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J/53  作者: 池金啓太
三十一話「その場所に立つために」

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水難持ち

アイナとレイシャのお泊り会の準備が進む中時間は順調に進み、静希達は今学期最後の校外実習を行うために放課後に残っていた


今度は特にこれと言って事件も起こっていないことから海外に行くことはないなと高を括りながら教室でのんびりと班長達が戻ってくるのを待っていた


静希としても何の事件も起こらなかったというのは正直予想外だった、リチャードの事だからこの夏あたりに何かまた事件を起こすべく準備をしていると考えていたのだ、実際がどうかは知らないが少なくとも今回の実習中には何も問題は起きないという事になった


今回は一体どんなことをさせられるのだろうかと、静希達は少しだけ不安だったがもはや大抵の事ならばこなせるだろうとある種の自信を持っていた


「今度はどこに連れてかれるんだろうな」


「さあな、それこそ海外じゃないんだ、それだけはありがたいっていうしかないだろ」


「そうかもね、でも安全な内容だといいな」


明利はそう言ったが、彼女自身理解している、自分たちが関わるような実習が安全であるはずがないと


今まで行ってきた実習で安全なものなど一つもありはしなかった、きっと今回も危険な内容になるのだという事を半ば悟っていた


「ちなみに明利、安全な内容ってたとえばどんな?」


「え?そ・・・それは・・・地質調査・・・とか?植生調査とか・・・」


他の班は何度かやったことがあるような、所謂学術的な調査行動が明利にとっては安全な内容だと思っているのだろう


だが静希はその内容も安全なものとは思えなかった


きっと静希達が向かう場所では奇形種が現れるか、また別の何かが現れるか、そういった本来ならばあり得ないような状況に見舞われるのだ


恐らくは自分の運のせいだろうが、静希が関わるような事件は必ず危険が存在するのだ


そんなことを話していると教室の扉が開き、城島と各班の班長が戻ってくる


「えー・・・今回の内容は今期最後という事もあってそれぞれの特性を活かしたものになる可能性が高い、それぞれ全力で臨むように、以上解散」


城島の言葉と共に静希達は一斉に鏡花に視線を向ける


今回は一体どんな内容だろうか、危険は少ないのだろうか、楽だろうか


そんなことをそれぞれが考える中、鏡花は渋い顔をしていた


「とりあえず静希の家に行きましょうか、ここじゃ話すこともできないし」


今回の実習に行くのが一年生の補助のないクラスの約半数とはいえそれなりに騒がしくなっている、この状態では満足に会議もできないことはわかりきっている


もはや恒例となりつつある静希の家に向かうのが最適だろう


「ていうか大まかにでもいいから内容教えてくれないか?今回何やるんだ?っていうか何やらされるんだ?」


「ん・・・まぁその・・・今回はちょっとした調査よ」


調査、その言葉に静希と陽太は明利の方を見る


「よかったな明利、今回は調査だってさ、きっとアンゼンだぞハハハ」


「やったな明利、ようやくアンゼンっぽい内容が来たぜフハハ」


二人とも明利の肩を叩いて笑っているが、安全の発音が明らかにおかしいことになっている


両者ともに鏡花の表情から、絶対に安全じゃないんだろうなという事を察しているのだ


何の調査なのかは知らないし、そもそも何をするのかもわかっていないが、静希の中ではすでに敵対する相手のシミュレーションが行われていた


奇形種が一番可能性として高いだろう、次点として完全奇形、その次に調査対象あるいはそれらを狙った能力者の犯罪者、最悪の一歩手前の事態として精霊や神格、最悪の事態として悪魔がその場にいる可能性がある


