16! 無茶振り
ごまちゃんは王らしきオークを倒し、負かした。その後に、コトの方へと向かった。部下のオークが飛び出てきた。直ぐ斬られた。オーク達は逃げてしまった。
「コト君…」
そう呟き、コトを背負った。オークはどうやら全員外に出ていってしまったらしい。いずれ餓死するだろうと思いながらごまちゃんはオーク達の巣から離れていった。
外はすっかり夜になり、月も昇っている。昨日ではあんなに大きな月だったのに、今ではこんなに小さくなっている。
その様子を気にせず、ごまちゃんは馬車が向かった方向に小走りした。時々水分補給も兼ねて、運び続けた。荒野の景色から漸く木々が立ち並んでいる風景に変わってきた。すると、コトの目が開いてきた。顔に白みも戻ってきた。
「……ごまちゃん?」
コトが起きて呟いたことを、ごまちゃんは気づき、足を止めた。
「コト君…無事だったのね。」
「血まみれになってるよ…」
そう言いコトはごまちゃんの顔に付いた血を拭き取った。ごまちゃんは俯いている。
「ごまちゃん…ごめっ!」
ごまちゃんは急にコトを押し倒し、押さえた。
「何回言えば分かるの!!無茶ばっかして!あなたが死んだら悲しいし、次に進めないし!」
ごまちゃんは怒ってコトに言った。
「ごまちゃん…」
「私だって、悲しいわよ!君が居なくなったら辺りが見えなくなるんだもん!」
「…今度は、ごまちゃんが俺を庇う番って事?もしかして…さっきの件も…」
ごまちゃんはコトの手を握って、言った。
「私が君を必要としたから…全力で君を助けただけ。少し位、私に頼ってよ…」
ごまちゃんは頬を膨らませて、コトを見つめた。
「分かったって…分かったよ…」
コトは涙を流した。
「コト君…今度は君が泣いてるよ?」
「…止めてよ…。」
コトはごまちゃんに囁いた。
同刻、クリスタ達は待機していた。
「遅い…遅い、遅い!遅〜い!!」
ダルダルの我慢が限界にまで達した。
「もう、ちゃっちゃと行きましょう!彼女らはもう置いていきましょう!」
「拠点までは直ぐだ。焦る必要は無い。急ぎの用事も無いからな。それに、来たぞ。」
ダルダルは後ろを振り返った。すると、2人の人影が見えてきた。
「あなた達!」
「コト君、ごまちゃん!」
「すみません。迷惑かけて…」
「本当ね。」
「急ごうか。ダルダルも待ちくたびれ様だしな。」
そして、クリスタ王が再び命令を下した。ごまちゃん達は急いで馬車に乗った。
空は、街の方向から青みがかかっておらず、黒いまま。しかし、ごまちゃん達の真上の空は広く自由に散らばっている。ごまちゃん達は寝て、次の場所『グラン』へ向かった。馬車はいつも動いているのに、景色は殆ど変わらない。それはごまちゃんとコトの2人の寝顔と一緒だと、クリスタ王は少し思った。馬車は更に暗闇を走っていく…