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J/53  作者: 池金啓太
三十話「その仮面の奥底で」

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その本に関する

「・・・なるほど、それで見つかったのはその四冊の本だけという事か」


「あぁ、今ミスアイギスが解読してる、どうやら悪魔の契約者が書いたものらしくてな、内容がかなりちぐはぐだ」


本の内容に関しては静希も把握はしていない、上手く話をコントロールしなければあの本も回収されかねないだろう


多少ハッタリを含めることも必要かもしれない、静希は意気込みながらラルフに向けて報告を続けた


「今のところ分かっているのはあの本が召喚と悪魔に関する研究書である可能性が高いってことだ、俺たちの悪魔がそれぞれそれらしい単語を発見した、時間はかかるが解読はできるだろう」


「ふむ・・・かなり重要な証拠という事か・・・そうなってくるとこちらに提出してもらいたいのだが・・・」


静希の全身をチェックするが、今現在その本は持っていない、今はカレンが本を四冊ともに持っている、その中を熟読するためにもここであの本を証拠として提出するわけにはいかない


「それは構わないがやめておいた方がいいぞ、明らかに契約者じゃないとわからないような内容まで含まれてる、証拠として出したところで内容を理解できるとは思えん」


「研究者に預ければそれなりの成果はあげられるのでは?時間はかかるかもしれないが」


「それなりじゃ困るんだよ、可能な限り早く情報が欲しいんだ、のんびり待ってる暇はない、俺は研究者に預けるよりミスアイギスに預けておいた方がいいと思う」


彼女の近くにはミスターパークスもいるしなと言いながら静希は小さくため息をつく


研究者よりはカレンの方が解読は早いだろう、なにせ彼女は研究者だったこともあるうえに、彼女自身が契約者なのだ、そのことは隠してあるために口にすることはできないが


「それにあんたらの場合、自国の不利益になるような情報は隠すだろ?情報は常に正確に伝達する必要がある、幸いにして俺たちは中立の立場にあるからな」


ドイツで事件が起きたという事もあり、何よりドイツ語で書かれた本という事はもしかしたらドイツという国そのものに不利益となる情報が記されていても何も不思議はない


そうなると恐らく各国への正確な情報の伝達というのは難しいだろう、そう言う意味ではどの国にも属していない静希達が情報を伝達する方が正確に伝えることができる


「なるほど・・・だがそれをどうやって上に報告すればいい?さすがに手ぶらで帰るというのは控えたいのだが」


「それなら既にあんたが手を打ってあるだろ、もうアジトの方に待ち伏せの部隊を送った・・・たぶんだけどあの男の仲間がやってくるはずだ・・・契約者かどうかは知らないけどな」


すでに部隊の人間から後詰のチームが派遣されたことについては聞いている、それに関してはそこまで重要性のあるものではないだろう


むしろ問題はここからだ


「それに被害は最小限、実行犯は捕獲、これ以上何を求めるっていうんだ?これ以上の手柄は無いだろう?」


「いいや、まだその仲間を捕えられる可能性がある」


「そうか、まぁ俺たちの任務は歪みの阻止だけだ、それをやるなら勝手にやってくれ、俺たちは関与しない」


そう、静希達の表向きの目的はあくまで歪みの発生の阻止にある、その実行犯を捕えたのはただ単に情報を引き出したかったからに他ならない


確かに軍の人間と協力すればそのほかの仲間も捕えられるかもしれないが、さすがにリスクが高い、これ以上静希がこの場で行動する理由は無いに等しいのだ


何よりすでに破棄されたと思われる拠点にやってくるような人間が契約者であるとは思えないのだ


カレンが見た予知は小規模な戦闘だったという、恐らく一定時間あの場に残っていたらやってきた他の仲間と戦闘になっていたのだろう


だがそれでも規模が小さいという事は契約者ではない


ともなれば、静希達がこの場に残る理由は召喚陣が完全に消えるのを待つくらいのものなのだ


「中佐、あんたが手柄を得たいという考えは理解できる、だけどもう十分じゃないのか?契約者相手に被害はほぼゼロ、相手の思惑も阻止し拠点の一つを制圧、これ以上何を求める?」


