5! 新たなる街と戦士と豚
ここは、柊の街。名前は無い。外部からはヒイラギ町と呼ばれている。そこでは今、町民の休日の真っ最中であった。
そんな中、ゆっくり歩いて街にやって来た2人が今ベンチに座るところだった。
「本当に大丈夫なの、ごまちゃん?」
「あはは、ふぅ…」
あの大型蠍との戦闘で毒にやられたごまちゃんだったが、数時間経ったらけろっと治ってしまった。ここまで回復力が高いとはなぁ…でも、まだ完璧には治っていないから、今日は安静かな。
そして、コトはこれからどうするかをごまちゃんに尋ねた。
「ううぅ…まだ気持ち悪い…」
さっきよりは状態は良くなってきたが、これじゃあ何にもならない。いずれ誰かに連れ去られるだろう。…また背負ってやるか。
そう思い、コトはごまちゃんを背負った。すると、目の前に重騎士の姿が見えた。面を取り、近くの子豚に話しかけている様子が見られる。コトは、少し怪しんで彼らを見つめた。
「ん、誰だ。君は…そんな嫌な顔して俺を見て…怖いか、それとも彼女を奪われたくないのか?」
最後の言葉に少しイラっときた。
「ほう、その子寝顔が可愛いな。」
一体何だよコイツ!?いきなりこっちに来て!
「君も結構可愛いよ。色は全体的に黒と白が殆どだけど、それが逆に色白の良さを引き立たせる!可愛い嬢ちゃん、僕の宿屋に来ないか?その子と一緒に。」
オスだよ!!自分で言ってきて忘れたのか!と言いたげなコトだが敢えてそう言わずに従った。
( 確かに危険だ。こんな奴と一緒にいるなんて。絶対何かあるに違いない!でも、休む所を考えると、外だとここじゃあダメって言われるし、圏外だとまた何かに狙われるし…宿屋はあと真正面のしかないし、仕方ないか…)
そしてコト達はその真正面の宿屋で泊まることになった。
中を見れば少々人がいる程度だった。評判もまぁ、中の上ぐらいらしい。
「あっ、そうそう。君と別の部屋で良い?」
その瞬間、重騎士の御付きの豚が、
「君!?はぁ〜〜〜なんたる侮辱!王を前に『君』と呼ぶなど…」
「ダルダル!!黙れ!」
重騎士が豚を黙らせた。
「そう言えば、あなたの名前を聞いていませんでしたね。私の名はコトです。後ろの女性は駒玖 裡沙。ごまちゃんと呼んでやってください。」
「ほぉう、コトと、ゴマクリサ?始めて聞いたぞ。そんな名前。」
「王よ、多分遠くの一族の名だと思います。」
「そうか…まぁ私とは別の部屋にしておこう。それと私の名はクリスタ、ランタン王国の王だ。よろし…」
王、クリスタがコトに手を差し伸べようとしたその時、豚のダルダルはそれを止めた。
「クリスタ王!この様な民に手を差し伸べて、ど…」
「臆病になっているのか!?邪魔をするな!」
クリスタ王は許さなかった。
「それではまた会おう。嬢ちゃん。」
( だからオスだって! )
ごまちゃんは少し目を開けていた。
「大丈夫かい?」
「ぐぅぅ…」
大丈夫じゃないな。王の権力を利用して寝床を見つけただけでも良かったかもな…