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J/53  作者: 池金啓太
三十一話「その場所に立つために」

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エルフの同級生

「五十嵐、少しいいだろうか?」


「ん?どうした?」


場所は変わり喜吉学園


その日の授業も終わり、さっさと家に帰ろうと静希が荷物をまとめていると仮面をつけた同級生である石動が静希に話しかけてきた


「今度の実習の時の話なのだが、風香と優花がお前の家に泊まりに行きたいと言っているらしくてな」


「あぁ、それならもうアイナとレイシャから聞いてるぞ、なんでも今日家にあるものをチェックしてるらしい」


静希の言葉に石動はそうなのかと額に手を当てる


どうやら先日のことから迷惑をかけているのではないかと思っているのだろう、その声音から申し訳なさが伝わってくる


「すまないな、お前にはあの二人のことで少し迷惑をかけすぎている気がする・・・」


「気にすんなって、アイナとレイシャのことであの二人には世話になってるし、何よりアイナとレイシャがあの二人と遊んでるだけだ、俺は場所を提供してるだけだよ」


「・・・そう言ってくれるとありがたいが・・・さすがにな・・・何か別の形で返せればいいんだが・・・」


石動としても自分の妹のように思っている二人が世話になっているだけに、何か恩を返せないかと悩んでいるようなのだが、静希としては別に大したことをしているわけではないためにそこまで悩む必要はないのではと思えてしまう


難儀な性格をしているなと静希は苦笑してしまうが、それが石動という人間なのだ、これ以上自分がとやかく言う事ではない


「そう言えば五十嵐、数がいるとはいえあの子たちだけで数日間を過ごさせるのは少々問題じゃないか?誰か大人がいたほうが・・・」


「あぁ、その点なら安心しろ、うちの姉が快く引き受けてくれた、後アイナたちの保護者の片割れが一応様子を見に来るらしい、まぁ問題はないだろ」


うちの姉というのが雪奈の事であると気づくのに少し時間がかかったようだが、それなら問題はないかと石動は少しだけ安心しているようだった


年上である雪奈がいれば少なくとも問題行動はしないだろうと考えているのだろうが、雪奈がいただけでは問題行動が無くなるとは思えない


なにせ雪奈も一緒になって遊ぶ可能性があるのだ、しっかりと監督役を任せるのはカレンに任せるに限る


「静希君、そろそろ帰ろ、夕飯の支度もあるし」


「そうだな・・・石動、うちに東雲姉妹来てると思うけど、どうする?迎えに来るか?」


静希の言葉に石動は一瞬反応し、少し迷った後で首を縦に振った


静希の家に行くのは初めてだと思い出したのだろう、東雲姉妹が泊まっても大丈夫か多少チェックはしておいた方がいいと思ったのか少しだけ乗り気のようだった


「五十嵐の家は確かマンションだったか?」


「あぁ、そこまで広くないけど、まぁ数人暮らす分には十分だよ」


静希は普段から人外たちと一緒に暮らしているためにそこまで広さは感じないが、実際は一世帯が暮らすには十分な広さのある部屋である、最近は暮らす人数が増えたせいで若干狭く感じるのは気のせいではないだろう


「あ、その前に買い物行っていいかな?たぶんお肉があんまりなかったと思うの」


「あー・・そう言えば食う量増えたからな、そういうところも気を付けなきゃな」


静希が普段食べている一人分の量から一気に三人分になったのだ、静希が食べる量とあの二人が食べる量は大体同じか少し多いくらいである、その分食材が減るのも早いのだ


無論食費や光熱費という事でエドからいくらか受け取ってはいる、そのあたりをきっちりしているあたりエドらしいというべきか


「そう言えばあの二人・・・アイナちゃんとレイシャちゃんは一体どういう関係でお前の家に住むことになったんだ?知り合いなのか?」


「えっとまぁそう言うことになるな・・・俺の父さんが仕事で知り合ったのがあの二人の保護者で、その関係で何度か会ったことがあるんだ、留学したいっていうんで家を貸してるわけ」


静希の説明に石動はなるほどと納得していた


何も嘘は言っていない、何一つ嘘は言っていない


実際にエドは静希の父親の和仁と知り合っているし、あの二人には何度かエドと一緒にあったことがある、嘘は一つもない


無論隠していることはあるが


「風香たちから聞いているぞ、なかなか優秀な子たちだそうだな」


「まぁ優秀なんだけどな・・・まだまだ未熟なところが多いよ、そのあたりはやっぱり子供だな・・・まぁ俺も他人をどうこう言える程優秀じゃないけどさ・・・」


静希はそこまで優秀な能力を持っているわけではない、静希自身はまだ完成に至るには遠く、学ぶべきことが多い人種だ


だからこそ他人を未熟だと言えるほど優秀ではないのだが、その言葉に石動と明利は薄く笑ってしまっていた


「五十嵐、お前はもう少し自己評価が高くてもいいと思うぞ、少なくともお前は私に勝っているんだからな」


「そうだよ、静希君は頼りになるよ?今までもずっと」


二人からの評価に静希は苦笑してしまう


自分の目標が高すぎるからこそこういう風に言われてしまうのだろうか、それともただ単に自己評価が低すぎるだけなのか、静希からすれば有難いようなむず痒いような複雑な心境だった