「・・・確かに成果としては十分だろう、だが何か物証があればそれに越したことはない、何よりこれでは君たちに頼りきりになったという結果になるだろう」


「なるほど・・・確かにあんたたちはほとんど何もしてないからな」


静希の言葉にラルフは僅かに眉間にしわを寄せる、だが反論することができないのか何も言ってこない


静希の言葉は事実なのだ、実際戦闘に関してはほとんど何もしていないに等しい、静希達が得た手柄をそのまま自分たちの物にしているだけなのだ、反論することなどできるはずもない


「だが中佐、俺が以前関わった悪魔の契約者の事件では、もっとひどい結果だったぞ、軍の人間には何人も被害が出ていた、それに比べれば立派な結果だ」


「それは、あくまでただの能力者にしてはという話だろう?」


「当たり前だ、契約者相手にただの能力者がそこまで大層なことができるわけないだろ」


だがそれで充分なんだよと告げた後で静希は近くの椅子に腰かける


結局のところ、この男は自分たちの力だけで何か手柄を得なければ納得しないのだ、そしてそれを上の人間に報告することこそが目的なのだろう


縦社会というものは厄介だなと思いながら静希はため息をつく


「なんなら俺が感謝状でも書いてやろうか?中佐のおかげで仕事がしやすかったって、実際移動やらフォローやらはありがたかったしな」


「悪魔の契約者からの感謝状か・・・まぁないよりはましだろう・・・」


「必要ならまた一緒に仕事がしたいとでも書いておいてやろうか?契約者とコネができるってのはかなり大きな手柄だろ」


静希の言葉にラルフは随分と揺れているようだった、確かに悪魔の契約者とコネができるというのは大きい


イギリスという国が静希と深く関係を持っているというのは以前から知られている、だからこそ静希と関係を持とうとした国は多い、だがそれらはすべて一蹴されている


この機会を逃すような手はないのではないかと思えてしまう


「なるほど・・・わかったそれで手を打とう・・・あの本は好きにしたまえ、こちらはこちらでまだ仕事がある」


「あぁ、召喚陣が完全に消えるまで油断はできない・・・専門家はなんて言ってるんだ?」


すでに静希達の戦闘が終わった後研究者たちが召喚陣を調べていた、いつごろ消えるのかもわかっていても不思議はない


「ふむ、報告では通常よりかなり早く消える可能性が高いそうだ・・・明日の昼頃には消えるだろうという事だ、それまで警戒態勢は解けないな」


「了解した・・・報告は以上だ、俺は休ませてもらう・・・いっそのこと買い物にでも行くかな・・・」


「好きにするといい、契約者とはいえ学生だ、街を見ていくのもいいだろう」


ドイツの街並みというのをしっかり確認していなかったというのもあるが、せっかくドイツまで来たというのに何も買わずに帰るというのも正直退屈だ


カレンが細工をしたおかげか未完成だったからか召喚陣は明日には消えるという、せっかく明日の昼までの猶予があるのだ、警戒ついでに買い物をするというのもありだろう


そして自分たちに宛がわれた建物の前までやってくると、そこには涙目になっているアイナとレイシャ、そして同じく涙目になりながらも城島に向けて必死に立ち向かっている明利がいた


一体何をやっているのかと考えた瞬間、そう言えば訓練をしてやるとか言っていたことを思い出す


そして静希の存在に気付いたのか、アイナとレイシャが涙目のまま静希に駆け寄ってきた


「ミスターイガラシ!助けてください!あれは訓練ではありません!」


「あれはただの暴力です!痛いです!酷いです!」


一体どんな訓練をすればこんな風になるのか、少し気になったが城島に立ち向かっていた明利が高々と放り投げられたのを見てあぁなるほどと納得する


明利のように訓練して空中で姿勢を整えることができるのであればまだいいが、恐らくアイナとレイシャはその訓練をしていないのだろう、投げられた後投げられたまま地面に着地していたのだろうか、体にはあちこち傷がある


