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J/53  作者: 池金啓太
三十話「その仮面の奥底で」

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畏怖の念

そんなことを考えていると静希達の部屋のドアがノックされる


一体誰だろうかと考えるより先に、鏡花が扉を開けるとそこにはエドたちの姿があった


「やぁミスターイガラシとそのチームメイトたち、ちょっとお話でもどうかな?」


「よく来たなミスターパークス、まぁ入れ」


お互いに慣れないことはするものではないなと思い笑いながらとりあえず部屋に招き招かれると、エドたちは小さく息をついた


いい加減この他人行儀な呼び方も終わりにしたいものだと互いに思っているのだろう、静希もエドも煩わしそうにしていた


「それでミスター、こんな夜更けに一体何の用でしょうか?」


「ハハハ、さすがにそろそろその呼び方も飽きてきたんだけどね・・・明日のことについて一応話しておくのと・・・彼の処遇について話しておいた方がいいと思ってね」


エドが視線を向けたのは完全に拘束された状態にある男の方だった


だがエドの言っているのがこの哀れな男ではないのは静希も何とはなしに理解していた


「なるほどな、そういう事らしいぞフンババ、お前もこの場に姿を現した方がいい」


静希の言葉に拘束された男の中からフンババが姿を現した


今までずっとこの男の中に隠れていたのだ、命を握るようなものである、それこそ彼の体の中に魔素を大量に注入してしまえばその命を奪えるのだから


「うわぁ・・・こいつが今回の悪魔か・・・なんかアンバランスだな」


「やめなさい陽太、実は気にしてるかもしれないでしょ」


悪魔相手にも全く物おじせずにそんなことを話している陽太と鏡花をよそに、エドはフンババに目を向ける


「君はどうするつもりなのかな、このままいけばこの男は司法機関に拘束されるだろう、その前に彼を殺すつもりかな?」


悪魔として人間に強制的に使役され続けるという耐えがたい屈辱を与えられていたのだ、ちょっとやそっとで許すつもりなどは無いだろう


少なくとも命をとることはほぼ確定と言ってもいい


後はどのような結末を迎えるかという事だけだ、はっきり言って殺し方に関してはもう被害者であるフンババが望むようにするほかない


「随分と順番待ちをさせられた、可能なら今すぐにでもと言いたいところだがな」


静希によって待たされた分、フンババはこの男が拷問、もとい尋問される様を延々と眺めつづけていた


その苦痛の表情や苦悶の声を聴きながら自ら受けた屈辱を濯ぎ落すかのように


「ふむ、まぁ君が心の底からそれを望むなら僕たちはそれをとやかく言う権利はないね、あと少し待ってくれればそれも叶えられるよ」


「構わん、今までの屈辱を思えば数日程度であればすぐに過ぎるだろう、その後は好きにさせてもらうぞ」


「こっちとしても面倒を起こされるのはごめんだからな、あくまで標的はこいつだけにしろよ?」


分かっていると言いながらフンババは腕を組んで大きく息をつく


人間社会の面倒さを垣間見たのか、それともこれ以上注文を受けるのが嫌なのか静希達の方から目を背けていた


余計な会話はしたくないという意志表示にも見えるその態度に鏡花は若干眉をひそめていた


「ねぇ静希、こいつ一応あんたが助けたのよね?めっちゃ態度悪いんだけど・・・」


「しょうがないだろ、ずっと人間に良いようにこき使われてたんだから、人間嫌いになっててもおかしくないって、こいつだって被害者なんだ、大目に見てやろうぜ」


静希のおかげで人間による圧政から解放されたと言っても、もともと人間のせいでこうなっているのだ、人間嫌いになっても不思議はない


特に今拘束されている男はかなりフンババをこき使っていた可能性がある、苛立ちも募っていて然るべきだろう


多少の態度の悪さは許容してやらねば


「でフンババ、お前こいつを殺し終わったらどうするんだ?適当にうろつくのか?」


「・・・もうこちらはこりごりだ、可能な限り早く元いた場所に戻りたいと思っている」


どうやら本格的に人間社会に嫌気がさしたのか、自分の行いたいことを終えたらさっさと帰るつもりらしい


なんというか自分に正直な悪魔である


「まぁ帰りたいっていうならそれでいいじゃないか、こちらの障害にならないなら僕からは特に何もないよ」


「まぁそれに関しては同意するけど・・・また変な人間に利用されないように気を付けろよ?また敵に回るのは面倒だし」


エドと静希の言葉にフンババは鼻を鳴らして応える


本格的に態度悪いなと思いながらも静希達は話を先に進めることにした


「まぁこいつのこれからは置いておいて、明日どうするかだよ、カレン、予知に何か気になるようなことはあったか?」


自分の話は終わったと判断したのか、フンババは再び仮面の男の体の中に入っていく、そこまで関わりたくないのかと思いながら、静希の言葉にカレンは大きくうなずき、全員に予知のことを話すことにした