もはや何が来ても驚きはしない、むしろそれらが現れない方が驚きである


「あんたらね・・・変に不安をあおるのはやめなさいよ・・・まぁ気持ちはわかるけども」


「だってさ、俺らがやる実習の中で一回でも安全な内容があったか?ないだろ?」


「むしろ俺たちが安全な内容をやったら他の班は何やってるんだって話だよ、訓練の延長か?いっそお遊びか?」


二人の意見は大まかにだが正しい、今まで自分たちがやってきた実習で安全なものなど一つとしてなかった


唯一まともかと思っていた護衛任務もかなり面倒なことになったし、危険と常に隣り合わせのようなものばかりだったのだ


今までがそんな事ばかりだったために今さら安全なものが自分たちの下に舞い込んでくるとは思っていない


とりあえず菓子類を買い込んで静希達が家に帰るとすでに帰宅していたアイナとレイシャが玄関先まで迎えに来ていた


「おかえりなさい・・・今日はブリーフィングですか?」


「おかえりなさい、リビングは片づけてあります」


「ただいま、助かるよ」


それぞれが中に入りながら人外たちもいつものように定位置に移動する中、鏡花はリビングのテーブルに資料を並べ始めていた


静希と明利はとりあえず全員に茶を出すために用意を始め、陽太はすでに寝転がっている


完全にリラックスしている状態に鏡花が足蹴にするが、話が始まるまではこの体勢でいるらしい


「で?今回の実習の内容は?一体何の調査だ?」


「ん・・・今回は湖の生態調査よ、それもかなり大がかりな」


鏡花の言葉に静希と陽太は嫌そうな顔をする、水にはあまりいい思い出は無いのだ、特に静希にとっては


「湖ってことは・・・船とか使うのか?」


「ご名答よ、調査用に小舟を持ってきてそれを使うらしいわ、私達もそれに乗ることになる」


鏡花の言葉に静希はもうあきらめがついていた、きっと面倒なことになると

今回の内容に静希は若干城島に文句を言いたいくらいだった、何がそれぞれの特性を活かしたものになるだ、水の上というフィールドはむしろ静希達の苦手分野である


「ヘイヘイ鏡花姐さんよ、俺たちを水の上にあげようなんて明らかにおかしいじゃんかよ、明らかに嫌がらせだろ、一体何考えてんだよ」


「私に言わないでよ、それを決めたのは私じゃないんだから」


はっきり言ってこの班と水上フィールドとの相性は最悪である、せめて川など地面に足がつくならまだしも湖のような明らかに水深が深いような場所では静希達はまともに行動できなくなってしまう


水の中に落ちれば陽太の能力は強制解除されほぼ無能になり、静希や鏡花に至ってはまともに行動することすら難しくなる


明利の索敵もある程度は効果がある、水草などの種や一部などを媒介にすれば水面の索敵は可能だろう、藻などを用意すれば湖底にも索敵の範囲は伸ばせるだろうが水中の索敵は不十分になってしまう


静希達との相性は最悪、そして船に乗るという事で静希はもう嫌な予感しかしないのである


「ちなみにさ、船ってどんな船?小舟か?まさか手漕ぎのボートとか言わないよな?」


「安心しなさいよ、ちゃんとした調査船よ、無論小型であることは否めないけど」


今まで静希達が乗ったことのある船は二種類、片方は小型遊覧用の小舟、片方は豪華客船だ


片方は遭難し片方は爆破された、今度は一体何が起こるのか


「この班にはさ、絶対水難持ちがいると思うんだよ、たぶん陽太辺りだ」


「そう?私はどっちかっていうとあんたがもってると思うわ、前に一緒に乗った時何も起こらなかったもの」


何時の間にそんなことをしていたのだろうかと静希は陽太の方を向くが、どうやら二人で手漕ぎボートか何かにでも乗ったのだろう、その時は何も起こらなかったらしい


人外への接触確率、そして船の上、水の上での事故率の高さ、そう考えると確かに静希の方が水難の相を持っている可能性は高い


「でも実際どうするよ、水の上じゃ俺たちほとんど役立たずだぞ?いっそのことその湖全部蒸発させるか?」


「やめなさい、今回は生態調査よ、専門の人間も一緒に行くからむしろその護衛の方がメインだと思いなさい」


陽太のとんでも発言を軽く流しながら鏡花はいくつかの資料を取り出す、今回行くのはかなり大きな湖だ、関東地方で一番の大きさを誇る湖らしい


「あれ?ここって結構観光の名所になってるだろ、こんなところ調査してどうするんだよ」


関東一番の大きさを誇っていることもあってこの湖はかなり観光客が訪れる、夏にはたくさんの水を用いたスポーツなども盛んにおこなわれ、釣りや遊覧船などでも有名な場所である


そんな場所をわざわざ調査する意味などあるのだろうかと思えてならない


「それがちょっと厄介なことになっててね・・・一昔流行ったネッシーとかじゃないけど、なんか妙な生き物を見たって報告がいくつか上がってるのよ、しかも一件や二件じゃなくて結構な数・・・まぁ写真とかは無いんだけどね」


