9! 新手
街は騒がしくなった。1日分の休日は終わり、大店の武器屋が開いていた。そこに、多くの客に紛れてごまちゃん達が来た。
「私、短剣はもう持っているわ。」
「それは分かっているよ。でも、その短剣を見てみれば、結構壊れやすそうだからね。」
そう言いコトは、ごまちゃんの短剣を引き抜いた。
「ほらね。もう限界に近いよ。」
その短剣は錆びてしまっている上に、折れかけていた。そんな事はごまちゃんは知らなかった。
「武器は連続して同じ物を使ったらいずれ切れ味が悪くなって、自分の方に余計なダメージを負う事になるんだ。その武器を使い続ける為に砥石とかも売られているけど、闘いの最中に砥石なんて普通はあり得ないよ。ゲームなら有りだけど。」
「だったらどうすればいいの?」
「長持ちする物を買おうか。」
コトはごまちゃんを連れて中に入った。
ある武器は、洒落た物やシンプルな物があった。剣はアイドル的存在だったのか、店の中の大半を占めていた。その中から、コトは直ぐに選んだ。少し短めの剣だった。
「これは一般の細剣よりも突きが強い方だよ。軽い上に切れ味も良いし、長続きするよ。」
「…ところでさぁ、コト君金持っているの?」
「うん、あるよ。」
「えっ、どうやって稼いだの?」
「稼いではいないよ。ただダルダルさん達から貰っただけ。『あなた方には少し生きてもらわないと王が狂うかもしれないので、少し金を出しておきます。』ってね。」
ごまちゃんに剣を持たせた。ごまちゃんは少しビビった。
同刻、074室。
「深夜に到着して侵攻とは、やはりオークはオークですね。」
「オークにとって民衆を支配するスタートだ。彼らは
自身が弱い事を自覚しなければ永遠に支配などできないだろう。魔族だって陰での努力があってここまで来たのだからな。まず奇襲を図って場所を確保するつもりだろう。」
「それならば王も同じですね。昔に荒れた地から生まれ、民を集め、戦法もまず奇襲からでした。それから広大な土地を持つ王になったのですからね。長い付き合いですからよく分かります。」
「この土地も私の領だからな…守らねば!」
その頃、ごまちゃん達はベンチで座っていた。
「コト君…あっ、新しい剣とか…ありがとね。」
「えっ、あぁうん…」
コトは寝付いてしまった。夕暮れになる所だ。ごまちゃんはその様子を静かに見ていた。
「寝顔がやっぱり可愛い…」
とコトの頬に手を当てた。
「やっぱりこの人、嘘ついているのかな、魔王の子息だなんて…元から強い人かも。連れて帰りたいよ…」
ごまちゃんも寝てしまった。
同刻の武器屋に、白髪の紅の目を持つ男と、目を閉じている大柄な男がやって来た。白髪の男は苛立っている。
「チッ、ここにもいねぇか。」
「んじゃあ探すの諦めます?」
「何を言っているんだ!さっさとコトをぶっ殺して、魔王の座を奪ってやる!その為に貴様の封印を解いてやったのだからな。魔神とは言えども、この俺に感謝するんだな。貴様も探すんだな。」
「はいはい。」
そして二人は二手に散った。