65! 迷い
朝の陽は眩い。その光に照らされ、ダルダルは目覚めた。途端に昨日僧侶に言われた事を思い出した。
「ううっ!」
頭を抱えた。結局は旧魔王城に行かなくてはならない。しかし、そこにはジェド達が居るだろう。行けば死ぬかもしれない。行かなくとも此処に居るのは立場が苦しくなるだけである。コト達には頼りたく無いと思っている。
「くっ、くそ!!」
ダルダルは部屋を急いで出た。扉を乱暴に閉ざして長い廊下を駆けた。
ごまちゃんは目を開いた。ベッドの上に居た。しかしながら、コトの姿が見当たらなかった。体を起こし玄関の方へと向かうと漸くコトの姿が見えた。そして彼の目の前にはクリスタ王が居た。
「では、宜しく。」
ごまちゃんは隠れていたのでクリスタ王は気づかなかった。扉は閉ざされ、コトはベッドの方へと向かった。すると、ベッドには誰も居なかった。ごまちゃんはその隙を突き、コトの肩を掴んできた。
「わっ!!」
「……」
コトは動じなかった。ごまちゃんの方を向いて唇を動かした。
「あ、おはよう!朝一番突然て済まないけどさ、……旧魔王城に行きたい?」
「あっ、そういう事ね!クリスタさんが言っていたのはそれについてだったんだね!」
「起きてたんだ…。」
「コト君と一緒に行くよ!」
ごまちゃんは爽やかに応えた。
「だったら、もう準備しよ!朝ごはんとかは?」
「ごまちゃんの分はこれだよ。」
コトが自分からパンを乗せた皿を持ってきた。ごまちゃんは瞬く間にそれを取り、口に放り込んだ。コトはそんな様子を見るだけで笑顔を自然と浮かべた。
(そう言えば最初に会った時より…親密感が出てきたというか…性格が直ぐに変わっちゃってる…。)
ごまちゃんは微かにそう思った。コトは皿を台に置いて先に扉の前に行った。
「コト君!待ってよ!」
ごまちゃん達の準備は少し早かった。
同刻、ダルダル達は未だ準備の途中であった。小さめの馬車を三、四台用意したらしい。
「こっちですよ!!!」
その中に紛れ込んでヘリオスが大声で呼んだ。クレタはやれやれとため息を吐く。
「誰を呼んでいるんだー。気になるじゃないかー。彼女かー?見せてくれー。」
「彼女は居りませんし、私達ごまちゃん達の護衛ではなかったでしょうか?」
その台詞を聞いたとき一匹のオークは反応した。そのオークこそ、ダルダルであった。
「なっ、何を言っているのだ!!」
そして、段々とコト達の姿が明白になってきた。彼らと行けば何が起こるか分からない。ジェドが来るかもしれない。そして、コトが何かをやらかすかもしれない。それが魔族の憶測だとするなら…。
「間に合った〜。」
ごまちゃん達は漸く馬車まで辿り着いた。ダルダルは少し慌てた。
「あれ?ダルダルさん?」
「今日は来なくても良かったが…。」
「ダルダルさん。今回貴方方と同行せよと…」
「今回お前達が行く…」
「その様な命を!!…王が下しました。」
必要は無いと自分から足掻こうとしても、クリスタ王は何故彼らを奨励するのか。その謎はダルダルには全く理解できなかった。
「ダルダルさん。」
今度はヘリオスから声をかけてきた。
「今回は私もクレタさんも同行します。人数が多い方が良い上、貴方の資料集めも集中してできます。二手に分かれても二人ずつで貴方を護れますよ。」
ダルダルは黙り込んでしまった。王の命であるならば仕方ない。ダルダルは馬車に乗った。ごまちゃん達も同じく乗車した。




