44! 魔王の品格
ごまちゃんは竜のバルフデを見上げた。少し大きめだったので驚きを隠せなかった。コトはいかにも挑戦するかの様な目つきで竜を見た。そして、コトは不意打ちを狙って脚を斬ろうとした。竜が炎を吐いてきたが、コトは炎を受けてしまった。
「コト君!!」
しかし、炎は散りコトの姿を見せた。
「……。」
コトは黙っている。ごまちゃんから言っても、返事すらしない。竜は再びコトに炎を吹こうとした。その瞬間、バルフデは行動できなくなっていた。魔法陣の効果がまだ続いていたからだ。
それでもコトは喜ばずに、魔法を唱えた。
「1…浄化!!」
バルフデの表面が砂のように粉々になっていった。そして中身のオークの死体が現れた。
「…ごまちゃん、あっちに行こう!」
「コト君、また…」
「ごまちゃんが見ている景色はここの人達の殆どと同じなんだ。だから、助けなきゃ終わらないよ!」
「…見捨てないで…。」
コトはごまちゃんの目の前まで走り、彼女の手を取った。
「だったら…一緒に行くかい?」
コトは笑みを浮かべながら応えた。ごまちゃんはコトの顔を見つめた。彼女は頷いた。
「…じゃ、行こっか!」
コトはごまちゃんを引き連れて行こうとしたが、強風が吹き、炎に囲まれてしまった。
「…大丈夫!?」
ごまちゃんがコトに言った。その時、彼女の脚に火がついてしまった。
「…キャアアアッ!!!」
「ごまちゃん!?」
コトはごまちゃんを見た。直ぐに呪文を唱え、火を消した。悲惨な事に、彼女の脚は黒く焦げてしまっていた。
「ごまちゃん…」
「…あっ、いやこれは!へっ、平気…痛っ!」
コトがまた魔法を唱えようとしたとき、ごまちゃんが手を止めた。
「ごまちゃん!駄目だって!そのまま歩いちゃったら耐えられないよ!」
ごまちゃんはコトに構わずゆっくり歩き始めた。
「…ひゃっ!」
ごまちゃんは何度か転けてしまった。その度にコトが彼女に手を借してくれた。挙げ句の果て、ごまちゃんは疲れきって倒れた。それでも彼が自身の身に彼女を寄せた。
「…ほら…。」
「…ふふ…。」
その間に、竜が三体コト達の周りに居た。一斉に炎を吐いたが、コトが防壁を張った。そして、コトは三体に睨んだ。
「……。」
再び無言になった。コトは魔法を唱え始めた。先程の魔法と同じく、鉱石の魔法であった。
「5…カルマ…1……浄化…」
すると、周りの竜は砂のように粉々になってしまった。しかし、燃え盛る炎は消える事が無かった。




