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J/53  作者: 池金啓太
三十一話「その場所に立つために」

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水の上の三班

「君たちは奇形種などの専門家だと伺っていたんだが、実際のところどうなんだい?」


どこまで自分たちのことを知っているのかはわからないが、少なくともこの班が奇形種に対してかなり経験を積んだ班であるという事は知っているようだった


どこまで話すべきか


鏡花は作業を終えいつでも道具を水の中におろせる準備をしながら思考を続けていた


「他の班よりは奇形種の相手をしてきましたから、まぁあくまでそれなりですよ、それも地上戦ばかり、水上戦は初めてです」


「ほぉ、そうなのか、それじゃあなかなか大変かもしれないね」


「えぇ、ですから全力で目標を仕留めなければなりません」


鏡花の言葉にその場にいた全員が眉をひそめた


恐らくは検体にしたいと考えているのだろうが、鏡花はそんなつもりは毛頭なかった


生き物というのはデリケートだ、特に奇形種ともなればその扱いはガラス細工よりも繊細に行わなければならない


何時一般人に危害を加えるかもわからないような生き物を野放しにはしておけない、犠牲が出てからでは遅いのだ


「・・・えっと・・・一つ頼んでもいいかな?」


「目標を捕獲しろという頼みであればお断りします、それ以外でどうぞ」


鏡花に先に頼み事を言われてしまったのか、笠間は開いた口が塞がらない状態だった、最初から突っぱねられるとは思っていなかったのだ


奇形種に対して実績を積んだ班、笠間はそう聞いていたのだ、捕獲くらい簡単にできるだろうと思っていただけにその期待を裏切られることとなる


「一応理由を聞いてもいいかな?どうして捕獲はダメなんだい?」


「まず一つ、危険だからです、奇形種は身の危険を感じると能力を発動します、一度能力を発動されると能力の使い方を学習される可能性があり、非常に危険なんです、なので奇形種を相手にする場合、能力を使う前に一撃で仕留めるのがセオリーです」


鏡花のいう事は正しい、一撃必殺こそが奇形種に対する最も有効な対応だ


能力が発動しなければただの動物と同じ、だからこそただの動物と同じ状態で倒すことが奇形種戦においてはもっとも重要なのだ


「捕獲するための手段はいくつかありますが、それを行ったところでその奇形種が能力を失うわけでも、危険でなくなるわけでもありません、仮に捕獲できたとしてどうやって運ぶんですか?どうやってその状態を維持するんですか?薬が効かない可能性もあるというのに」


