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J/53  作者: 池金啓太
三十一話「その場所に立つために」

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準備段階

『なるほど、じゃあ予定通り金曜日からいないわけだね』


「あぁ、その日からお泊り会だからカレンに言っておいてくれ、東雲姉妹含めよろしく頼むって」


鏡花たちが帰った後、静希は準備をしながらエドに電話をかけていた


金土日と家から離れるのだ、その間の食事やアイナたちの監督役を頼むにはうってつけの相手と言える


すでにエドの方である程度調整はしていたらしくそのあたりは何の問題もないようだった


『一応確認しておくけど、今回は例の話とは無関係なんだよね?』


「あぁ、今回は全く関係ない、少なくともあいつらがいるってこともないだろうさ」


今回はただ単に湖の生態調査だ、その中に奇形種がいた場合は討伐、あるいは捕獲対象になるだろうがそこに人外が関わる余地はないように思える


特にこれと言って変調もなく、ただの国内の事件であると予想している


そしてこの予想は静希だけではなく鏡花と城島の両者ともに考えていることでもあった


『なるほど、一応行く場所とかやることとか聞いておいてもいいかい?』


「場所は関東の東部、関東で一番大きな湖だな、内容は生態調査、だけど何人かから不思議な生き物の目撃情報が上がってる、たぶん奇形種だろうな」


以前、単なる静希達の実習だと思って関わらなかったら自分たちの本命と遭遇したという事もあってエドはだいぶ慎重になっていた


静希としてもその方がありがたい、自分だけで考えるよりも他の人間と一緒に考える方が確実なのだ


『・・・なるほど、確かにそれなら問題なさそうだね、いや問題がないっていうのもおかしな話かな?』


「まぁ問題があるから呼ばれるわけだからな、とにかく今回の件は俺たち学生だけで大丈夫だ・・・まぁ無事に終えられるかどうかはまだわからないけど」


今回行く場所が水の上という事もあって静希は若干弱気になっていた


静希は今まで水というものにあまりいい思い出がないのだ、しかも船に乗るという事もあって嫌な予感は加速している


高確率で何か起こるような気がしてならないのだ、水難の相を持っている人間が自分の班の中にいるとしか考えられない


恐らくそれは自分なのだろうが、静希は可能ならば船には乗りたくなかった


『シズキなら大丈夫なんじゃないかな?今さら奇形種くらいで後れを取るとは思えないよ?』


「それが陸にいるならな・・・だけど水中の相手と戦うのはこれが初めてなんだよ」


静希のいうように、相手が陸地にいるのであれば戦いようはあるし負ける気はしない


奇形種とはそれこそ山ほど戦ってきたのだ、今さら一匹二匹現れたところで苦戦するようなことはない


問題はその相手が水中にいる可能性が高いという事である


以前戦った完全奇形のザリガニはその大きさからほぼ陸上で戦うことができたが、今回は巨大な湖の中だ、一体どれほどの相手なのかははっきり言って未知数なのだ


目撃情報も少なく、何より写真なども被害もない、だからこそ討伐ではなく調査という事になっているのだろうが、それがかえって厄介だった


どんな形をしているかくらいわかればその生息地を予測することができるが、どんな形をしているかも不明、本当にいるのかも不明、これでは正直不確定要素がありすぎる


『水中かぁ・・・それだとちょっと辛いかもね、銃とかもほとんど止められちゃうし』


「そうなんだよ、姿を目視できれば何とかなるけど、水が濁ってた場合はなぁ・・・」


静希のトランプを水中に展開しゼロ距離で弾丸を射出すればまだ効果はあるだろうが、湖の水が濁っていてまともに視認できない場合これも難しい


なにせ水深七メートル以上あるのだ、そんな場所を水上から人間が目視するのは難しいのである


水が澄んでいるならもしかしたらそれもできるかもしれないが、日本の湖でそれは期待しない方がいいだろう


『ならいっそ目標のいる近くに電流でも流したらどうだい?その方が手っ取り早く済むよ?』


「いや、俺もそうしたかったんだけどさ、今回行く湖はかなり漁業とかも盛んでな、あんまりそう言う被害を広げるようなことはできないんだよ・・・」


一応今回行く湖は観光だけではなく漁業もそれなりに行われている、場所にもよるだろうが漁獲量もかなりあることで有名だ、そんなところで電気を発するわけにはいかないだろう


