52! 秘密の石
遠くから町並が見えてきた。その初めはほんの小さな凹凸がただそこにある様に見えただけだった。しかしながら徐々にそことの距離が近づいてきて、今はもう奥の様子すら見えなくなるぐらい、高い建造物がちらほらと見つかった。
そして、とうとう町の中を馬車が走る。その時、ごまちゃんは驚愕した。
「嫌アアアッ!!」
そこにはオークが所々で普通に歩いていた。今までコト達はオークに散々な思いをされた。そして、その様子はコトをも悩ませた。
「…まさかこんな所とは思いもしなかったよ…。」
「ははは…君達の思っている様子と実際とは正反対だったようだな。」
クリスタ王が少し不気味に笑って話しかけた。
「私達をどうしようとするつもりなの!?」
「ごまちゃん、心配する必要はないよ。そうさせないように、俺が居るからね。」
コトがごまちゃんの手を引いた。
「……うん。」
「ごまちゃんだって元の世界に戻りたがっていたんだからさ、次進もうよ!」
コトの声でごまちゃんはやっと立ち上がれた。…とその直後馬車は揺れ、ごまちゃんはコトにしがみついた。
「着いたようだ。」
コト達は何事も無かったかのように降車した。馬車から降りた景色は、見たこともない世界の中にしか見えなかった。ごまちゃんは思わず身震いをしてしまった。その時に、女性が彼らに向かって走って来た。
「よくぞいらっしゃいました!王よ!!」
「イヅナか…。」
「え、じゃあ貴女が…」
「はい!」
ごまちゃんが問う前にイヅナは応えた。
「クリスタ王、今日はどのような御用件で?」
「四大派閥が二つに結合したようだな。一体何をしているのだ。このオークからパルタンの現状についてしっかりと聞いたぞ。」
「うっ…。」
イヅナは冷や汗を掻いた。泣きそうにもなったが、クリスタ王は少し厳しめに喝をいれた。
「泣くな!いつまでもびーびー泣いといて、そんなので変わる世じゃないぞ!」
「う、……はい!!」
「コト君、ごまちゃん、少しばかりこの町でも回ってみると良いだろう。慣れていくのも重要だ。あと、この町のオークは襲ってこない…はずだから安心してくれ。」
そして、クリスタ王とはまた離れることになった。
「コト君、んじゃ!行こう!!」
「行こうって…どこに?」
まずそこら辺の売店にでも寄ることにした。本当にこの町にはオークしか居ない…いや、それだと語弊がある。なぜならば、先程のイヅナという人も居た上、そこには美女も居たという話をクリスタ王がしたはずだったから。仕方ないので一応武器屋に行こうとしたが、ここには剣が売られていなかった。クリスタ王達の準備していた武器はこの事を予知していたのかも知れない。暫く歩き続けたら、コトがいつの間にかじっと見つめていた。
「…うん?おお、お主!その石!それを是非とも売ってくれぬか!?」
「…え、あっ!!ごめんね。自分で探して。」
コトから辛い言葉を貰ったのは、魔法石の売り子だった。しかし、売り子が売ってくれないかと交渉する姿を見ていると、とても滑稽な物を感じてくる。
「はあ…そんな事いわれるとのぅ…。」
「そんな事より、その石を少し見せてくれない?」
コトがその石に指を指すと、売り子は焦ってコトの手を叩いた。
「駄目駄目…駄目駄目駄目駄目ぇ〜〜っ!!それはもう非売品!!買わさせないや!!」
「はあ…訳分かんないよ。」
「言っておくぞ!!これは、シークレットストーンと呼ばれる、お前のよりも珍しい石だっ!触らせるつもりはないぞ!魔法石マニアの名にかけて!」
コトには豚が興奮して錯乱しかけている様にしか見えなかった。流石にコトは引いた。
「あ、んじゃあこれでどう?」
ごまちゃんは懐から金銭の袋を取り出した。中は金銀が互いを輝かせていて、とても綺麗な物だった。
「…えへへへへ。」
売り子は少し下卑た顔をしていた。それに屈したのか彼はその石を手放してしまった。その間に、コトはシークレットストーンを拾っていった。しかし、ごまちゃんは急ぎめだった。
「コト君!行くよ!今度あっちに行きたい!!」
コトはごまちゃんの方を向いた。そこには鍛冶屋があった。急ぎ、ごまちゃんの方に向かった。
「…むはぁぁ。こんなの幸せだよぉう。」
売り子はもう、石の事なんか気にしていなかった。