「ほらどうしたアイナ、次はお前の番だ、来い」


名前を呼ばれたアイナはとっさに静希の後ろに隠れてしまう


隠れたところで城島の前では意味がない、能力を使われ、宙に浮かされたあとゆっくりと彼女の前に立たされてしまっていた


「どうした?もう根を上げたか?指導はまだまだ終わっていないぞ」


「あぅ・・・あぅ・・・」


どうやら肉体的には問題ないようだが、そのメンタルとしてはかなりギリギリのところまで来ているのだろう、子供相手に何をそんなにむきになっているのかと問いただしたくなるが、あれが城島の指導法なのだ


しっかりと痛いという事を自覚させ、本人にどうすればいいかを考えさせる

ためにはなるのだが、子供には少々辛い訓練だろう


なにせ指導とは口ばかりで基本的に徹底的に痛めつけているようにしか見えないのだから


実際は怪我を極力しないようにしているのだろうが、どうやらアイナとレイシャはそのことに気付けていないようだった


「うぅ・・・相変わらず先生容赦ないよ・・・」


「明利・・・お前もそんな情けない顔するなよ・・・お姉さんだろ?」


「・・・うん・・・」


どうやら明利は年上であり教え子であるという事もあってかかなり徹底的にしごかれているようだった


アイナとレイシャよりもかなり攻撃的に指導されたのか、体中に攻撃された跡のようなものが見受けられる


どうやらかなりきつめの指導を受けているようだった


そうこうしているとアイナが静希達の元へと投げられてくる、静希はそれを難なくキャッチし、彼女の無事を確かめる


「おいおい、大丈夫かよ」


「も・・・もう嫌です・・・痛いのは嫌です・・・」


随分と心を折られているようだ、ここまで泣き言を言っているアイナも珍しい


普段の訓練ではここまで徹底的に痛みを覚えさせて訓練するという事はなかったのだろう、やはり訓練の仕方に問題があるのだろうか


城島の訓練は痛みを覚えたうえでその痛みを回避するために考えさせるというものだ、この二人が考えない限りいつまで経っても痛いままである


「先生、子供なんだからもうちょっと手加減してあげてもいいんじゃないですか?」


「何を言うか、こいつらだって立派な能力者だ、加減する必要などない」


一人前と認められているのは嬉しいのだろうが、手を抜いてほしいというアイナとレイシャの気持ちがひしひしと感じられる、もう少しこううまく接することができればいいのだが、もしかしたら城島は子供が苦手なのだろうかと思ってしまう



「じゃあせめてその・・・何かアドバイス的なことを・・・」


「ふむ・・・アドバイスか・・・そうだな・・・」


城島は静希に抱き上げられているアイナとその後ろに隠れているレイシャの首根っこを掴んで自分の顔のギリギリまで近づけさせる


明らかに子供に対する扱いではないが、城島らしいというほかない


「いいかお前ら、敵はお前達に痛みを与えてくる、ならお前達はどうするか、それを避けるか防ぐか、自分で対応する以外に方法はない、対応できるのは自分だけだ、そのことをよく覚えておけ」


