集め、俺達がその防衛をするというんですね。」
「…もうコト君が言ってくれたから良いだろう。」
ダルダルはすっかり機嫌が悪くなった。
「ダルダルさん…」
ヘリオスはダルダルを心配した。それでもダルダルは彼を見ずにそのまま城へと向かった。




