46! 国渡の支度
竜の攻撃により崩壊寸前の都市、グランでは現在正午を迎えようとした。陽も照っており、昨日の雨を忘れさせるほどの快晴であった。
建造物の建て直しは当然行われている。しかし、長い時間をかけることになる。市民が積極的に再建に取り組んだ。
そんな中、ごまちゃんは手当てを終えて外に出ていた。コトと一緒に歩きながら喋っていた。
「すぐ歩いて大丈夫なの?」
「平気よ。だってこんなに元気なんだし。」
「…無理しないでね…。」
コトはやれやれと溜息を吐いた。今居るところは親衛隊隊舎。実はそこしか病気等の手当てをさせてくれない。その上、そこまで行くに当たり関係者でないと門前払いされる。つまり、兵士と民衆の格差も激しいのだ。しかし、緊急で住民の世話をしている。
同刻、クリスタ王達はパルタンへと向かうための準備を整えていた。食糧、武器、馬車等、凄まじい速さで終えていた。後は、出発の時を心して待つだけだったのである。
「…よし。ダルダル!」
ダルダルが彼の下へと向かった。
「何事でしょうか。」
「親衛隊のクレタ、ヘリオス、第1隊のルブト、ミイを呼んでくれ。」
「承知しました。」
ダルダルは自身の部下に伝言を残し、自分の仕事に戻った。
「…しかし、あの2大派閥が交わったとは…何故そうなったか知りたいものだな…ま、知るにはまずあの台地を越えてからでないと始まらないがな。」
「デミ隊長、親衛隊のクレタ殿とヘリオス殿を王がお呼びしています。」
「おう、分かったぞ。おい、クレタ!新人!」
「ひゃっ!?」
一人が大いに驚いて、こちらを向いた。そして、もう一人が横の廊下から歩いて来た。
「何事かー。」
「王がお呼びでございます。直ちに…」
「私が連れて行くよ。何、今回の件についてだ。」
そして、彼女らは城へと向かった。そこにひっそりと盗み聞きしていたごまちゃんとコトが居た。
「どうする?あの人の後を追ってみたけど…」
「とりあえず、行ってみよ!」
ごまちゃんが先導を切って追った。城の前には門番はいない。チャンスだった。しかし、ごまちゃんが見た先には平然と立っていたクリスタ王の姿があった。彼は気軽にデミと話していた。
「コト君にごまちゃんとやらもここに来なさい。」
二人は気付かれたので、観念してクリスタ王の前まで歩いた。
「コト君、彼らが今度パルタンへと同行してくれる、親衛隊のクレタ、」
「よろしくなー。」
棒読みだった。そんなにいじっていない髪型であった。
「そして、ヘリオスだ。彼は君が来たときの親衛隊入隊試験で丁度入ってきたルーキーだ。」
「よろしくお願いします!リオと呼んでください!」
身軽で細い身体をしており、顔つきも良く、濃い。
「…デミさんはどうするんですか?」
コトが心配そうに言う。するとデミは下を向いた。
「行かないわ。だってここに居なきゃいけないから…大変よ。」
「とまぁこんな感じだ。あと、護衛としてもう二人来るはずだ。まあ、出発の時にでも話しておこうか。」
今日から出発である。もう、4日分過ぎたはずである。コト達は城から出て行き、隊舎へと戻ろうとしたが、もう準備を終えているのに気づき、早速そちらへ向かった。
「へぇ…」
「ごまちゃんはそう言えばそのげーむとやらで何が好きなの?」
「テレビゲームに決まっているよ!」
「て、テレビィ?」
そう言えば、コトはこちらで育った魔族の筈だ。だから現代の事はよく分からなかった。
「あと、ヴァーチャルリアリティのゲームも今欲しくてさ!あれは凄く迫力があると思ったよ〜!」
コトはなぜか頷いた。
「ああ、ヴァーチャルリアリティ…『映像の現実化』か…。」
「そ、そうそう!そんな感じの〜…」
「でも、凄いな。そのげーむとやら!こっちのゲームはテーブルゲームが有名だからさ、そんな映像が現実になるというものは初めて聞いた。」
「テーブルゲームの中でも何が得意なの?」
「俺はポーカーとページワンとブラックジャックが得意だよ。ちゃんといとこ達全員に勝ってるさ。」
コトが自慢げに言うが、ごまちゃんは笑みを浮かべてコトに言った。
「んじゃあ、やってみる?」
「移動中にでもやろうよ。出発まであと少しだからさ…馬車の中でね。」
そして、コトは馬の主人の方に向かった。