誰かが助けてくれることなどはあり得ない、自分で何とかするほかない


何とも城島らしいアドバイスだ、自分しか頼る対象がいないのだから自分で何とかするほかない、この訓練では能力が使えないのだから自分の体で何とかするほかない


甘えなど許さない、できるまでやる、アイナとレイシャが優秀であることは城島も分かっている、だからこそこうして実際に訓練をしているのだ


もはや小学生が行うレベルの訓練ではないが、それは口にしない方がいいだろう


「じゃあ先生、俺は部屋に戻っていますよ」


「あぁそうしろ、中でパークスとアイギスが待っている」


どうやら今も解読を進めているのだろう、静希も早めに戻ったほうがよさそうだった


「じゃ、じゃあ私もそろそろ」


「お前は残っていけ、存外組手は苦手のようだったからな、徹底的に教え込んでやる」


静希に続いて逃げようとした明利の頭部を掴み、城島はずるずると引きずっていく


明利の目が助けてと訴えていたが、さすがに城島に逆らうようなことは静希もできない、すまないと内心詫びながら静希は自分たちに宛てがわれた部屋へと入っていく


「あ、戻ってきた・・・なんか深刻っぽいわよ?」


鏡花の言葉に静希は部屋の奥の方を見ると本を手に取りながら今にも人を殺しそうな表情をしているカレンと、明らかに機嫌が悪そうなエドがいる


一体あの本に何が書いてあったのか、というかもうその内容を理解したのだろうか、二人がここまで表情をあらわにすることは最近ではなかったように思える


「・・・一応聞いておくけど・・・どうした?何かわかったのか?」


「・・・あぁ・・・この本を書いたやつと、その目的について・・・おおよそ頭に入れた・・・」


カレンの声は今までにないほどに怒りに満ちているようだった、こんな状態ではまともな説明などできないだろう


そう思い静希がエドの方に視線を向けると、彼はようやく落ち着きを取り戻せたのか大きく息をついて静希の方に顔を向ける


「内容がかなり飛んでいたからおおよその内容でしかないけれど、どうやらこれを書いた人物はリチャード・ロゥ本人の可能性が高いんだ」


「あいつが書いた研究書ってことか・・・」


「うん・・・メモ書きに近い部分もあったけど、それでも十分内容は理解できたよ・・・」


研究者などによくあることなのだが、自分自身の研究ノートというものを作ることがある


自身が研究している内容を時に大雑把に、時に綿密に、時に情報を整理するために書き記していくためのものである


十七年前からのものという事は、恐らくその時代からずっとノートに記すことが癖になっていたのだろう、こうして残っていると言う意味では運が良かったとしか言いようがない


「それで・・・あいつの目的は一体なんなんだ?まさか歪みの発生自体が目的とか言わないよな?」


静希の言葉にエドは首を横に振る


歪みの発生が目的ではない、という事はまだ先があるのだ、あの男が求める何かが


「結論から言えば、異世界への到達が目的らしいね」


「・・・はぁ?」


エドの言葉に静希は間の抜けた声を出してしまっていた


異世界への到達


要するに違う世界に行きたいという事だ、ファンタジー色が強すぎるような願望に静希は理解が追い付かず一瞬思考を停止してしまっていた


「えっと・・・つまり・・・どういうことだ?もしかして悪魔のいる世界に行きたいとかそう言う話か?」


「いや、そうでもないらしい・・・十七年前の、この本の記述で最も荒れている部分、この辺りにある記述があるんだ」


エドが本を手に取りその周辺を指さすと、静希には読むことはできずともその文字がそれまでの記述と違い荒れていることがわかる


明らかに何かの狂気のようなものを感じる、そんな字体だった


「カレンに翻訳してもらったところ・・・ここにはこう書いてあるんだ・・・『見えた・・・私には見えた、あの光が、私達の見たことのない、私の知らない光、未知の何か、世界、点、線で・・・光もう一度、もう一度あの光を・・・あの世界を・・・』・・・とね」


「・・・これは・・・あれか・・・?頭がパーな人の記述とかそういう事じゃないのか?」


静希の率直な意見にエドは首を横に振う


実際こんな内容の記述を見たら頭がおかしくなってしまった人間の記述ではないかと思うのは至極当然だ、明らかに文章になっていない部分も存在するほどに支離滅裂になっている


「この後・・・かなり後からは理論的な話が書かれている、カレン曰く召喚の基礎理論らしい、そしてこうなる前、ここにはある実験のことが書かれているんだ」


実験、恐らくリチャード・ロゥは研究者だったのだろう、研究ノートを残していることも、ある実験に関わっていたという事実も、何もかもがそれを物語っている


「実験って、何の?」


「・・・悪魔の召喚実験だよ」


「悪魔の召喚・・・?十七年も前に?」


「あぁ・・・研究チームと一人のエルフが行った実験らしい・・・詳しい日程も書いてあるから今度調べてみようと思うけど・・・その実験が原因であることは間違いなさそうだね」


