10! 蛍の如く光
夜となった。眼を開けたら月が大きく見える様に感じた。そんな明月の光に起こされたごまちゃんは、目の前の殺風景を見た。辺りは廃墟と化していた…
「コ…ト…く…ん?」
そこには、身体を飛び散らしてしまったあの黒い少女、リリーと大型蠍がいた。目の前のコトは腹に穴を開けられ、大量出血をしていた。リリーは笑い、罵った。
「コト、もう貴方は無理よ!人に加勢して!同族を殺し!更にはここまで逃げるとはね!もう貴方の帰る場所なんてないわ!」
リリーは、止めを刺そうとした。コトを抱き、ごまちゃんはリリーから逃げた。しかし、大型蠍の速さは異常だった。一瞬で追い抜かれ、ごまちゃんは転び、
擦り傷を負ってしまった。
「ご…ま…ちゃん…」
「うっ、コト君!?大丈夫!?」
「大丈夫に決まってるでしょ!次期魔王なんだもん。この程度じゃあ、死なないわ。」
リリーが背後からごまちゃんの首を掴んだ。
「あいつの恋人でしょ?…だったら彼の最後でも見ときな!」
コトは瀕死状態だった。リリーはコトに言った。
「さぁて、コト君。最後の別れでも告げなさい。慈悲よ。」
コトが唇を動かした瞬間に、リリーは大型蠍に命令を出した。蠍の腕はコトの方に振り下ろされた。
「…うくっくっくっ、あはは、はははははは!させる訳ないでしょ!馬鹿らしい!魔族なのに慈悲!?とんでもないわ!あははは!」
「コト君!…コト君!!…」
「大丈夫だよ。独りで生きられるんでしょ?」
その様子を見て、ごまちゃんは涙を零した。
「じゃあね…君もさよな!…ら?」
リリーは弾き飛ばされた。ごまちゃんは、激昂した。
「なっ!?」
「……ああああああああああああああっ!!!」
その勢いと共に、目が覚めた。そこにはコトの姿があった。
「コト……君……?」
「…そうだけど、いきなり煩かったなぁ。」
ごまちゃんはいきなりコトに抱きついた。
「怖かったよ…」
「また…涙垂らして…」
コトは、ごまちゃんの思いを受けた。
「コト君…君が死んじゃった…夢を見て…」
「ごまちゃん?心配ないさ。俺は絶対に死ぬ気は無いし、君を庇っても、やられることはないよ…」
そう言い、コトはごまちゃんを慰めた。
その刹那、何体もの物陰が空からコト達に舞い降りて来た。コトは直ぐにごまちゃんに伝えた。
「ごまちゃん、本当に俺がやられない事を直ぐに証明するよ。この闘いでね…だから、離れるな…」
物陰からは、多くのオークとそのボスらしきオークが一匹出てきた。
「そいつがボスか…」
「ひっひぃーー兄貴!あいつですよ!兄達をやった奴!!」
「オイコラ小僧!その女を渡しやがれ!」
一匹のオークはコトに向かって走った。
しかし瞬息、コトはオークの腹を両断した。
「何!?どっから剣を出しやがった!?」
ごまちゃんも驚いた。少しの静寂が終わった後、コトがオーク達を脅した。
「…残念だね。そんな事言ったって一方通行なのに」
「フッ、ふざけるなぁぁーー!!」
オーク達のリーダーが叫んだ時、コトは剣を構え、敵を待った。その間、コトの剣にはあたかも何万匹ものの蛍が舞うかのような様子だった。その時のコトの顔はとても冷たく感じた。
「ごまちゃん…伏せて。」
「…えっ、あっうん!!」
「この野郎がアアーーーッ!!」
そしてコトは唱えた。
「光……大、剣!!」
薙ぎ払った瞬間、扇状の光の斬撃が拡大し、オーク達の肉体を光が覆い尽くした。その光は遠くにいた、オークの頭領にも楽々届いた。
「ばっ………!」
オーク達はまず皮、着物、次に肉、骨、挙句の果て、鎧も強烈な光により微塵も残らず、消えていった。
「……ふぅ、ね。」
コトはごまちゃんに笑顔を向けた。
「うっ…うん。」
ごまちゃんは頷いた。