42! 首飾りの秘密
業火は徐々に都市を焦がし、侵食していく。全市民は絶望した。ランタン王国の終わりが近づくと思っていた。
火炎は城にも広がっていた。焼け死ぬ人々は死を惜しみながらも儚く消えていく。ジェドはその様子を笑いながら見ていた。
「ククククク…実に愉快だ。コトが燃えて死ぬ。なんて無様な死に方だ!!そんな奴に、魔王なんか任せられるかよ!!」
バルフデはコトに向かって火を吐いた。そうした筈だった。
火炎が防壁に妨げられ、コトの姿がしっかりと残っていた。その上、今まで見たことの無い防壁である。コトはそれでごまちゃんを助けた後に彼女の方を振り向いた。
「あの…コト…ひやっ!」
コトが突然ごまちゃんの手を取って、立ち上がらせた。
「ごまちゃん、ごめんね。」
「そ、それはこっちが…」
「ごまちゃんを守るためにいろいろとこっちからも仕掛けたんだよ。」
「…えっ?」
ごまちゃんはコトを疑った。コトがわざと死んだのかと一瞬だけ思ったからだ。
「そりゃあ、ごまちゃんが急にアイツと戦うんだからさ…驚いて補助ぐらいしかできなかったんだ。やるなら君を守るぐらいやった方が良かったんだ。死なないようにね。」
「だってあの時は私がコト君の魔力を…」
「僕が君を守るために費やした。残念だけど、俺から魔力は取れないんだ。」
ごまちゃんは目を大きくした。
「正直に言えば、君が死にそうな所を補助して軽傷で抑えたんだ。」
ごまちゃんは確認して、ゆっくりとコトを抱いた。そして涙を流し、締め付けた。
「…ありがとう…。」
「…礼を言うのはまだ早いよ。今はまだジェド兄が居るんだ。アイツを退かせて…終わらせる!!」
そう言った瞬間、コトの辺りから蛍の如く光が、以前よりも遥かに多く出てきて荒ぶった。その激しい光は所々へと散っていく。
ジェドはその様子を見て、眉を曲げた。
「ゆ、許さねぇ…あの鉱石の力を、持って魔王…その能力に頼るしか能が無い貴様が嫌なんだ…俺の欲しかった能力を今目の前で使いやがって…。」
デュアルデルタ鉱石は、出生と伝承の護石としてこの世界でよく使われる。その能力を発揮できるのは事実上、魔導師のみである。魔力を加えることで初めて力を持てるからだ。この鉱石にはありとあらゆるものを増殖させる力を持ち、魔法の命令に従って増殖させるものが変わっていく。状態にも関わっていく。魔力が少ない時にはその増殖を始め、魔力を高められるのである。
そう本に書かれていた。その様子をジェドは初めて見てしまったのだ。本当は自身がその首飾りを持つのに相応しく、自身が使ったことの無い魔法を使う特権をコトよりも早く…それが夢想のまま終わったのだ。この上無き怒りをジェドは実感した。
「許さねぇ!!!!」
ジェドは突進してこっちに突っ込んできた。
「…ここは任せろ!」
そして、首飾りが光りだした。そして、3つの魔法陣がコトの前に出てきた。ジェドにとってはデタラメな魔法にしか感じなかった。
「そんなもので…舐めてんじゃあねぇ!!」
「…5…カルマ!58…ラージテリ!47…パラライズ!」
コトは三つの魔法陣を一つに収めた。そして、魔法が発動された。グラン全体に魔法陣が広がった。
その時だった。コトに向かって突っ込んだジェドが転倒した。
( なっ、た、立てねぇ!!…!?その上、手首と指、そして首から上しか動かねえ! )
ジェドはその魔法を受けたとき、気づいた。
「これが…デュアルデルタ鉱石の…情報能力か?」
コトはジェドに対して軽く笑った。
「そうだよ。デミさんと稽古してね…そのおかげで手に入れた力だ。先程俺が言った番号はその魔法を編み出した魔王の代を表すんだ。そして、その魔法を組み合わせて、何通りもの魔法が使えるんだ。」
「やっぱり許さねぇ!!!!!魔王になりたかったのはその能力を持ちたかったからだ!正式な魔王になれば、この世を意のままに操れる!その魔法の中には、『記憶消失』の魔法もあるからな!!」
ごまちゃんはコトを見た。ジェドの言葉を聞いてその魔法の存在があるとは知らなかったのだ。
「…コト君?」
コトはごまちゃんを無視した。
「そして、俺が欲しがっているんだ!これ以上、テメェの好きにはさせねぇ!!!」
そうジェドは言い、コトに向けて人差し指、中指をつけて指した。そして、電気の一閃がコトに勢いよく向かってきた。