鏡花の言葉に静希達は嫌そうな顔をする


妙な生き物、そうなったらまず確実に奇形種がその中にいるという事だろう、一体どんな奇形種なのかは知らないがまず間違いなく戦闘が行われることは確かだ


「・・・よし、もう面倒くさいから湖に電流流そう、そうすれば万事解決だ」


「あんたまで変な事言わないでよ、一応は生態調査なの、まだ危険があるとわかったわけじゃないんだから」


城島が特性を活かしたものになるという意味がようやく分かった、奇形種がいるかもしれないから静希達が派遣されることになったのだ


最初から駆除と言わずに生態調査というあたりがいやらしい、明らかに自分たちに仕事をさせる気満々である


「ていうかさ、実際どうするんだ?もし水の中に奇形種がいたら?そいつ討伐対象になるわけ?」


「・・・そりゃ観光地に奇形種がいたらまずいでしょ?一応討伐対象になるんじゃ・・・」


「水の中を自由に動ける相手にか?水中を自由に動けるような能力があるわけでもないのに?これもう詰んでないか?」


静希の言葉に鏡花は返す言葉がないのか複雑な表情をしてしまっている


能力の中には水中行動に特化したものが確かに存在する、静希達の同級生にもそういう能力者がいるのだ


そういう力を持っていれば特にこれと言って問題はないのだが、静希達はそんな能力は持ち合わせていない、しかも水中に対する攻撃手段もほとんどないのだ、水の抵抗は空気の約一万倍、普通に銃を撃ったとしても数メートル程で弾が止まってしまう


こんな状態で水中の相手に対していったいどうやって戦えというのか


「いっそのこと漁でもするか?でかい網もって」


「捕獲ならそれでもいいし追い込むのもそれでいいかもだけど・・・どうしたものかしらね・・・」


さすがの鏡花もこの状況はかなり困難なのか、眉間にしわを寄せて悩んでしまっていた、本来自分たちが得意としているのは山や森、なのに水上がフィールドになるとは思っていなかったのだ、不利と苦戦は否めないだろう


「まぁ一応情報出しておくか・・・えっと・・・この湖は大まかに分けて南北から成り立ってて・・・北部が最も大きい、水深に関してはどれも大体七メートルから九メートルくらいか・・・」


静希はとにかく今回の湖に関する情報を集め始める


地形に産業、観光客の量にその内訳、明らかに実習には不要なことも一応調べプリントしていた


「結構でかいだけあってかなりいろいろやってるんだな、漁業だけでも結構なもんだ・・・今のところ被害自体は出てないんだろ?」


「えぇ、一応目撃証言があったってだけで被害そのものは出てないわ、もしかしたら湖底に住んでるのかもね」


一体どんな生き物が目撃されたのか知らないが、それが奇形種であるならいつ被害が出てもおかしくない


ネッシーなど有名な未確認生物などを想像すると、大きさ的に言えば完全奇形だろうか、正直こういう時にこそ熊田の索敵能力が欲しいところである


「静希、探索中って観光客とかはどうなるんだ?まさかうろちょろしてるとか言わないよな?」


「なんか俺らが行動中は湖全体を利用できないようにするらしい・・・一応実習の三日間はいろんな理由付けて利用できなくするらしいな」


この湖の観光の名所は数多くある、先にもあげたように釣りや遊覧船などもそうだが、個人で水上スキーなどを楽しむこともできるのだ


そんな一般人が大量にいる場所で戦闘などできるはずがない、これだけ広いと流石に入ることそのものを禁止するのは難しいかもしれないが、危険地帯に無能力者が入っていた場合どれだけ面倒な事か


「でも実際さ、もし奇形種がいたとして、どうやって仕留める?やっぱ網かな?」


「そうね・・・実際命の危険を感じさせなければ相手は能力を発動しないわけだし・・・広範囲に網を敷いて区画ごとに分けて調査して・・・発見したら捕獲ってのが一番かしら」