「ただいま、二人とも、帰ったぞ」


「「お邪魔します」」


買い物を終えた静希達が家の中に入ると、リビングの方からアイナとレイシャが迎えに出てくる


「おかえりなさいミスターイガラシ」


「ミスミキハラ・・・そして・・・えと・・・ミスイスルギ、いらっしゃいです」


一瞬石動の名前が出てこなかったのか、レイシャは若干迷っていたようだが、ひとまず客人用のスリッパを出すと三人を迎え入れた


「ただいま二人とも、東雲姉妹は奥か?」


「はい、現在はリビングでお話し中です」


「お泊り会について着々と計画中です」


そりゃ何よりだと言った後で静希は買ってきた食材を台所まで運んでいく、そして静希に続いて明利と石動もそれぞれリビングの方へと向かっていった


「お邪魔して・・・藍姉さん?」


「どうしてここに?」


「どうしてと言われてもな・・・お前達を迎えに来たんだ、もうずいぶん遅いからな」


夏に近づき日も長くなってきたとはいえこの時間に小学生だけで帰らせるというのは少々危ない、二人がエルフであることを鑑みても一応心配だったのだろう


「石動は視察に来たんだよ、うちがお前達を泊めても大丈夫かどうか」


「そうなのですか?五十嵐さんの家は大丈夫ですよ」


「比較的安全です、たぶん」


「そのたぶんというのは何故だ・・・?何かあるのか?」


一体どこの家と比較したのかは知らないが、一応静希の家は安全であると認識しているらしい、最後の方にたぶんを付けたのは静希が所有している武器的な意味でのたぶんだろう


あれだけの武器を所有していてはたぶんを付けられても仕方がないとしか言いようがない


小学生に若干危険かもしれないという可能性を欠片でも持たれているというのは正直かなり複雑な心持だった


「それにしても・・・五十嵐、この機械は一体なんだ?ずいぶん大きいが」


「あぁ、それは気体を作るための機械だよ、もう結構古いけどな」


「ほほう・・・なるほどこれがそうなのか・・・」


静希の能力で気体を収納して陽太の能力の補助をしているシーンを見たことがあるが、このように作っているとは思わなかったのか石動は興味深そうにしていた


そこまで眺めたところで今は何も動かしていないため変化はないのだが、気になっているのであれば何も言うことはない


変なところに目を付けられるよりずっとましである


「時に五十嵐、君のご両親は?」


「うちの親は海外で仕事してるよ、帰ってくるのは本当にたまーにだ、だから実質一人暮らしだな」


「そうなのか・・・それは大変だな」


石動も親元から離れて暮らしているために一人暮らしの大変さがわかるのだろう、腕を組んでうんうんと何やら頷いている


共通点を持って嬉しいのかどうかは知らないが、静希は最近は一人暮らしというものをしていない、もう一年以上前に一人ではなくなってしまったのだ


かつての一人暮らしの気ままさはもう味わえないだろう、そう言う意味では石動も正確には一人暮らしではないように思える、一応彼女にも精霊がいるのだから


「まぁうちには料理を作ってくれる素晴らしい幼馴染がいるからな、俺がやるのはせいぜい皿洗いと掃除洗濯くらいのもんだ」


その掃除洗濯もオルビアやウンディーネが協力してやってくれるため、この家に置ける静希の役割は今やほとんどないようなものである


それでも明利達に甘えてばかりでは申し訳ないといろいろ手伝ってはいるのだが、やはり実力が足りないのが現実である


「ふむ・・・幹原のようなものが身近にいるとありがたいだろうな・・・私にもそう言う幼馴染が欲しかった・・・」


「お前の場合はちょっと特殊だからな・・・同年代とかもいなかったわけだし・・・」


「もう少し早く喜吉に通っていれば・・・料理好きな男子生徒と幼馴染になれたかもしれないのに・・・」


お前が後悔するのはそこでいいのかと聞きたくなるが、それよりも前に聞かなければいけないことを明利は気が付いた


「それなら石動さんが料理を好きになればいいんじゃないかな?美味しくできると楽しいでしょ?」


「そうは言うがな幹原、自慢ではないが私の料理は食べられて栄養が取れればいい程度のものでしかないぞ、不味くはないが特筆すべきところもない」


「本当に自慢にならねえなそれ」


どうやら石動もそこまで料理が得意というわけではないようだった


壊滅的に料理ができないというわけではなさそうだったが、明利や鏡花のような料理の腕は持ち合わせていないようだった


明利、鏡花、カレン、今のところ身近で料理上手な女性はこのくらいだろう、城島がどれくらいの料理の腕を持っているのか地味に気になるが、最低限は作れるだろう


身近に料理上手な幼馴染がいたというのは実はかなりの幸運だったのではないかと思いながら、静希は明利の頭を撫でることにした


明利は何故自分が今撫でられているのかわかっていないようだったが、とりあえずなすが儘撫でられるがままになっていた


それを見て東雲姉妹が若干膨れていたのは別の話である


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