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J/53  作者: 池金啓太
三十一話「その場所に立つために」

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男子と女子

「なるほどなー・・・今日は女子たちは買い物か」


「そうなんだよ、なんか適当にいろいろ買いそろえてくるらしい」


次の日の放課後、静希は陽太と一緒にコンクリート地面の演習場にやってきていた


陽太は事前に鏡花からメニューを渡されているのか、メモを見ながらふんふんとうなずいていた


「最近お前は何やってるんだ?また武器を作ってるのか?」


「見るか?最近は攻撃より防御に重点を置いてるんだぞ」


陽太が防御に重点を置くというのは正直想像できなかった、前に作っていた盾を見た時もずいぶん驚いたものだ


なにせ特に何も考えずに攻撃すればいい程度の戦術しかなかったのだ、鏡花の指導のおかげかその戦い方はただの動物レベルから人間のものになっていると言っていい


陽太がポーズをとりながら能力を発動すると、まずはいつも通り炎の鬼の姿へと変貌する


そしてその後にもう一度ポーズをとって集中すると、その体の炎が変化していく


体表面に何やら鎧のようなものが形成されつつあるが、その形はまだ歪だ


とはいえ一応体を守るための鎧自体は出来上がっている、後は形をスマートにしていくだけの作業のようだった


「へぇ・・・なかなかのもんじゃないか、この状態で戦闘はできるのか?」


「いや、この状態だとあんまり速く動けないんだよ、なんていうか気にしすぎて全力が出せない感じ、だから実戦投入はもうちょっと後だな」


炎の形成にはかなり高い集中力が必要なのだろう、陽太は長い訓練によってそれを上手く身に着けている


槍や盾のようにもはや作り慣れたものならいざ知れず、全身に纏う形で作る鎧はまだ実戦で使える程の練度には達していないようだった


「でもこれが実戦投入できればお前の前衛の能力はかなり上がるよな、それこそもう敵なしレベルだ」


「ふふん、どっこいまだ隠しだねがあるんだよ、こっちは鏡花に使用禁止されてるけどな」


陽太の言葉に静希はへぇと驚いて見せた


なにせ以前の陽太の槍でさえ静希はかなり驚いたものだ、だがまだ陽太には伸ばせるだけの部分があるうえに、隠すだけの技があるという事なのだ

気になる


鏡花が陽太をどれだけ強くできるかという事にも興味があるが、一体どんなものなのか純粋に興味があった


「ちょっとだけ見せてくれないか?多少形にはできてるんだろ?」


「一応な・・・でも鏡花から止められてるんだよ、変な癖付けるといけないからって」


鏡花は陽太の訓練に関してはかなり慎重に行う節がある、能力は主に感覚で操るものであるために鏡花の見ていないところで変なことをして妙な癖がつくのを危惧しているのだろう


実際にその光景を見ていれば自分がすぐに修正することができる、そう考えているからこそ陽太に技の使用を禁じているのだろう


「なんていうか、お前は本当に鏡花の尻に敷かれてるな、これから大丈夫かよ」


「おうよ、あいつは不意打ちに弱いからな、何の前触れもなしにアクションを起こせばやり返せるぜ」


陽太の言葉にそう言えばそうかもしれないなと静希は今までの鏡花の様子を思い出していた


確かに鏡花は不意打ちに弱い、いい意味でも悪い意味でも


陽太は次の行動が読めない、だからこそいきなり妙な行動に出れば鏡花に一泡吹かせることもできるだろう


その結果彼女が赤面することになるという事はもはや必然と言ってもいい


「ところでさ、お前と鏡花って今付き合ってるんだよな?」


「そうだぞ?」


「普段何やってるんだ?ちゃんとそれらしいことしてるのか?」


それらしいこと、つまりは恋人らしいことをしているかどうかという事なのだが、普段の鏡花と陽太の様子を見ているとそれらしいことは何もしていないように思えるのだ


ただ単に静希に見えないようにしているだけなのかもしれないが、以前静希が企んだホテルの一件以来それらしいアクションはしていないように思える


特に鏡花からの相談が無くなったのが印象的だ、相談するまでも無くなったという事なのだろうか


「結構やってるぞ、休みの日とかはいつも一緒にいるしな」


「ほう・・・どんなことやってるんだ?」


「ん?普通に一緒にダラダラしたり勉強したり、買い物行ったりとかかな」


案外普通だ、鏡花と陽太のことだからもっと特徴的なことをしているのかと思ったら普通のカップルと同じような休日を過ごしている


考えても見れば平日もほぼ常に一緒にいるようなものなのだ、特別な何かがあるかといわれると微妙なところなのである


「まぁ仲良くやってるなら何よりだけど・・・なんだか結婚後とか大変な気がするぞ」


「なんで?それこそ心配いらないだろ、鏡花ならいい嫁になるぞ」


どうやら陽太の中で鏡花の評価はかなり高いようだ


確かに実際鏡花は女子としてのレベルはかなり高い、嫁としても母親としても必要になる技術や教養を高いレベルで修得している


母親になる鏡花の姿というのをすぐに想像できるあたり、どれだけ鏡花が普段陽太の世話をしているのかがよくわかる瞬間である、鏡花よりも心配するべきは陽太なのではないかと思ってしまうほどだ












