18! 闘技場の戦士達
光輝く方向に、ごまちゃん達は走っていった。今は一体誰が戦っているのか、どのような戦士達が立ちはだかるのか、早めに見たかったのだ。
暗闇から出てきたら、観客の声は一斉に大きくなった。舞台を見てみると、どうやら勝負が決まったようだ。勝者を見てみると、小柄なランサーだった。盾は持っておらず、軽装な装備をしている…と思う。
とりあえず席に座ろうとするが、椅子が無かった。
「あれ、椅子は?」
ごまちゃんが言うと、コトが言った。
「下に何か敷いて観戦するタイプだよ。」
確かに、辺りをを見回してみると敷物の上で観戦する人が殆どだった。地面は砂で固められている。遠くを見れば椅子のある方の観客席も見つけたが。
「コト君、敷物持ってる?」
「…ごまちゃんは?」
二人は顔を見合わせた。するとごまちゃんは誰かを探し、その人に指を指した。
「あの人から借りてもらう?」
ごまちゃんが指を指した方向には、青いマント、銀の装甲、そして勇ましい剣を持っている男だった。コトは目を疑った。そんな筈は無いと思った。いつの間にかごまちゃんはその人と何故か交渉していた。コトは急いでごまちゃんの所まで走った。
「ごまちゃん!待って!」
「ん?」
「あっ、君と一緒だったんだ…良かったらここで観戦しないか?」
「は…はい…」
コトは断れず、黙ってしまった。ごまちゃんは元気に隣に座った。その隣にコトが座った。
「丁度始まった所だ…」
「何かとても地味…」
ごまちゃんは酷評したが、その瞬間、戦士達は驚異的な剣術を用いて観客達を一掃賑わせた。ごまちゃんもあまりの凄さに呆然としていた。
「あのレベルがここにはぞろぞろと居るからな…ごまちゃんにはちょっと、不向きかな?」
ごまちゃんは溜息を吐いた。
同刻、デミ隊長は機嫌を直していた。
「これ程とはな…これで最後なのか?」
「そーみたいですねー。」
「クレタ…殴るぞ。」
「すいませんでしたー。」
「…私は大浴場に行くわ。ちゃんと観ておいて。」
「了解致しましたー。」
デミ隊長は席を離れ、このバルコニーを去った。
親衛隊入隊実戦型試験は、庶民的にも有名である。しかし、今回の試合は中でも多くの観客を楽しませた試合だった。
「これは凄過ぎだろ!」
ごまちゃんの隣の謎の男は驚きを隠せなかった。試合が終わっても観客のざわめきは止まらなかった。
「いやぁ…凄い試合だったなぁ。」
「そうですね。」
コトは普通に言い切った。
「今日の試合はこれで終わりらしいようだな。」
「えぇ…今日は一試合しか見れなかった…」
ごまちゃんは悲しげに落ち込んだ。
「まぁ、明日見に来れば良いさ。君の彼氏…え〜と誰だっけ?」
「コトです。」
「そうそう、コト君が頑張ってくれるんだから。」
コトは怪しんだ。再び謎の男を見た。
「ね。魔王コト君。」
「…!?じゃあやっぱり貴様が…!」
「そうだよ。魔王コト。俺が君の父を倒した勇者、キットだ。」
コトは彼を睨んだ。