鏡花の言葉に笠間は返す言葉がないのか苦笑しながら頬を掻いていた


恐らくは捕獲した後自分たちの大学に持ち帰って研究の実験体にするつもりだったのだろうが、そんなことができれば苦労は無い、実質無理に等しいのだ


「次に、まず今回の相手がどのような相手だかまだわかっていないという点です、もしこの船よりも大きい相手だった場合、さすがに捕獲は物理的に難しくなります」


「この船よりって・・・そんなのいるのかい?」


「少なくとも私たちは二度この船と同じか、それ以上に大きい奇形種と戦闘を行っています、両方とも討伐しましたけど」


一度目はザリガニ、二度目はイーロンの親、両方とも楽な戦いではなかったが何とか討伐を終えている


それも雪奈たちが一緒になって行動していたからこそだ、もし自分たちだけだったらどうなっていたかはわからない


「不安要素も大きい中で余計なリスクは負いたくありません、目標は発見次第討伐体制に移行します」


鏡花たちが安全策を取るのは自分たちの安全のためだ、無駄にリスクを背負うのは単なるバカのやることである


確実に安全に、地味と言われればそうかもしれないが確実な成功こそ自分たちが行うべきことなのだ、経験を積んで鏡花が学んだのはそう言う、物語の亀のような確実性である


怠けることなく油断することなく、ただ確実に一歩ずつ進んでいく、もっともその速度は亀のそれとは比べ物にならないだろう


「あのさ、一ついいか?」


鏡花の言葉に思うところがあったのか、院生の玉木が頭を掻きながら近づいてくる


「お前らって能力者なんだろ?ならそう言うのもなんとかならないのか?捕獲して動けないようにするとか、眠らせるとかさ」


能力者ならできるのではないか、その考えに鏡花はため息をついてしまう、これだから無能力者の相手は嫌なのだと


「確かに、能力者の中にはそう言うことができるものがいるのも事実ですが、私達にはできません、私達は奇形種を殺すことに特化した班ですから」


殺すことに特化


その言葉に玉木はまた大げさに言っているのではないかと思いながら薄く笑う


「殺すって言ったって今までどれだけやってきたんだよ?数えられるくらいだろ?」


「・・・そうですね・・・えっと・・・少なくとも百匹近くは処分してきてるかと・・・」


百匹近く、その言葉に玉木は顔をひきつらせていた、鏡花ももはや細かく数えていられないほどに奇形種を殺してきているのだ


実際には鏡花ではなく静希や陽太などだが、この班は一年目でかなりの数の奇形種を討伐してきた


樹海、奇形種が蔓延した動物園、この二つだけでも二桁、もしかしたら三桁に届くほどの奇形種の対応を行ってきているのだ


「信じられないというのであればそれでもかまいません、元より理解してもらおうとも思っていませんから、私たちがあなた方に求めるのはただ一つです、私達の邪魔をしないでください」


僅かに殺気すら混ぜたその笑みに、玉木はわかったよと後ずさりながらこの話を終了させようとしていた


本当に無能力者とは厄介である、自分たちが今どういう状況にいるのかわかってもいないのだから


「よしついたわね・・・陽太、お願い」


「あいよ、掴まってろよ」


静希達とは違う目撃ポイントにたどり着いた鏡花たちはひとまず陸に上がるために準備していた


近くには桟橋などもないために可能な限り陸地に近づいて陽太に運んでもらうことにしたのである


これから行うのは静希達のいる場所と同じく、目撃情報のあったこの周囲の区画を隔離し、その内部の索敵を行うというものである


「少しの間ここに留まります、今のうちになにか調査したいのであればしておいてください」


陽太は笠間達にそう告げる鏡花を抱え上げ、火傷しないように部分的に能力を発動させた後陸地に向けて大きく跳躍する


ギリギリで陸までたどり着くと鏡花はすぐに陽太から降りてこの区画を隔離するべく能力を発動した


「陽太、あんたは索敵道具の準備をしてて、準備ができたらまた呼ぶから」


「了解、んじゃまたな」


陽太は今度は全身に能力を発動し再び船へと戻っていく、船の上で笠間達が驚いた声をあげていた、恐らく陽太が能力を発動した姿に驚いたのだろうが、今はそんなことを気にしていられるだけの時間は無い


意識を集中して包囲網を作成していると鏡花の携帯に通話が入る、相手は静希からだった


「もしもし静希?そっちはどう?」


『あ、鏡花ちゃん?私、明利』


静希の携帯にもかかわらず明利が出たことに鏡花は一瞬驚いたが、恐らく静希が運転している間明利が代理で報告をするつもりなのだろう、という事は今は移動中である可能性が高い


「そっちはどう?いい感じで索敵できてる?」


『うん、鏡花ちゃんが作った網のところまでは索敵できたよ、今のところ問題はないかな、それらしい生き物もいないし』


明利の報告に鏡花は胸をなでおろすと同時に気を引き締める、明利が無事であるという事は喜ぶべきことだが、その反面目標があの場所で見つからなかったという意味ではまだまだ気は抜けない


今いる場所にいる可能性だって捨てきれないのだ、油断できるような状況ではない


「わかったわ、それじゃあ別の区画に索敵を広げられるようにしておく、地図はあるわね?」


『うん、次はどの場所に行こうか・・・迷ってて』


「今私たちが三の所にいるわ、一と二が終わったなら次は四の場所に行ってくれる?ここからそれなりに近いし一気に索敵できるようにしちゃうから」


今回一番忙しいのは恐らく鏡花だろう、索敵するためにはあらかじめ各区画ごとに仕切りを作っておかなくてはならないのだ、今陸地に立っている時点でもう大まかにでもいいから作っておいた方がいいかもしれない