「へっくし!・・・誰か噂してるのかしら・・・」


「アハハ、だったらたぶん静希君と陽太君だね」


買い物に来ている鏡花は唐突に大きなくしゃみをしていた、風邪を引いたというわけでもなく唐突にくしゃみが出たという状況、よく噂されるとくしゃみが出るなどという、だが自分で言っておいてなんだが鏡花はあまりそう言う迷信を信じていなかった


もっとも、実際に静希と陽太は鏡花の話をしていた訳だが


「それで?あの二人の買い物はいいけど、結構量あるんじゃないの?」


「うん、って言ってもお風呂で使う化粧水とか日用品ばっかりだけどね」


「・・・あいつらに荷物持ちでもやらせればよかったんじゃないの?」


液体というのは重い、買いに来たものの量が少ないのと、比較的人数が多いとはいえ買い物をするのであれば荷物持ちとして男子を連れてくればよかったと鏡花は少しだけ後悔していた


「でも男の子だとこういうのってよくわからないだろうから、つまんないと思うよ?」


「ん・・・まぁそれもそうか、無理に付き合わせるのもなんだしね」


男子にとって女子の買い物ほどつまらないものはない、それが自分も楽しめるようなものならまだいいのだが、残念ながら日用品を買うなどという事で静希や陽太が楽しめるとは思えないのだ


そう言う意味では連れてこなくて正解だったかもしれない、ただ荷物持ちをさせるくらいなら自主訓練をしていた方がいくらかましである


「へぇ、今ってこんなにたくさんあるんだ・・・なんか違うのかな?」


「わかりません・・・会社が違うとか成分が違うんでしょうか・・・?」


「みんな柄とかが違いますが・・・効果は変わるのでしょうか?」


あまりこういう事には詳しくないのか、雪奈は商品を手に取って首をかしげてしまっている、アイナもレイシャも同様のようで棚に並べられた商品を見ながらどれにしようかと迷ってしまっているようだった


実際あのようなものは買って使ってみないと効果がわからないものが多い、いくつか試して自分に合うものを探していくしかないのである


「ちなみに雪奈さんは何を使ってるんです?私はこっちですけど」


「ん?私は明ちゃんが選んでくれた奴だよ、えっと・・・どれだっけ・・・」


「雪奈さんはこれですね、私のはこっちです」


年下に日用品を選ばせるというのはどうなのだろうかと鏡花は呆れてしまっているが、雪奈の性格を考えるとそれも不思議な話ではないなと半ば納得してしまう


無頓着とまではいわないが明らかに彼女は面倒くさがりだ、やらなくてもいいことならずっとやらないのではないかと思えるほどに


同じ女性として明らかに欠陥のある雪奈、それを支えているのは静希と明利なのだ


苦労しているなと心の中で同情しながら鏡花は一つの商品をとる


「二人はまずこの辺りから始めてみたら?肌にもやさしいし、子供の頃はこのくらいでいいでしょ」


「そうだね・・・あとはこれと・・・これもいいかも」


「・・・それらの違いがわかりません・・・」


「何がどう違うのでしょうか・・・?」


アイナとレイシャからすれば鏡花と明利が提示した商品のどこに違いがあるのか全く理解できなかった


実際にそれらの効果に明確な違いがあるかといわれるとそう言うわけでもない、目的は似通ってて別の会社が出しているというだけだ


「なに・・・と言われても・・・匂いとか?」


「後は肌触りとかかな、こればっかりは好みだからね」


同じ商品でも違いが出るように会社によって色々と工夫をしているところが多いが、そこまで決定的な違いがあるというわけではないのだ


効果はほぼ同じ、後は個人の好みで変えていくほかないレベルの変化である


「・・・でしたら私はこれを」


「私はこちらを」


それぞれアイナとレイシャは別の商品を手に取った、二人とも別々の商品を選ぶとは思っていただけに鏡花たちは別段驚くことはなかった


この二人は常に一緒にいるとはいえ東雲姉妹のような姉妹ではないのだ、個人の好みも性格も全く違う、別なものを選んでも不思議はない


「私もなんか買ってみようかな・・・今まであんまり気にしてなかったけど」


「雪奈さんは・・・今のままがいいと思いますよ?それに変えてもそこまで変化はありませんし」


明利の言葉に雪奈はそうなの?と少しだけ残念そうにしていた


これだけ商品があるのだから種類を変えたらそれこそ劇的な変化があるのではないかと思っていたのだろう、だが残念ながらそこまでの変化はない


そんな効果を得られるのであればそれこそ他の会社の商品がただの役立たずという事になりかねないのだ、同じような効果を持っていながら少しずつ違うからこうしてたくさんの種類があるわけで雪奈の想像しているようなものではない


「とりあえず後は何買えばいいわけ?まだあるんでしょ?静希の家ってあんまりこういうのなさそうだし」


「えっと後は・・・まだたくさんあるね」


「はぁ・・・もういっそあんたも一緒に住んじゃえばいいじゃない、そうすれば買う手間が省けるわよ?」


「そ・・・それはまだ早いよ、学生の間はダメだと思う」


つまりは卒業した後は同棲するのかと鏡花は小さくため息をつく、半同棲状態で何をためらうのかと若干呆れてしまっていた


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