表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごまちゃんクエスト!  作者: コグマ
第3章 グラン編
33/90

32! 孤高の過去

キットは微笑みを浮かべながら、コトに突っ込んできた。渾身の一撃を当てたつもりだったが、コトに悉く受け流された。

「鈍い。」

コトが剣を振りかざすと、キットの鎧が砕け、腹を切り裂いた。

「ぐぅっ!」

キットは直ぐに後退した。致命傷にはなっているらしい。

( これが、訓練の成果か?一日にしては出来が凄過ぎる…デミの訓練を受けて俺も此処までなる事は今まで無かった。パワー、反応、スピード!…そろそろ世代交換の時期かなトホホ… )

そう思った刹那、目の前にコトの姿があった。キットは気配を感じず、気づくことすらできなかった。

「ぐほぁぁぁっ!!」

今度は胸を半分斬られた。剣で何とか止めたものの横に飛ばされた。

「……。」

コトは無言だった。冷めた表情をしながら、キットの方を見ていた。

「…へぇ〜…コト君ぐっほぁ!ゲホゲホ…!オェッ!

…ハァ…ハァ…こ、怖いねぇ相変わらず。そんなにパパを殺されたのが根に残ってるんだなぁ…ゲホ」

血を吐きながらキットは喋り始めた。

「…まっ、魔王討伐ウェ…したのもただ、表向きに正義のためなんかじゃあない。…昔っからテメェらは忌み嫌われてたんだ…俺も教わったんだ…『魔導を用いて何かを得ようとしても、生むのは厄災、それを主にする魔族がこの世で跋扈する限り、人々を滅ぼしかねない。恐怖は永遠に続く…魔族を滅ぼすまで…』ってな。グッヘェグッッハ…

…でも奴を倒してから分かったんだ…」

コトは睨んだ。剣もついでに構えた。

「…テメェが煙たがられ、石を投げられ、いつ処刑されるか分からない姿を見るのは…独りでいる様子は…俺を含めて、全員にとって…


…快感だったぜ。」

コトはキットの所まで距離を一気に詰め、剣で頭部を刺そうとした。その時も何も言わなかった。

その時だった。

キットの前にごまちゃんの姿があった。彼女がコトの行為を止めた。目の前にいると、明るい色の目の所為か、おぞましく感じた。顔は痛々しい表情をしていた。ごまちゃんは怖がり、ついつい叫んでしまった。

「コト君、やめて!!!!!」

コトは剣を下げた。観客は静まってしまった。


「あいつ、魔王の子息だと…あの少女を洗脳して…おまけに勇者を…」

「憎たらしい事をする…やっぱり消え失せろ!!」

「ていうか、死ね!!」

「死ね!」

観客が舞台に飛び出て、持っている武器でコトの方に向かって走っていった。

「ごまちゃん!逃げて!」

「あいつだけを殺せ!」

ごまちゃんは嫌がり、首を横に振った。

「嫌だ!見殺しになんかしたくない!!」

気づいた時にはもう包囲されていた。

「死ね…糞餓鬼がっ!!」

斧を持って上から振り落とす刹那、その斧を持つ男の腕をデミが掴んだ。

「…こんな所でテメェらは要らねぇ!!とっとと帰りやがれ!!」

デミに叫ばれた観客達は渋々と舞台から出ていってしまった。

「やっぱりアイツは洗脳をしているんだ…」

人混みからそのような声も聞こえたが、彼らには関係無かった。しかし、それでもコトの顔が元の表情に戻ることは無かった。デミはキットに近づき頰を叩いた。

「…テメェの負けだ…もう二度とその口開くな!!」

キットは目を閉じ、敗北感を感じた。勝者のコトは自身の勝利を誇ること無く、ただ沈黙していた。


「クリスタ王。とうとうコト君の素性が住民達に明かされました。」

「何っ!?」

「何っ!?…じゃありません!!貴方がコト君を始末しなかった所為でこうなったんですよ!!」

ダルダルはこの時、クリスタ王に厳しい目をしていた。

「住民達が騒いだ以上、コト君は処刑しなければ、安寧を民が思えません!!絶望に…」

「勇者キットを呼べ…」

「今頃彼…」

「ちゃっちゃと呼べ!!」

「は、はい!クリスタ王!!」

ダルダルは早速キットを呼びに行った。クリスタ王は外を眺めながら思った。

( コト君、ごまちゃん…無事でいてくれ! )

クリスタ王はそう言い、歩いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