水中の相手に対して最も利口な対応は戦わないことである


そもそもにおいて水中での戦いは適応する能力者以外は相手もできないほど危険なものなのだ、それこそ生きていられる保証すらないほどに


相手が奇形種かも完全奇形かも分かっていないような現状では、まずはいるかいないかをチェックし、そして危険かどうかを把握した後、安全に捕獲するのが一番である


そう言う意味では最初に壁を作ってから各区画を調査し、その上で確認するのが一番の方法である


「・・・そうなるとさ、俺本格的にやることないよな・・・」


「・・・まぁそうね、あんたは今回できることは少ないと思うわ」


陽太の能力は炎と同化することだ、水の上というフィールドでははっきり言って相性は最悪、一回水に落ちただけで能力が消えてしまう


しかも相手が水中にいて、下手に攻撃しないことが求められる場合、陽太にできることははっきり言ってない


もしあるとしたら陸上に相手をおびき寄せた際の対応だろうが、そんなことができる相手かもわからないし陸にあげた時点で勝負がついているかもしれないのだ


「なんだよなんだよ、なんか最近俺の仕事が少ない気がするぞ」


「・・・そうでもないぞ、案外陽太の力は使うかもしれない」


静希の言葉に鏡花と陽太は眉をひそめて首を傾げた


水上というフィールドでいったいどのように陽太の能力を役立てるのか、正直鏡花は思いつかなかったのである


「どうやって?まさか水の中にトンネルでも作れとか言うわけじゃないでしょうね」


「んなこと言わないよ、前にメフィがテレビで見てたんだけどさ、夜に炎をちらつかせて魚を追いやる奴、あれが使えるんじゃないかなと思って」


静希が話を振るとメフィはあぁそう言えばと自分の記憶の中を探っていた


「えっと・・・確か火ぶり漁だったかしら?船の上で火のついた木の棒を振ってる奴」


「そう、たぶんそれ、今回の奴も区画で区切ってもし見つけたら罠にかけることができるんじゃないかと思ってな」


静希の提案になるほどねと鏡花は納得している、確かに静希の言っていることは間違いではない、夜中、つまりは魚も半分眠っているような時間帯に強烈な光を放つ炎を揺らめかせると魚たちは驚いて逃げるのだ


その逃げる方向に罠を張り捕まえる、確かに実際に漁で行われているだけにその方法はありかもしれない


「ふむ・・・確かにありかもしれないわね・・・まさかメフィのテレビ鑑賞が役立つ日が来るとは・・・」


「あら、意外といろんなところで役に立ってるのよ?」


メフィの無駄知識が徐々に溜まっている中、とりあえず役に立ちそうな案が出たことで鏡花はそれをメモしていた


だが問題は山積みだ


索敵をするうえでまずどのように状況把握するか、どうやって目標を発見するか、そのあたりをまず考えなければいけないだろう


今回静希達が乗船する船に水中調査用の機材があるとも限らないのだ、自分たちだけで何とかするくらいの気概がなければ達成は難しい、それほどの内容なのだ


「水面と湖底はいいとして・・・水深七メートルでしょ・・・?どうやって索敵する?明利、水中の索敵ってできる?」


「ん・・・水草とかを持って行けばできなくはないけど・・・それだけ深いと正直難しいかな・・・真ん中の・・・水深三、四メートルあたりが見えないかもしれない・・・」


明利の索敵はマーキングした生き物から一定距離までしか届かない、濁った水などの中にあればさらにその効果範囲は狭まる、今回は明利の索敵はかなり難しいかもしれないと思いながら静希と鏡花は頭を抱えていた


「それならところどころになんかこう、漁業用の道具じゃないけどさ、そう言うのを仕込めばいいんじゃねえの?ほら水中で浮いてる奴」


陽太のよくわからない説明に一瞬首をかしげたが、陽太がノートに絵を描くことでそれが何なのか理解できるようになった


重しとロープ、そして浮きになる何かを結び付けその先端に何かの植物を仕込めばと考えたのだ


水面でも湖底でもなく、まさに中間地点に配置するにはちょうどいい物品である


「なるほど、これなら確かに中間地点の索敵もできそうね、陽太にしては随分いい案じゃない」


「これなら重り部分に種とか仕込めば湖底の索敵もできるな、陽太お手柄だ」


鏡花と静希の二人から褒められたことで陽太は自慢げに胸を張っている、こういう発想が時々思い浮かぶのが陽太の強みのようなものだ、伊達に天才の姉を持っているわけではない


問題はこれだけの広さの湖全てにそれを配置できるかという点である


仮にも関東最大の湖だ、明利の索敵の精度を考えると数メートルにひとつ程度は配置しておきたいところである


だがそれだけの数を置けばもちろん当然ながら回収も面倒なことになる、それこそ漁業に使う網のように全てを連結して一気に回収できるくらいのことはした方がいいかもしれない


