17! 戦士達の地区
陽は昇り始める。馬車は新たな場所へと近づいて行く。門が近づいて来た。その高さは天貫くばかりに高いレンガ造りの物だった。検問を通り、真っ直ぐ突き進む。
その先には広大な道があった。様々な物を乗せている人力車が多くあった。更に、建造物も様々。
「君達から向かって真正面にある大きな建物が私の城だ。」
「こんなに特別扱いされるのはあなた達が初めてですよ…ホント、どうしてしまったのやら。」
「貴様も可愛がってやっているつもりだがな。」
ダルダルは少しばかりムキになった。そんなことを聞いていないごまちゃん達は一緒にその城を見ている途中だった。
「…こんなの初めて。」
ごまちゃんの囁きにコトは頷いた。
城門の前でごまちゃん達は別れになった。
「さらばだ、嬢ちゃん達。次の出発は4日後になる。
これは私からのお礼だ。」
クリスタ王はごまちゃんに金を渡したが、ごまちゃんは戸惑った。
「金については分からないか…この通貨は『セイ』と言う。これで物と交換もできる上、観戦だってできるようになる。あっ、コト君に一応伝えておこう。この区内には闘技場が存在する。腕が鈍ってきたら、そこに行くと良い。ただし、その鉱石や魔法は使えないからな。その上死ぬかもしれん。何、剣ぐらい一本準備してやろう。ほら。」
クリスタ王はコトに剣を渡した。
「こ…これは…俺と…同じ?」
「いや、君のと似た物だ。私が選んでおいた。好きに使うが良い。」
その剣には、鞘がついていた。自然に剣と密着していて、持ち手の部分だけを持っても鞘が落ちてこないなかなかの代物だった。コトのにはそれが無い。
その他はコトの物と同じくヒトの中では最上級の品物だ。
「ありがとう…」
「そんじゃ、行こうか!」
ごまちゃんが意気込んだ。クリスタ王はそうして走って行くごまちゃん達を見ていた。
「行こうかダルダル。」
「早く城に入ってください!部下達がお待ちしておりますよ!」
道中で、ごまちゃんがコトに尋ねた。
「ねぇコト君。そんな顔なのに魔族なの?」
「そうだよ。なんせ魔族は元々ヒトだからね。」
ごまちゃんは仰天した。コトは話を続けた。
「ある人が、魔法に目覚めちゃってね、段階を踏んで子孫にも魔法を託した結果、今に至るんだ。オーク達は突然人から魔族になるつもりだったから突然変異を起こしてああなったんだ。」
ごまちゃんは話題を変えた。
「…魔界って実際にあるの?」
「ぶっちゃけ言ってみたらある意味ここが魔界だよ。魔法使えるんだし。魔族出てくるんだし。」
「へえぇ…」
ごまちゃんは驚いた。そうしている内に闘技場が見えてきた。
「あれが闘技場か…騒がし過ぎるな。」
観客達の声が聞こえてきた。
同刻、闘技場のある場所は眺めの良い場所だった。他の観客とは違う目的でこの闘技場に来た二人がそこにいる。
「今日の飛び入り参加を不可にしても客がこんなに集まり、盛り上がるとはなぁ。」
「そーですねー。集まりますねー。」
一人は棒読みで返事した。
「この為に集まって来るんだからな。やはり、闘技場は楽しい物だなぁ、クレタ。」
「そーですねー、デミ隊長。」
「少しむかつくから止めてくれないか、その癖。」
デミ隊長はクレタに言った。
「しかし、静かな方だ。あの伝説の勇者がここにいなくなってからは完璧に盛り上がりが低くなっている。発狂した奴だっていたさ。」
「新たに捜すしか無いですかね。」
そう言い、彼らは観戦を続けた。
「やっと着いた…」
ごまちゃん達はやっとの事で闘技場に着いた。すると目の前の兵達に聞かれた。
「今日は飛び入りできねぇんで、観戦だけになりやすぜ。もし観戦したいんなら今日は親衛隊の入隊試験だから金を少し払ってもらうんぜ。」
「い…幾らだ?」
「150セイですぜ。」
「払う!」
コトはすぐに言った。そして兵に金を手渡し、奥へ向かった。