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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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確率の性質

準備はできた


城島の言う監視がどの程度のものかは分からないが、恐らくいま自分は監視されているだろう


どこから見られているかいつ見られているかなど静希はわからない


だからこそいつ見られていても自分に非がないようにふるまわなくてはならない


『万が一だなんてずいぶんなこと言うじゃない?』


『ちょっとわざとらしすぎたかな?』


確率において百分の一だろうと一万分の一だろうと起きる時は起きるし起きない時は起きない


結局百か零かの対極だ


しかも今回の場合絶対に起こることを前提とした物運びになっている


絶対に起こることを前提としたことなど静希にとってはあり得ないことだった


どんなことにも絶対はないと考えている静希にとって異常と言ってもいい


こういった確率を考える上での人間性は面白く、人によって対応が変わる


例えば日常的な天気予報で見てみるとこんな感じだ


静希は降水確率が低くても折りたたみ傘を忘れない


鏡花は万が一降るなら気をつけるが傘は持たない、もし降った場合すぐに対応する


明利は降水確率に関係なくいつでも折りたたみ傘を持っている


熊田なら降水確率を自分で割り出す勢いだ


雪奈は降水確率が高くても『きっと降らないだろう』と言いのけて傘など持ちこまない


陽太に至ってはそもそも天気予報を見ない


確率などという不確定なもので動くのはせいぜい人間くらいだろう、だからこそその確率をあげるために動くわけだが、今回の場合はすでにほぼ百%なのだから張り合いがないことこの上ない


もっともその先は何が起こるかはっきりとは分からないわけだが


『でもあそこまで露骨なら絶対に長か誰かが接触するだろ』


『私ならするわね、貴方が封印する前に何とかしなきゃと考えるでしょうから』


よくもまあ封印などと大仰なことをいってのけた物だと自嘲気味に笑う


封印などできるはずもなく、こうして悪魔であるメフィが共にいるのもメフィのきまぐれであると静希は考えていた


だがたまには口八丁で言いくるめるのも嘘を含めるのも必要なことだ


今回の場合嘘八、真実一、その場のノリ一の割合だが


『でも大変よね、相手に気付かれてもいけない、自分たちのせいになってもいけない、制限多すぎじゃない?』


『学生身分じゃそういうものなんだよ、学校に迷惑かけるわけにもいかないしな』


静希はどこまでいっても一学生だ


社会人としての立場や権限などを持ち合わせているわけではない代わりに責任を押し付けられるわけではない


だがその責任は自分ではなく学校や指導者に向けられるのだ


特に今回の場合はデリケートな問題だ


無能力者と能力者の関係もそうだが、エルフと通常能力者の確執も大きい


問題の中心地に今いると言っても過言ではない


激戦地などという生易しいものではなく地雷原に爆撃を仕掛けているような状態だ、はっきりいって死傷者が出る出ないの段階の話ではない、どれほどの死傷者が出るかの話になる


そう考えると一学生には重すぎる問題だ


城島はやたらとこの問題を公にしたがってはいるものの、結局何をするかまでは具体的には静希にはわからない


だが何かしようとしているところまで抽象的にならわかる


もっともその予想が正しいかどうかもわからない


サイコロの目が一から六までのどれかが出ることはわかっても何が出るかがわからないようなもので確信まで迫れない


十面体だとか十二面体だとかのひっかけは用意されていないことを祈るしかない


そんなものを用意していた場合は城島は相当性格がねじ曲がっている


ひねりにさらにねじりを加えてトリプルターンまで繰り出しそうな程に性質が悪い


『でももし接触しなかったらどうなるの?大丈夫っていっちゃった手前このまま封印するしかなくなるんじゃ』


『その場合邪薙をカードの中に入れてそのままテイクアウトしなきゃいけなくなる、接触してくれなきゃ俺が困るよ』


神格と一緒にエルフの恨みまでついてくる素敵なバリューセットなんて御免だと静希は悪態をつく


それもそうねとメフィが楽しそうに笑っていると静希の携帯が鳴り始める


着信は明利からだ


「もしもし」


『あ、静希君、もうすぐご飯ができるって』


「わかった、すぐ戻る」


雑音の向こうの明利に言葉を返しながら静希は携帯をしまう


時刻は七時過ぎ


休日なのにこんなに早く起きるとは、東雲のご両親もなかなかの優良健康体のようだ


自分ならば昼ごろまで惰眠をむさぼり朝食と昼食を一緒くたに済ませることもあるというのに


健康な一日は朝食からともいう


これから何が起こるか分からない以上、不健康な一日の始まりは控えるべきだろう


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