53! パルタン
鍛冶屋の扉の前まで来た。焦げくさい臭いが漂っていた。ごまちゃん達は一旦退いてしまった。
(何なのあそこ!扉も開かないし、鼻が焼けそうで大変だったわ!!)
黒煙は空に浮かび、その色は上がるにつれ消えていった。また後で来ることにした。
クリスタ王は貴族達の区間に来た。此処ではやっとの事で人が微かに歩き回っている。ただ、やはりオークが殆どらしい。彼にとってはそんな物は関係ない。今、目の前に居る彼女と話すためだ。
「…レア。一体どういうつもりだ。おかげで見事にこの町の意見が真っ二つになってしまったぞ。」
「ええっ!?なんで私!?イヅナの方が悪いでしょ!そこ私じゃないでしょ!!」
クリスタ王はレアを見つめ続けた。彼女は観念したのか、顔を赤らめ、むきになった。
「だから何なのよ!!ちゃ、ちゃんと要件を聴いてから話すわよ!!」
「イヅナ派の考えはまず簡単に聴いた。それと、レア派の方は、経済力の向上か?」
「ええ。そうよ!だってこの町の経済はもう少しで御陀仏になる頃なのよ。オーク達がサボり続けて、結果こうなったんだもん!!」
「貴族の方は?それと、闘技場の運営費もちゃんと払わせているか?」
「当たり前よ!!」
「…そうか。今回の件はやはり、オーク達だな。少し聴いてみる。済まなかった。」
「そんな事ないわ。」
クリスタ王はレアから少し離れた。
「では。」
そして、クリスタ王はレアを後にして立ち去った。
「れ、レアさん!!」
(あっ。)
一気に大衆が彼女に向かって押し寄せてきた。噂が激流の如く流れていく。
「いっったい!!」
レアは何とかその大衆から抜け出せた。しかし、その後にまた大衆がやって来た。大半がオークである。
ごまちゃん達は暫く歩き続けたが、下町だからか、ぱっと見て良さげな店は見当たらなかった。そして、歩いていく内に横に広い建造物を彼女が見つけた。
「あっちに行ってみる?」
「あれ?ごまちゃんさっきはそこに行きたがらなかったけど…」
「き、気にしない気にしない!ともかく行こう!」
ごまちゃんはコトの手を引いた。近づくと、そこは『パルタン闘技場』と明白に書かれていた。
「また闘技場?」
「でも、奥の方で選手が浮いているのが見えたよ!」
「えっ。」
突然の事だったので、ごまちゃんはついつい驚いてしまった。ごまちゃんは勇気を持って階段を一気に駆け抜こうとした。しかし、そこにはまた防壁が張られていた。彼女は押し返されたがそれをコトが止めた。
「誰!?」
コトは気配に気づき、周りを見回した。すると、そのすぐ横に老けているオークが居た。そのオークは彼を見た。コトはオークに剣を指した。
「君は誰なの!?はっきりして!!」
「ってちょ、なぜに剣を突きつけてんじゃ!!」
オークが両腕を上げた。
「まあ、儂はオークの内の僧侶をやっとる。今は入場の規制があるから、防壁も張られとるんじゃ。」
その規制とは何かは二人とも気になった。
「…あ、私達今回で闘技場を見るのが初めてなんですよ!ですけど…」
「あん?金が無いんか。ならやるよ。ほれい。」
オークは金銭袋をコトに渡した。中にはかなりの量が入っていた。
「あ、ありがとうございます!」
「ま、一緒に行こうかね。」
その言葉を聞いて二人は嫌な予感を察知した。




