55! オーク達の町
夕日が直線的に光を放ち、ダルダルはついつい腕で目を閉ざしてしまった。陽は眩しい。自分と平行な位置に居られると厄介なものだ。
「…そして今はこの書物を何とか完成させ…うわあああああああっ!!インク溢したああっ!!」
二枚目の紙が浸ってしまった。その上漸く終わりそうな時に、また白紙に戻されるという絶望感も味わってしまった。
「五月蝿いぞ。ダルダル。」
「クリスタ王…」
「まあ、失敗したなら直ぐにやり直せば良いだけだ。何も考える必要はない。」
「王…まさか、夕日が射し込んで…」
「別の部屋でやれば良かったのに…なぜ。」
「ここ以外の場所は見当たらないらしく、また周ってもあまり良いという場所は無かったです。」
クリスタ王は少し悩んだ。一旦座り、肘をつけ手で顎を支えた。
「申し訳ありませんでした…」
「やはりな。」
ダルダルは疑問に思った。
「今ここではオーク達が殆ど居る場所だ。オーク達はあまり働かない。寧ろなんか壊すんだな。これとか、これとか。」
ダルダルにはあまり理解できなかった。
「つまり、今ある建築物は未完成の物が非常に多いということだ。欠陥住宅しかないから心配だ。」
ダルダルは驚きを隠せなかった。
「嘘ですよね!?それでしたらごまちゃん達は!?」
「…もし途中で崩れてきたら万一にコト君が居る。彼が動いてくれるだろう。」
ダルダルは心配した。
ごまちゃんはコトと付き添っていた。先ほどの鍛冶屋に行こうとした。扉は今度こそ開けられている。
「…やっとだね。」
「うん。んじゃ、入ろぉ!」
彼女は先頭で扉の向こう側に行こうとした。
「…あれ?誰も居ない?」
「?あっ居た!」
「悪いが今日は閉店ガラガラだ!」
コトは家の柱が軋む音を聞いてごまちゃんの手を掴んだ。
「早く出よ!危ない!」
店主は裏道から店を押し倒そうと試みた。そして、彼らの頭上の天井が一気に低くなっていく。
店は完璧に潰れてしまった。玄関前で何とか逃げきれた二人は一体何があったのかを先程の店主のオークに聞こうとしたが、もう彼の姿は見当たらなかった。
「このままじゃ、野宿になりそうだね。」
「んじゃあどうするの?」
「クリスタさんに頼んでみる?あの人相当俺たちを好んでるし。」
「え、ええ?」
ごまちゃんが二度反応した。
「だって野宿はあの人望んでいないし、あと野宿だとまた狙われるからさ…。」
「分かったわよ…」
ごまちゃんが乗り気で無かった。王族達の場所まで暫く歩き道になる。その間に彼女が彼に尋ねた。
「あのさ、さっきの速い魔法ってなんなの?」
「あれ?あれは、高速で移動できる魔法なんだ。あの光の輪を見た?あれは肉体活性に必要なものなんだ。光速で走れるように。」
「こっ光速ぅ!?」
「うん。そうだよ。その上、少し魔力を加えるだけで風圧にも耐性がつくからね。」
ごまちゃんはもう、頭が空っぽになった。
「ウン、分カッタ!」
「大丈夫…?」
混乱していたのでコトから問いかけた。