静希と鏡花の中ではすでにどれくらいの時間でその作業を終えることができるかという事に頭を使いはじめていた


「静希、現地には何時くらいに到着するの?」


「ここから約三時間くらいだ、十一時・・・いや十二時には到着できると思う」


十二時に到着するとしてそこから索敵用の道具を作りながら湖に設置、船で移動しながら徹底的に索敵範囲を広げるとしても一日、最悪二日以上かかるかもしれない


普通にやっていたらそれこそ膨大な時間がかかってしまうことは間違いない、もしかしたら索敵網を敷くだけで実習が終わってしまう可能性がある

それはさすがに許容できない、陽太の案はなかなか良いのだが、それを実行するとなると時間的に余裕がないのは明らかだ、どうしたものかと静希達は頭を抱えてしまっていた


「ギリギリすぎるわね・・・最悪徹夜の可能性も・・・いやそれでも間に合わないかも・・・」


今回行く湖の広さから配置しなければいけない索敵用の道具の計算をしていると、鏡花は頭が痛くなるのを感じていた


普通の陸地であればそれこそ種をまくという単純な方法で対処できるのだが、実際にこれだけの範囲をカバーしなくてはいけないというのはかなり厄介だ


地面の上だけではなく空中も索敵しなければいけないようなものである、明利の索敵は水中に関してはかなり相性が悪いのだ


「・・・あの、他にも一応やり方はあるよ?」


「・・・へぇ、どんな?」


自分の能力の事なのだ、明利の提案ならば何かいい案があるかもしれないと静希達が耳を傾けると明利は口元に手を当てて悩み始める


恐らくはどれが一番現実的かを考えているのだろう


「一つは生き物そのものにマーキングするの、例えば小魚とかに、全体的にムラができちゃうけど、常に動いていてくれるから区画分けした状態なら索敵は楽だと思う」


「あー・・・なるほど、そうだよな、生き物ならマーキングできるもんな」


明利の案は小魚などにマーキングを施し水中の索敵をやってもらうという事だ、魚である以上ムラができてしまうのは当然だが、それでも自由に広がっていくという事を考えれば索敵範囲を楽に広げることができるだろう


「それならさ、プランクトンとかそのレベルの生き物にはマーキングできる?魚よりはムラが少なくていいと思うけど」


「プランクトンかぁ・・・できなくはないと思うけど・・・でもどうやって手に入れるの?それに触ってないとマーキングはできないし・・・」


一瞬でも触れることができればマーキングすることは可能だ、だがプランクトンほど微小な生き物となると大量に用意するのは難しい


適当な川などに行って水を汲めば手に入れることはできるだろうが、それを培養し、さらにはそれを現地に持っていくという手間がかかるのだ


プランクトンだけを持っていくという事ができればいいのだが、そんなことができるはずもない


「だったら明利が水の中に浸かって現地の奴らをマーキングするとか?」


「もしその場に奇形種・・・とは言わなくても大きな生き物がいたら明利も一緒に食べられかねないけどね・・・まぁそれが一番手っ取り早いんでしょうけど・・・」


明利の体を直接現地の湖の中に入れれば確かに触れている生き物にマーキングをすることはできるだろう


それを続けていけば微生物などを媒介にして索敵はできるだろう、だがその分明利の危険は格段に増す


戦闘能力が皆無の明利を危険にさらすというのは静希も鏡花もあまり容認はできなかった


「難しいわね・・・釣り用の餌で生きている小魚がいればそれを使えばいいんだけど・・・やっぱムラがなぁ・・・」


「だ、大丈夫だよ、もう夏だから水に入っても大丈夫だと思うし、それに観光地なんでしょ?ワニとかがいるならあれだけど、さすがにそこまで変なのはいないよ」


明利としては直接水に入る索敵方法はやってもいいと考えているのだろうが、静希と鏡花はあまりいい顔をしていなかった


仮にも奇形種がいるかもしれないような場所に明利を配置するわけにはいかないのだ


誤字報告を五件分、累計pvが21,000,000突破したので2回分投稿


最近投稿量が物足りない気がしたのは自分だけではないはず・・・そうだと思いたい・・・誤字が少なくなってきているのか・・・?


これからもお楽しみいただければ幸いです

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