リチャードが狂った原因、それはそれで気になるが、彼がそこでいったい何を見たのか


悪魔の召喚の時に違う世界を見たという事は、それは悪魔の住んでいる世界ではないのだろうか


「なぁ、やっぱり悪魔の世界に行きたがってるんじゃないのか?悪魔の召喚の時になにが見えるのか知らないけど・・・」


静希はその場にいる鏡花に視線を向ける、悪魔の召喚を実際に見たことがあるのはこの中では鏡花と陽太、そしてカレンだけだ


実際に見ていないものが何を言おうと実体験には及ばない


「悪いけど光がすごくてほとんど何も見えなかったわ、その光が違う世界なんだとしても、行く気にはならないわね・・・」


鏡花の言葉に陽太はうんうんとうなずいている、少なくともこの二人は召喚の時の光から特別な何かは感じることはできなかったようだ


「細かい話は僕にもわからないけど・・・カレン曰く・・・なんて言えばいいかな・・・隙間を開こうとしているとか言ってたな」


「隙間?なんだかよくわからない話になったな・・・」


隙間を開こうとしているという言葉だと随分とあいまい過ぎて何をしたいのかわからなくなってしまう


一体何が言いたいのか、そして何がしたいのか、静希は理解できずにいた


「エド・・・そこからは私が話す」


「・・・大丈夫かい?あまり無理しない方が」


「少しは落ち着いてきた・・・話すくらいならできる」


エドの制止を断ってカレンは大きく息をつく、どうやら感情を上手く抑制できているようだった


エドよりもカレンの方が実情を深く理解しているようだ、もう少しまともな説明ができると期待したい


「シズキ、召喚において大事なのは点と点を繋げることだ、それこそ転移系統のそれと同じように、召喚陣と召喚する者の場所を繋げる必要がある」


「・・・うん、理解した、続けてくれ」


それが精霊であれ神格であれ悪魔であれ、召喚されるもののところまで道をつなぎそして開く、それこそが召喚の基本である


その際に大地の力をエネルギーとして使うため、準備に時間がかかったりするのが欠点でもある、エルフなどがよく使う技術が召喚である


「この男がやろうとしているのは、点と点を線で結び、その線の上に点を作ろうとしているんだ」


「・・・うん待ってくれ、意味が分からなくなったぞ?」


点と点を線で結び道を開く、ここまでは理解できた、だがその線の上にさらに点を作るという事の意味が分からない


片方の点は自分たちがいる召喚陣の場所であり、もう片方の点は召喚されるものの居場所である、それは理解できているがその間に点を作ったところで意味がないのではないかと思えてしまう


「先程、道を作ると言っただろう?その道そのものを召喚の対象として引っ張ってこようとしているんだ、点と点の間、隙間を開こうとしているという事だ」


カレンがわかりやすいように説明してくれているのだろうが、召喚の基礎理論など理解していない静希にはちんぷんかんぷんだ、何を目的としているのか、そもそもそれを行うことで何をしたいのか、さっぱりわからない


どうやら静希が理解していないことを察してくれたのだろう、エドが自分の財布の中からコインを一枚取り出した


「シズキ、以前君が説明したコインに例えるとわかりやすいよ、表と裏を繋げるのが召喚、そして今回のこれは、コインの内側を持って来ようとしているんだ・・・いやこの場合はコインの表を内側に持って行こうとしていると言ったほうがいいかな」


「・・・・・・・・・・あー・・・・そういう事か」


以前メフィが例えたコインの表と裏の話


静希達が住んでいる世界を表、そして悪魔が住んでいる世界を裏とした場合、その表と裏を繋げる行為が召喚の大まかな概要だ


なるほど、そう考えると先程のカレンの説明の内容も納得だ


コインの内側、つまりはこちらの世界とあちらの世界の狭間ともいうべき場所を引っ張り出そうとしているのだ


いやリチャード自身がその世界に行きたいと考えているなら、こちらの世界をその世界の狭間に持って行こうとしていると言ったほうが正しいだろうか


「ちなみにカレン、召喚って陣に呼び出すだけじゃなくて陣の向こう側に送ることもできるのか?」


「無論だ、そういう召喚陣も存在する・・・まぁ今回のはこちらに召喚するための陣だったが・・・恐らくはまだ実験段階なんだろうな」


実験段階、つまりはまだ満足に行くような段階には至っていないという事だろう


今静希達がやっていることは、言ってしまえばリチャードの実験とやらを邪魔していることに他ならないのだろう


だが一つ疑問がある、それだけの目的があってなぜ悪魔の召喚などしていたのだろうか


誤字報告を十件受けたので二回分投稿


自分は理系なので研究室などの実験を行う時研究ノートなどに実験内容やらいろいろと記入していました、他の人がこれをやっているかはちょっと自信がないです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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