そうなってくると物理的な手段で倒すほかないのである


『難しいね、そうなると漁業の真似事でもしない限り捕まえられないんじゃないかな?』


「一応そのつもりなんだけどな、目標の大きさによってはそれも変わるかもしれないし・・・なんだかなって感じだよ」


今から考えることが多すぎて頭がパンクしそうだった


今回の実習は一応は生態調査という事もあって、調査を行う研究者たちも護衛しなくてはならないのだ


護衛に探索に討伐あるいは捕獲


一気に三つの事柄を解決しなければいけないのだから考えることも当然増えてくる


正直実習が始まったらすぐにメフィ達の力を借りたいくらいである


『やっぱり学生は大変だね、まだ一年以上あるんだろう?これから大変だ』


「これからもっと面倒に巻き込まれるかと思うと気が重いよ・・・まぁ俺らはまだましなのかもしれないけどな」


同級生のエルフは別の意味で面倒に巻き込まれている、彼女のことを考えると自分たちはまだましな方だと言えるだろう


なにせ人間関係が複雑にならないのだから、現状ではましだと思える


「ミスターイガラシ、代わっていただけませんか?ボスと話がしたいです」


「ん・・・わかった、エド、アイナとレイシャに代わるぞ」


そう言って静希は携帯をスピーカーモードに切り替えて二人に渡す


二人が留学してからだいぶ時間が経った、今の生活はどうだろうかとかクラスになじめているかとか、エドは非常に心配しているのだ


時折カレンが静希の家に来てその様子を確認しに来ているが、それでも彼女たち自身から報告を受けたいというのもあるだろう


アイナとレイシャもそれぞれエドに伝えたいことなどは山ほどあるらしく、楽しそうに話をしていた


「静希君、水着とか出しておいたよ、後は・・・武器とか?」


「悪いな、武器は・・・どうしよ、ナイフじゃほとんど使い時がないだろうし・・・」


今回は水上という事もあってはっきり言ってどういった形での武装にしようか迷ってしまっていた


恐らくただのナイフでは投擲したところですぐに減速してしまうだろう、もちろんそれは銃でも同じことなのだが


「こうテレビとかでやってるような銛があればいいんだけど・・・静希君そう言うの持ってる?」


「いいや残念ながら持ってない、返しがついてる奴ならいくつかあるけど・・・」


水中でも十分な刺突能力を持つ銛のような形状のナイフなら投擲してもある程度効果は発揮してくれるかもしれないが、生憎静希が持っているナイフにそのような形状のものはない


いっそのこと釣り用の道具でも持って行こうかと考えている中、静希はとりあえず左腕に装備する武装を付け替えていた


今回は目標が水中にいるという事もあって仕込みナイフの刃の部分を付け替えるのだ


切る動作よりも刺す動作で効果的にダメージを与えられるようになっている

左腕の大砲の弾に関しては水中でも使用可能だが、長時間水に晒すのは厳禁だそうだ、使う直前に装填しなければいけないだろう


「明利の方は大丈夫なのか?今回は普段と使う種の種類が違うけど」


「うん、明日いろいろと準備するつもりだよ、この時期ならたくさん売ってるからすぐに集まると思う」


これが冬だと売っている種類も少なく苦労したかもしれないが、今は幸いにも夏真っ盛り、この時期であれば水系の植物の種を買うには困らないようだった


水に入るという事もあり夏で本当によかったと思うばかりである


実際は夏に入り人が多くなったことで謎の生物が確認されたのかもしれないが、どちらが先なのかは正直わからない


どちらにせよ寒い時期に寒中水泳なんて真似をしなくて済んだのはありがたいとしか言いようがない


「水の中で襲われた場合どうするか・・・さすがに妙なことはできないし」


「・・・あ、そう言えば前に乾電池を持ってるとサメが寄ってこないってテレビでやってたよ?似たようなことできないかな?」


「・・・あれって海水限定じゃないのか?一応持ってくか・・・?」


以前テレビでやっていた内容を覚えていたのか、明利の提案に静希は首を傾げながらパソコンでそのことを調べ始める


確かに乾電池を持っているとサメが逃げていくというのは実際にある話らしい、いろいろと検証もされているようだが、それはサメが微弱な電気を察知するロレンチーニ器官というものを持っているのが原因らしい


魚たちが発する微弱な電気をそれで探知して行動するのだが、電池などがもつ高出力の電気を感知するとその器官が故障し、混乱してしまうらしい


だからこそサメが逃げ出すのだとか


つまりはロレンチーニ器官をもっている生き物であれば乾電池は有効という事になるが、それを有していない生物相手では乾電池を持っていても意味がないという事になる


「・・・なるほど、そう言うからくりだったのか」


「これじゃあ乾電池を持ってても意味ないかな・・・?」


相手が奇形種である可能性が高い以上、そのロレンチーニ器官を有している可能性はゼロではない、何らかの奇形の形でその器官をもっていても不思議はないのだ


だがそれはかなり確率が低い、万に一つ、いや億に一つくらいの確率だろう


「・・・まぁ持って行って損はないんじゃないか?単一でいいのかな?」


「うん、たぶん大丈夫だと思う」


実際に水にはいるのは明利なのだ、彼女の安全を考えるなら取れる手段はすべてとって安全を確保するべきである


乾電池が一体どれだけの効果を持つかはわからないが持って行って損はないはずである


正直水中での防御策というのはほとんどないに等しいのだ、陸上ならば静希達もそれなりの速度で対応できるが、水の中では当然ながら動きが鈍る


以前訓練で城島に強烈な水流の中に押し込められたことがあるが、ほとんど身動きも取れないような状態だった


今回はそこまで速い水の流れは無いだろうが、それでもまともに行動できるとは思えない


特に水から上がることに関してはかなり時間がかかると言っていいだろう


「明利、お前ってどれくらい速く泳げる?」


「え?・・・正直あんまり自信ないかも・・・」


唯一水の中にはいる事が仕事になっている明利がこの様だ、これは本格的にウンディーネに助力を乞う方がいい気がしてくる


下手に怪我をするくらいなら力を借りたほうが何倍もましである


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