幸いにして陽太はすでに船の上にいる、彼らの護衛は陽太がやってくれるだろう


となれば鏡花は今のうちにできる限り仕切りを作ることに集中したほうがよさそうだ


鏡花の言葉に明利はわかったと返事をするが、電話の向こう側で何やら静希と話をしているようだった


『あ、あのね鏡花ちゃん、私達網の外に出たいんだけど、このまま船で突っ切っちゃって大丈夫かな?壊れたりしない?』


「・・・あー・・・そういや忘れてたわ・・・あんたたちが乗ってるのって水上バイクよね?じゃあちょっとあいつらに頼んでジャンプして飛び越えてくれる?」


鏡花の言葉に向こうで静希が何やらいっているのだが、明利がそれを説得しているらしい


こんなことで人外たちの力を借りるのは嫌なのだろうが、鏡花も忙しいのだ、静希達が移動するためにいちいち移動できるほど暇ではない


「明利、そっちは頼むわ、今ちょっとやばいくらい忙しいから、静希の手綱をしっかり握っててね」


『う、うん!任せて!』


明利の力強い言葉に鏡花は安心して通話を切る


向こうも向こうで仕事をしているのだ、自分もしっかりとやらねば顔向けできないというものである


少なくとも湖を両断して今日中に南側半分だけでも索敵を終えたいところである


少しきついだろうがやるしかない、自分は班長なのだ、静希や陽太、そして明利が天才だと信じて疑わない清水鏡花なのだ


「ったくもう・・・いやになるわね・・・」


そうこぼしながら鏡花は深く深く集中する


まずやるべきは大きな区画設定、この巨大な湖をどれほどの区画で分けるかというのが重要だ


まずは南北を両断する、そして現在自分たちがいる最南端の部分を切り取る必要があるだろう


対岸までの距離は約三キロ、できないことはない、鏡花はすでに何キロも遠くの物質を変換した経験があるのだ


ゆっくりと確実に、最短距離を直線で結ぶ、頭の中で湖に引く線をイメージしそれを形にする


単純で地味な作業だ、それ故に時間がかかる


陽太には悪いがこれはかなり時間がかかりそうだった、その間笠間達には勝手に動いていてもらうことになるだろう


周囲から聞こえる音も感触も光景も全て遮断し、鏡花はより深く集中していく


肌を伝う汗でさえも集中を乱す一つの要因になる中、鋭く、そして速く集中力を高めていった












「鏡花ちゃんは今仕事中みたい、四番に向かってだって」


「まぁあっちもあっちで忙しいだろうしな、あの大人たちの相手も任せてるわけだし・・・ほんとに邪魔だなあれ」


もし今回の実習が静希達だけで行われるものであればもっと効率よく動くことができただろう


生態調査、彼らが一体何を目的にここにきているのかは知らないが、静希達からしたらいい迷惑である


恐らくは奇形種目的でやってきたのだろう、そしてその予想は的中している


鏡花がその分面倒を引き受ける形になっているが、今はとにかく索敵を広げることの方が重要だ


思いの他明利の微生物による索敵が効果的だったのか、包囲された部分を索敵するのに時間はかからなかった


無論何度も明利に水の中に入ってもらうことになったが、それでも予想していたよりずっと早い


こうしている今も網からすり抜けて明利のマーキング済みの微生物たちが水の流れに乗って湖に広がりつつあるのだ、この索敵方法はかなり楽かもしれないと思いながら静希は次の場所に向かうべく準備をすることにした


「よし、それじゃ次の場所に行くか・・・でもどうやって飛び越えるか・・・」


「あ、危なくなければそれでいいよ?」


現在湖を囲う網は水面のほんの少し下まで存在している、つまりこのまま水上バイクで突っ込めば確実にぶつかるのだ


網の伸縮性を考えれば壊れることはないだろうが、どこかが引っ掛かったりして転倒しては目も当てられない


現状においてこの網を飛び越える手段は三つ


一つはメフィに運んでもらう、一つは邪薙に坂のような形で障壁を出してもらい飛び越える、一つはウンディーネに少し高めの波を起こしてもらい乗り越える


一番安全なのはメフィに念動力の力で運んでもらう事だろう、だが彼女の繊細とは言えない大雑把な念動力に頼っていいものかと若干の不安が残る


邪薙の障壁を利用したジャンプは比較的安全なように見えるが着水が不安である、ほぼ素人に毛が生えたような操作技術の静希に安全に着水するだけの技術があるかは甚だ疑問である


