13! ジェドの思惑
陽はもう高く上昇していた。日陰にいようと二人は日向を避けた。肩を寄せ合った。コトは少し恥ずかしがったが、話を続けた。
「そこでの生活は父の教訓が本当に役に立った。独りでも出来る事はやれってね。過酷だったものの、何とか、兄達の所に帰れたよ。」
「どうやって帰れたの?」
「勇者達に捨てられてから、逃げ続けた。」
「ふえええ…」
ごまちゃんは驚いた。
「その時の兄達は変だったよ。俺を不敵な笑みで見てきたんだよ。その中で、姉が俺に抱きついてきて泣いていた…」
「姉さんもいたの!?」
「うん。俺が末っ子で三人兄弟。その時いた人数は俺を含めて7人だった。」
「そんなぁ…私、一人っ子だよ。兄弟なんて羨ましいわ。」
「確かに楽しそうだけど、その時の兄は違った。俺に隠し事をしていたんだ。」
「…どういう事?」
「奥の部屋に父の身体があったんだ。でも、それが変だったんだ。」
「どこがおかしいの?」
「魔王はやられる時に昇華されるはずだったんだ。勇者によって。その場に遺体が残る筈が無いのに。暫く待っても何も起こっていなかった。眠っているだけかと思ったんだ。兄に聞いてみたら、『もう死んでいるんだ。明後日、その遺体を魔神に持って行くつもりだ。』ってね。
ヒトの町で調べた事があるんだ、魔神の封印の解き方。魔王の心身を捧ぐ事で簡単に解くことができるんだ。その時の事を思い出しながら父の身体を確かめると、気絶状態だったんだ。勇者は魔王の死の張りぼてに過ぎなかったんだ。いかにも怪しそうだったから、明日こっそりと兄の話を聞いたよ。夜だったね。
その時の話を聞くととんでもない事が分かったんだ。父を捧げて魔神を再び復活させ、俺を殺してこの首飾りを強引に手にして、真の魔王に兄はなるつもりだったんだ!」
ごまちゃんはこの真実を聞き、驚きを隠せなかった。
「自分を徹底的に潰すつもりでいたんだ。それを聞いたから明日、遺体を捧ぐ日は兄から必死に逃げて隠れたんだ。上級の魔族だから、隠れ場所はあの山以外でも良かったんだけど直ぐそこの山なら間に合うかも知れなかったからね。でも、今度は自分から宝箱から出られなくなっちゃったんだ。1日経って兄達は帰ったから良かった。その上、その数時間後に君が来てくれたんだ。」
「へへっ…あの時は驚いたよ。箱入り魔王!!なーーんて…」
ごまちゃんは自慢気だった。寝付いてしまったが、コトはそのままにして、一緒に眠った。
同刻、クリスタ王はダルダルを呼んだ。
「……。」
「クリスタ王、この後如何なさいますか?」
「コト君を呼べ。」
「承知しました…。」
「ダルダル、いつものような元気が無いぞ。どうしたんだ。」
「王とは長い付き合いなので寂しかったですよ。あんな奴、絶対に許しません!」
「あぁ。」
「コト君の事も勿論です!そもそも何故魔族がこの世に居なければならないのか、ヒト達をそんなに支配したいか!」
「…ダルダル、」
「何でしょうか?」
「コト君についてだが、許してやってやれ。」
「何故ですか!?そもそも魔族のせいで、ここまで危険な状態にまで晒されているのですから…」
「…コト君はその償いをしたいと思っている。彼一人で、魔神も、そして私をこんなにした魔王ジェドを…倒すつもりだ!」
ダルダルは黙った。そしてクリスタ王に忠告した。
「後悔しないでくださいね。」
そう言い、ダルダルはごまちゃん達を呼びに行って来た。