50! 強靭な身体
ゴーレムが鉱石に覆われ、身動きができずにいた。コトはゴーレムの前まで走ったが、パルトが邪魔をした。パルトはゴーレム入りの鉱石を掴み、上昇した。
「またかー!せめてもの、俺も鳥になってみたかったなーー!」
「今されるとこっちが危ないですよ!」
風にも飛ばされないフクロウの剛体は、狙いも丁寧に定められる。しかし、そんなフクロウも動かなくなってしまった。クレタは何が起きたのか分からず、思わずコトの方を向いた。すると、今度はパルトの方に首飾りの鉱石を彼が向けていた。
「…強風にも劣らないその身体は、どうやら遠くの大空を自由に舞えるものだね。突然だけど、鳥が人の側に立ったら、それはどうなるだろうね。」
コトがクレタに対して言った。パルトとゴーレムの入った鉱石が、地上へと堕ちていく。鉱石の中からはそれは分からない。飛ぼうとしても、実際には飛べていない。最後にゴーレム、パルトの順に地へと降ってきて、それぞれの鉱石が粉々に砕け散った。
「危なかったなー。」
クレタは呑気に言った。しかし、ヘリオスが彼らに勧告した。
「気をつけてください!鉱石の破片が飛んできますよ!!」
その台地の景色は素晴らしいものだった。破片が光を反射し合って、この台地には無かったものが今此処で可視化できたようだった。
ただし実在してしまった以上、危険であるのは変わりない。急いでコト達は逃げようとした。
「…って、これって逃げられないじゃないですか!?僕達よりも遥かに速いですよ!!」
(奥の手を使うっきゃないか。)
「クレタさん!ヘリオスさん!俺の腕を掴んでください!!」
二人は言う通りにした。すると、コトの両腕、両脚首に、白と黒の輪が一つずつ出てきた。そして、その輪はやがて一つになって混同した。
「行きます!!」
その声と同時にコトは足を踏み出した。すると、三人は何事も無かったかのように馬車の方に戻ることができた。一瞬だった。そして、その時輪が消えていった。
「!!?」
「ここは…」
「コト君!?」
瞬きをする間にそこに居たので、ごまちゃんも驚いてしまった。
「とにかく!!今すぐ馬車を出さないと!!」
「岩石の欠片が降ってきますよ!!」
「…落ち着いてください。俺達の行く方向はあっちでは無いので。その上、結構離したので問題無いと思いますが。」
そして、二人はやっと気楽になれた。ごまちゃんはコトの方へ近づいた。
「コト君大丈夫!?」
「平気。そっちこそ無事で何よりだよ。」
ごまちゃんはコトに笑顔で抱きついた。
「良かったぁぁ!」
近くでクリスタ王がコトを見ていた。
(コト君はここまでやれるのか…恐ろしいのはどちらなんだか…)
「馬車を出そうか。もうそろそろ休憩も仕舞いだ。」
クリスタ王達は再び馬車に乗った。
同刻、パルタンでは激しい論争が起きていた。政治方針を決めていたのだ。今までこの町の政治方針は対立の為、決められてなかったのだ。その論争には、4大派閥のリーダーが出席していた。
「そんな筒抜けな政治で住民が働けると思っていたのか!!?」
「金は別に私達の方でやるよ。貧相なアンタ達と違ってね。」
「地方の事も考えなきゃいけないのよ!!経済だけでなく、法も…」
「『必要なのはまず金』ですから、政治についてはまず諦めましょうかね。」
「そ、そんなぁ〜。私は絶対反対ですよ!!」
イヅナ、レア、エアル、シャルがそれぞれ言い争っていた。その様子から、他の人は部外者に近くなってしまった。
(エアルちゃん…何であんなのと!)
(ああ、面倒くさい。)
(ま、合理的ですから入っただけですよ。)
(ど、どうしよう…)