ウンディーネに波を起こしてもらうのは正直一番不安だ、そもそもどれほどの波を起こせるのかもわかっていない、もしちょっと力を入れ過ぎて津波を起こしてしまったら大惨事である


「・・・よし、ここは派手にスタントアクションで行くか」


「え?あ、危ないのでなければいい・・・けど・・・」


「たぶん一番安全だ」


たぶんと付けているだけでなんと不安をあおることだろうか、静希はトランプの中にいる邪薙に頼み、網を乗り越えられるくらいの位置に僅かに傾斜を付けた障壁を展開してもらう


こういう事をするのは思えば初めてだなと静希は少しだけテンションが上がっていた


今までフィアなどに乗って高速で移動したことはあっても、こういう機械に乗って危険な走行をしたことはないのである


安全運転第一であるから仕方のないことかもしれないが、今はそんなことを言っている状況ではない


「んじゃ行くぞ明利、しっかり掴まってろ!」


「う・・・うん!あ、安全運転でお願いね!」


今からやることが安全かどうかは知らないがよく映画とかでやっているのだからできないことはないだろうと静希は高を括っていた


今はまだ比較的安全なのだ、こういうことをやっても損はないだろう


一度障壁のある場所から距離をとり、静希は一直線に加速していく


ここまで加速する必要はないのではないかと思える程に加速し、勢いよく障壁のジャンプ台を飛び越える


「ひゃっはぁぁぁぁ!」


「ひゃぁぁぁぁああ!」


静希の明利の声が湖面に響く中、二人を乗せた水上バイクは勢いよく宙に飛び出す


どれくらい宙にいただろうか、軽々と網を越えた水上バイクは重力に従って水面に吸い込まれていく


思い切り着水したことで水しぶきが辺りにまき散らされる中、静希は何とか体勢を整えようと奮闘していた


なにせ着水した衝撃と水の浮力が直接船に襲い掛かるのだ、体全体でバランスを取らなければそのまま転覆してしまう


そんなことをしていると周囲にある水が不可思議な動きをして静希達の乗る水上バイクを支えはじめた


『悪い、ちょっとはしゃぎ過ぎたか?』


『全くです、それと次からは私に言ってください、水の道くらいは作れますから』


静希達のフォローをしたのはウンディーネだった、近くの水を操って転覆しないようにコントロールしたのだろう


それを見て静希は思いつく


『ウンディーネ、今回も一つ頼んでいいか?』


『はい、どんなことでしょうか』


その後静希はウンディーネにある頼みごとをすることにした、それが今回の実習で一番重要なことであることを理解した彼女は二つ返事で了承することになる














静希達がそんなことをしているとはつゆ知らず、鏡花は大きく息をつきながら項垂れていた


ようやく三キロにわたる湖の部分的な隔離に成功したのである、一体どれだけかかっただろうか、そんなことを確認する余裕もなく鏡花はゆっくりと立ち上がる


時間はないのだ、可能な限り早くこの区画の索敵を終わらせなければ


「陽太!準備できてる!?」


「オッケーだ!いつでも投げ入れできるぞ!」


準備をしていたであろう陽太に声をかけ、鏡花は一息つくよりも早く船に戻ろうとしていた


さっさと目撃証言があった場所の索敵を終わらせなければ時間がもったいないのだ、これだけの広さを索敵下に置くには時間がいくらあっても足りないのである


陽太を呼んで自分を船まで届けてもらうと、鏡花は周囲に索敵用の道具を投げ入れ始める


少しずつ船を動かしてもらい、それらを配置し終わるまでかなり時間がかかった


すぐに明利にこの辺りの様子を確認してもらおうと連絡をしようと携帯を取り出し静希に電話する


先程と同じであれば明利が出るのではないかと思ったのだ


『もしもし、鏡花か?』


「なんだ静希か、明利居る?」


人に電話かけておいてその言い草は何だよと静希は不満そうにしていたが、電話の向こう側にいる明利に何やら話をしようとしているのか、急に声が遠くなる


