63! 騒動の事後
裏口はこの建造物には一つしか無い。戦士達は漸くそれに気づいてそこからイヅナを追おうとした。しかしそこから二人が抜け出してきた。
「お、おんめぇはっ!!」
「会場の招待客です。此方が証拠ですが。」
レア直筆の招待状を見せられて、戦士達は困惑してしまった。多分、騙されやすい奴らだと本物を渡したコトは察した。
「イヅナという奴を見なかったか?」
「この裏口に入ってから…見失ってしまいました。」
戦士達を見事騙すことができた。それを表情にはごまちゃん、コト共にしなかった。
「そこからだと外に出られるから…畜生!やられちまった!」
「イヅナ派の連中は最近釣られ易くなっていますね。馬鹿なのでしょうか。」
(君達が言えるような事じゃ無いよ。)
コトは密かに思い、深底心配してしまった。
「コト君!?大丈夫なの?」
奥からレアが出てきた。その声に応え頷いた。
「レアさんこそ!無事でし…」
「ええ勿論ですわ。」
ごまちゃんが文末まで喋っている途中にレアは適当に応答した。これでレアが彼女に対して全くもって関心が無いことが明らかになった。ごまちゃんは頬を膨らませた。
「もう十時半過ぎちまっている!」
「これ以上続けられたらたまったもんじゃないわ!!晩餐会は仕舞いよ。ごめんなさいね。」
そう言いコト達は会場を去ることにした。コトは裏口の方に目を向けてからその場を離れた。
空は東から西に向け、禍々しくなっていった。何故ならば冥府魔境とパルタンは目と鼻の先に在るから、そして冥府魔境は魔法を用いるからだ。魔法を使うのは上級の魔族だけではない。二流の魔族も使い、それに対する研究の殆どはその魔族が占めているからだ。そんな事なので当然失敗して異臭も残ることもある。
「コトは本当に此処に来るんだろうな!本当だよな!ネオル!」
「そう慌てんなやゲルニオ兄。…うぷぷぷ…。」
ネオルは突然笑い出した。
「おい、一体何が可笑しいんだよ。」
「…ダッッサ!!」
(嗚呼…小さい頃のあんたがほんっとうに良かった。そんな事を言うような奴じゃなかったし。)
「安心して。コト君は予知夢からは此処、旧魔王城にやってくるというのだったからさ。でもさ、弱い奴に教えてもね。」
「ふざけんな!燃やすぞ!」
「とか言っといて攻撃できない癖に。」
舌を出してネオルはゲルニオに挑発した。ゲルニオの堪忍袋の尾は切れかけている。
「ま、ジェドが邪魔だからさ。あいつも倒そうや。」
ゲルニオは話をすり替えた。
「弱い奴に言われたくはないわ。本気で無いわ〜。」
我慢の限界間近。
(くそ、早う来いやコト!テメェを殺してジェドも早めに殺すからな!)
ゲルニオは不敵な笑みを浮かべた。
間も無く零時。部屋には二人ただ真上を向いて寝転がっていた。
「あのさ…今日は楽しかった?」
「ごまちゃんが居なかったら何にも無かったから面白くないけど、居たから今日は楽しかった!」
二人がこの様に一緒に居れるのはグランでの出来事以来であった。
「また…明日ね。」
「……えっ?もう寝着いちゃったの!?」
「…ビックリしたよ。」
コトは起きていた。一緒にくっつきたいたがるごまちゃんを抱きしめ返した。
そして、その温みで二人は寝入った。




