47! テーブルゲーム
今、陽が丁度落ちたところだ。住宅地が次々と再建されていった。その一方で王達の出立の支度が整ったようだ。その情報が住民達に知らされ、馬車の周りで人が集った。
「王!無事に帰還してください!」
「此処は私達に任せてください!」
人気が高いクリスタ王であった。一般の王は『絶対王政』というものがあるほど、王が住民達を支配するという負の想像があるが、彼はそうでもない。民衆に甘い気がする。いずれ、クーデターの可能性も有り得る。そう考えた者も中に居るだろう。しかし、彼が王になってから一度も革命も、いや争いすら起こらなかった。彼を批判しても、嫉妬にしかならない。
「……スゴイ…。」
「…そうだね。でも、大丈夫かな。こんなに沢山……馬車も通りずらいよ。」
馬車の周りは一面中に人が居る。おかげで時間だけが過ぎていく。そこでクリスタ王は顔を出して、民衆に叫んだ。
「我が民達よ!済まないがこのままではパルタンへ行けん!帰還の時にまた祝おう!」
「オイ!道を開けてくれ!王がお通りになる!このままではパルタンに着かない!開けてくれ!」
ある男が呼びかけた。そして、徐々に道が開いてきた。馬車も漸く進む。
道は凹凸があり、馬車は揺れに揺れていた。
「…っあ!!…て、ああ!ばらまいちゃった!!」
「ごまちゃん、凄く強いよ…。」
今、ポーカーをやっていた所だったが、馬車が動き始め、今回はノーゲーム。しかし、コトはごまちゃんに1度も勝てなかった。おかげで汗を掻いた。
「コト君だって、ストレートとか…」
「そっちはロイヤルストレートフラッシュ決めたけどね…。」
恐ろしい実力(運)だった。7戦中2回もロイヤルストレートフラッシュを出してきたもの。そりゃあ勝てない。
「次こそ…!!」
「コト君!!」
「うわぁぁ!!!?」
ごまちゃんが倒れた。そこに居たのはダルダルであった。
「クリスタ王がお呼び…」
「わかった!!」
二人は慌てて、クリスタ王の車両へと向かった。
「全く。」
「よく来たな。では早速紹介しよう。彼が今回の私の護衛に付く、ミイとルブトだ。」
「…よろしくお願いします…。」
「よろしくお願いします!」
ごまちゃん達にとっては何なのか分からなかった。まあ良い。だいたいそう思っただろう。しかし、クリスタ王は話を続けてごまちゃんに言った。
「…ゲームでもしないか?ごまちゃん。」
ごまちゃんはその一言で目が覚めた。王に勝負を申し込まれたら無論、彼女は退かずに断言した。
「良いですよ!!」
「だったら、私の得意なチェスでもやろうか。」
強引にやるものを選ばれた気がするが、そんな事を気にしても何もならない。素直に挑んだ。
「クリスタ王…ごまちゃんは強いですよ。」
「ああそうか。それがどうした。私はチェスで負けたことは無い。」
コトはクリスタ王を疑った。そこで、ごまちゃんがコトに言う。
「コト君は他の所で待っていてね。」
「凄いな。本当なら観てみたいけど、言うなら仕方ないよな…。」
「大丈夫、絶対勝つから!」
コトはごまちゃんに笑顔を見せた。そして、コトはもとの車両へと戻った。
「ミイ、ルブト、貴様らもだ。」
「は、はい!」
「了解です。」
二人はコトの後を追うように車両へと向かった。
「…此処では存分にテーブルゲームを行える。さっきからあまり揺れないだろう。」
確かに、その通りだ。此処に来てから大きな揺れも小さな揺れも感じない。
「暫くできるな…」
そして、馬車は林を通って台地へと向かった。遠くからは大きい獣も居た。勿論、ごまちゃん達には分からない。パルタンへ向かう者を殺し抜く、そんな強敵達がいる事に。風もよく吹き、砂も舞っている。