『悪い、今は取り込み中だ、ちょうど作業中なんだよ』


「あぁそう、今ちょうど三番の索敵の配置が終わったわ、明利に確認してもらおうと思って」


鏡花の言葉に静希は状況を察したのかなるほどなと言った後で声のトーンを少し落とす


『そっちの様子はどうだ?いろいろと面倒だろ』


「面倒なんてレベルじゃないわ、区画分けもそうだけど配置するのも時間かかりすぎ、索敵はあんたたちに任せた方が効率よさそうだわ」


実際今回鏡花がやらなければならないことはかなり多い、そんな中で索敵までやるとなると時間が足りなくなる可能性がある


鏡花は徹底的に区画分けだけを行って後は静希達が索敵を行ったほうが効率が良いと判断したのである


そして鏡花はそれとと付け足して同じく声のトーンを少し落とした


「やっぱり予想通りだったわ、大体考えることは一緒ってことなのかしらね」


『あぁ、やっぱり捕獲してくれとか言われたか』


「えぇそうよ、何でそう言う発想しかできないのか不思議なくらいだわ」


静希と鏡花が予想していた通り、笠間達は奇形種の捕獲を打診してきた、もっともまだこの湖にいる謎の生き物が奇形種であるという確証はない


それでも可能性は高いのだ、危険なものに手を出そうとする身の程知らず、静希達にはそう言う風に映ってしまうのである


頼られるのは悪い気はしないができもしないことを押し付けられるのは正直不愉快だった、それは鏡花だけではなく静希も感じていることである


「静希、私達はこれから移動しながら索敵用の道具をまくわ、そのついでに区画分けをしておこうと思うの、細かい索敵はあんたたちに任せるわ」


『了解した、そっちはそっちで大変だろうけど頑張れ・・・あ、明利が戻ってきた・・・ちょっと待っててくれ』


どうやら明利が索敵の仕事を終えて戻ってきたようで静希の声が再び遠くなる、彼女に確認しなければ索敵の如何は確認できない、そう言う意味ではこの時間が酷くもどかしく感じた


『もしもし鏡花ちゃん?』


「あぁ明利、三番の索敵の配置が終わったから確認してくれる?」


鏡花に言われ明利は意識を集中して確認をしているのだろう、数秒間の沈黙の後にうんと小さく明利は声を出して見せた


『大丈夫、そのあたりにそれらしい生き物はいないよ、次の場所に移動していいと思う』


「そう、とりあえずよかったわ、そっちは今のところどんな感じ?」


ひとまず自分たちのいる場所に奇形種がいないことにほっとしたのか、鏡花は安堵の息をつく


もしこれで襲ってくるようなことがあれば自分と陽太だけでどれだけ戦えるかという不安もあるのだ、その心配が杞憂になったという事はかなり大きい


『今のところ索敵範囲をとにかく広げてるよ、四番の所にも目標らしき影はいないし・・・あとは五番と六番だね』


目撃証言があった場所の半数以上を回ってもすでにその場にはそれらしい生き物はいない、すでに別の場所に移動してしまっているのだろうか、それともただ単に観光客の見間違いだろうか


どちらでもおかしくないだけに油断できない状況が続いている


「あんたは大丈夫なの?水の中に入って索敵だなんて」


『うん、ウンディーネさんが手伝ってくれてるの、水を操って索敵がしやすいようにしてくれてるんだ』


明利の言葉に鏡花はなるほどねと納得する、ウンディーネの力なら索敵がしやすいように水の流れを作るくらいは楽勝だろう、恐らくは明利の中に入ってその手伝いをしているのだと思われる


万が一襲われたときでも瞬時に対応できるように明利の中に宿って活動しているのだと理解し、つくづく静希は過保護だなと思いながら小さくため息を吐いた


誤字報告を十件分受けたので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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