彼の名は・・・・・
「だりぃ~帰りてぇ~」
朝の陽ざしの中、少年が開口一番口にしたのは、その一言だった・・・・
「朝から眠そうな顔してるね?また遅くまで?」
彼の隣にいる幼馴染の少女が口にする・・・
「まあ、そうなんだけどさ、お忍びで来る依頼も多いしさ、昨日はちょっとした人生相談・・・」
大変だったと答える彼の口ぶりから、そうなのかと感心した表情を向ける
「毎日大変だね~その分だと学校の授業は大丈夫なの?」
心配そうに学校の話題へといざなう、すると少年は不機嫌そうにこう口にする。
「俺に勉強の話を振るなよ・・・頭が痛くなる・・・・・今はそれどころじゃないって感じだよ・・・」
こう答えることを予想していたかのように横にいる彼女は微かに微笑みを見せた・・・
「とは、言ってるけどね?もう中学三年生だよ?高校だってどこに行くかも決めてないんでしょ?」
「いかねぇよ・・・・この分だったら、俺はこの状況が一番適してるって思う・・・」
澄ました顔を見せる彼の眼にはどこか遠くを見据えているかのようにさえ感じてならなかった・・・
「でも、私はあんたと一緒に高校いきたいと思ってるよ?」
彼女の不意打ちになんとも言えなくなってしまう・・・そういった心情が、心の弱さであったのかもしれない・・・・
「・・・・まぁ・・・気が向いたら・・・・・考えるよ・・・・」
照れくさそうにしながらもそう言って、そっぽを向く・・・・その状況を確認しながら学校への道をゆく・・・今日は新学期始まってからの最初の一週間が過ぎ去ろうとしていたそんなある日の出来事、何の変哲もない日常の中には確かに、黒く淀んだものが静かに歩みを進めていた・・・・
「おはよ~信崎~また眠そうな顔してんな~?」
「まぁな~」
そういって彼、信崎斗真は自分の席に座る・・・・少々このクラスに馴染めていけるかどうか不安なところはあったが、どうせ、自分がここに在籍していようがいまいが、そんなことはどうでもいいことだった・・・・彼にとって学校とはその名の通りの場所でしかない、今更自分の居場所など関係ない、強いて言うならば、彼女だけには嫌われたくはなかった・・・・。唯一の親友と呼べるだろう、女性の存在だ、見崎志乃登校時も一緒という、いわゆる幼馴染だ、自分には兄弟がいない、唯一の遊び相手が彼女であった、そんな彼女も、中学校には、自分との遊びをしなくなった、無論話題などがかみ合わなくなってきたからだ、実際問題こうなることは知っていたが、いざこうなると、意外とどうすることもできない自分がいることがわかってしまった、友達を作ったことがない自分は、寂しさを埋めるため、あることをし始めた・・・
「斗真・・・」
聞きなれない声に反応し、相手を見る。
「なんだ?」
「今日夜やってるか?」
その意味をすぐに理解できた
「ああ、やってるぜ・・・時間はどうする?」
「そうだな・・・そっちが都合で・・・できるときにでいい・・・」
「OK~わかったよ、ちょうどいい、今日は予約があって、長引きそうだから―――」
そういって斗真はメモ帳を取り出す、中には多種多様な職業、年齢の人の情報が刻まれていた、その新しい欄に、彼の要件を書き入れ、メモを閉じる、
「夜、9時以降ならいけるが大丈夫か?」
そういって話しかけてきた男子生徒に問う。
「わかった、ありがとう、んじゃあまた後でな」
そう言い残した後、男子生徒は廊下へ出ていった・・・・
そう、彼は――――
「また、仕事の話してんの?」
相談屋である・・・・・
「志乃・・・・お前か・・・・」
誰かと思い振り返ると、唯一の友人がそこにいた。
「『お前か』とは、何よ~」
そういいつつも笑顔で応対する・・・・こいつには迷惑をかけた・・・・今だって掛けているのかも知れない・・・・そういった感情が彼の中を流れている・・・・
「別にいいだろ、今はお前と居たいって感じじゃないんだからさ。」
そういって彼女にふざけた返しをする、
「ふ~ん」
そういって彼女は腕組みをしながら俺の前を去って行った・・・・
「授業はじめんぞ~」
大きな三角定規を肩に担ぎ、教師が登場する・・・・その登場とともに生徒はあわただしく自分の席へと動いていく・・・
「先生、」
一人の女子生徒が手を挙げた・・・この子には見覚えがあった、結構最初のころに相談しに来た子だ、彼氏との因縁が尾を引いていて、暴力沙汰になるところだった子だな・・・・
自分のメモと顔を照らし合わせながら、人を覚えていく・・・・
「なんだ?」
嫌そうに教師は返事をする・・・
「加藤君がいないのですが・・・」
先生は少し言うのを躊躇った後、
「本来なら、生徒に不安を与えないよう、この話はすることじゃないんだが、」
そういって先生は話を切り出した・・・・生徒は皆ざわざわと小声で話をしていた・・・
「加藤君は昨日、この学校の裏にあるビルで飛び降り自殺をした・・・・」
さらに生徒たちがざわめきを増した・・・・
「きっとあのことだよ――――」
「あの話か――」
「やられたってホントか――――」
「あいつだよな―――」
皆口々に言う・・・・
「まあ、新学期早々不安な話題から入ってしまったが、しょうがないことだ・・・・みんなには今日の放課後、全校集会があるから、早めに帰ったりすんなよ?」
そういって、先生は授業を始めようとする・・・・皆口々に面倒だとか言っている、無論自分もそうだ・・・・まあ、そんな中この状況下において、不安になっているやつを一人見つけた・・・・
「ああ、そういうこと・・・・・」
チョークの音だけになった空間に一人、がたがたと震えるものが一人いた