「以前本を読んでいる予知に関しては伝えたと思うが、今はその未来がほぼ確定的なものになりつつある、私が見た未来のほとんどで私とエド、そしてシズキの三人が囲んで本を読んでいる光景がよく見える」


どうやら静希達の行動はいい方向に運んでいるようだ、いやいい方向というよりはこちらが運びたかった方向へ向かっているというべきだろうか


その本がどんな情報を秘めているのかはさておき、静希とエドが一緒になって読んでいるという事はそれなりに情報として重要なものである可能性が高い


後はその本を手に入れるだけである


「本に関してはそれでいいけど・・・敵に関してはどうだ?俺たちがその場に行く時、いやアジトに行くとき敵はいたか?」


敵、つまりは契約者のことについてだ


仮拠点の可能性が高いとはいえアジトの一つに行こうとしているのだ、敵性戦力の一つや二つあっても不思議はない


だがカレンは首を横に振る


「今のところは確認できない、一度小規模な戦闘が行われる未来は予知できたが、それ以降全く戦闘らしい未来は見えない、少なくとも契約者はいないと考えていいだろう」


小規模な戦闘が一度だけ、悪魔の契約者がその場にいたらまず間違いなくアジトごと破壊しかねないほどの惨事になるだろう、それがなかったという事はアジトには敵はいないという事になる


突入が明け方という事もあり、ただ単に戦闘にならなかったという可能性も捨てきれないが、すでに放棄されている可能性の方が高いように思えた


明け方に行動するという事を決定してから本を見る未来は変わらない、そして戦闘に関しても小規模なものが展開される可能性が僅かにあるだけでそれ以外は特に危険は少ない


何が鍵になっていたのかは知らないが、静希達は運よく本を確保する未来だけは確実に得ることができる未来を勝ち取ったようだった


「敵もいないならそこまで大仰にする必要はなかったかもね、それでも危ないことには変わりないみたいだけど」


「確かに、戦闘が行われる可能性がゼロになったわけじゃない、小規模戦闘ってことは銃火器を使った戦闘になるってことだろ?それなら余計に連れていくわけにはいかないな」


静希はそう言って明利とアイナ、レイシャ、そしてリットの方を見る


この中で身長が低いこの四人はまず間違いなく連れていけない人間達だ、約一名人間ではないのも混じっているが、戦闘が行われるような場所に連れていくのは危険すぎる


「そう言うわけでミスジョーシマ、うちのアイナとレイシャを少しの間預かっていていただきたいのですが」


「構わんぞ、これも何かの縁だ、それなりに指導を施してやろう」


おぉそれはありがたいなどとエドは喜んでいるが、静希達は冷や汗を流しながら苦虫を噛み潰したような表情をしていた


城島の指導、静希達にとってはあまり良い思い出がないのだ


そもそもにおいて彼女の指導は攻撃的というかなんというか、明らかに普通の指導ではない、怪我をしないように最低限の注意は払ってくれているのだろうが、それ以外の所に注意を向けないのだ


人道に反しているというほど強烈ではないが、適切な指導かと言われると首をかしげる何ともギリギリなラインなのだ


「先生、こいつらは今度留学も控えてるかもなんですから・・・その・・・お手柔らかに・・・」


「何を言う、だからこそしっかり指導しなければいけないんだろうが、喜吉に来る以上半端は許されん」


城島の言葉に静希と鏡花は目を見合わせた後明利を自分たちの元に引き寄せる


「明利、お前だけが頼りだ、アイナとレイシャが潰されないようにしっかり見張っててくれ」


「もし問題があるようなら軍の人間を使ってでも止めなさい、あの二人の未来を潰すような事だけはさせちゃだめよ」


城島が一体どのような指導をするつもりなのかはさておき、アイナとレイシャが潰されるようなことを黙って見過ごすわけにはいかない


それを止められるのは今のところ明利しかいないのだ、ほかにどうしようもない以上明利が何とかするしかないのである


「・・・わ、わかった、頑張るよ!」


「・・・お前たちが私の事をどう思っているかよくわかった、よほどその頭部が要らないと見える」


明利が意気込んでいるさなか、静希と鏡花の頭部を城島の手が思い切り掴み握りしめていく


静希と鏡花の悲鳴が響く中、明利は自分が頑張らなくてはと強く意気込んでいた


「ハハハ、シズキも心配性だなぁ、僕だって彼女たちを鍛えているんだよ?そんなに軟な鍛え方はしていないさ」


「それは・・・そうかもしれないけどあだだだだだだだだだだだ!」


「それとこれとはまた別の意味で危なくていだだだだだだだだ!」


静希と鏡花が苦悶の表情と悲鳴を上げる中、外からドタドタと何やら騒がしい足音がする


一体なんだろうかと確認するよりも早く表を見張っていた二人の隊員がなだれ込んできた


「ミスターイガラシ!悲鳴が聞こえましたが何か問題で・・・も・・・!?」


隊員が見たのは鬼の形相を浮かべながら静希と鏡花を片手で持ち上げながら頭を潰そうと握力をかけている城島の姿だった


人一人持ち上げるその膂力、そして悪魔の契約者である静希が手も足も出ていないという事実を見て隊員たちは恐れおののいていた


実際は能力を使って持ち上げ、ただ単に握力で頭を握りつぶそうとしているだけなのだが、静希の存在に妙に箔がついてしまっている状態では城島の脅威度が一気に上がる結果となってしまった


静希の上には鏡花というボスが、そして鏡花の上には城島というボスがそれぞれいるという認識になった瞬間でもある


「何か用か?今教育指導中だ、急ぎでないならあとにしろ」


「し、失礼しました!」


城島の威圧に二人の隊員は我先にとその場から逃げ出した、ただの教師と思っていた人間が、悪魔の契約者さえも手玉に取る存在だったという事実を認識してしまったのだ、妙なことにならなければいいがと思いながら城島は両手にかける力をさらに強めることにした








「あぁちくしょう・・・まだ頭が痛い・・・」


「こっちもよ・・・あぁもう何でこんな目に」


「お前たちが妙な考えを持っていたようだから修正したまでだ」


静希と鏡花の懸念はまったく間違っていないのではないかと思う暴挙に、アイナとレイシャはエドの後ろで震えていた


鏡花の行動にもかなり震えていた二人だが、城島の行動にはもはや言葉も出せないほどに震えている


こんな人の指導を受けなければいけないのかと、今から少し絶望すら覚えているようだった


「アイナ、レイシャ、もし何かあったら明利を頼るんだぞ、あんなんでも一応俺らと同い年だ、きっと助けてくれる」


「ほ、本当ですか?」


「た、助けてくれますか?」


陽太の言葉に二人は明利の方を見つめる、任された以上は全力を尽くすつもりなのか明利は任せてと二人に堂々と胸を張っていた


明利が助けるという光景は正直想像できなかったが、恐らく何かしら口添えくらいはしてくれるだろう、二人の保護者が別の場所で行動してしまうというのもあり、アイナとレイシャは若干心細そうにしていた


頼る相手が明利というのもその不安を加速させているのだろう、今や彼女の身長はアイナとレイシャよりも低いのだ、いくら年上とはいえ頼りなさは否めない


「ミスターイガラシ・・・ミスミキハラに頼っても大丈夫でしょうか?」


「正直不安です・・・どうにかなりませんか?」


どうやら明利に頼るというのは不安があるのか、二人とも未だに痛みを覚えている静希の方に助言を貰いにやってきた


自信満々な明利を見てさすがにそこまで心配することもないかなと思っていたのだが、ここはこの二人を安心させるのが先決だろう


「安心しろ二人とも、普段は大人しい明利だけどな、実は怒るとものすごく怖いんだ」


「怒ると?」


「怖いんですか?」


明利が本気で怒るところなど静希も見たことがないが、鏡花はそれに近い状況を見たことがある


明利の本気は確かに恐ろしいものがある、自らの切り札を何のためらいもなく人間相手に使用する程度には


「そ、そんなことないよ!怖くないよ?」


「そうそう、あんなこと言ってるけどな、実は俺たちの中で一番えげつないのは明利なんだ、無害そうな顔して結構怖いんだぜ」


明利は否定しているが陽太が静希の言葉に乗ってそんなことを言ったためか、アイナとレイシャは明利のえげつない瞬間を想像したのか僅かに身震いしていた


この班の中で安全なのはもはや陽太しかいないのではないかと思い始める二人、実際その考えは半分当たっており半分外れている


静希はもはや言うまでもない班の中で随一の危険人物だ、その思考も取る手段もはっきり言って危険以外の何物でもない


鏡花は普段は常識人だが指導、あるいは班長として責務を果たそうとするときは鬼になる、説教も攻撃も何もかも、それは常に陽太が受けていることでもあるのだが


明利は普段こそ大人しい小動物的な印象を受けるが、小動物は時として恐ろしい、切り替えがしっかりしているというか、ここぞという時はやるときはやる、そう言う女の子なのだ


そしてこの中で一番安全そうな陽太だが、戦闘時は一番凶暴そうな印象を受ける、外見的にもそして素行的にも


この班で一番安全なのが一体誰か、決めるのには恐らく議論が必要になるだろう


「陽太君酷いよ、私そんな怖くないよ」


「ハッハッハ、まぁそういう事だ、安心しとけって、たぶん先生相手にもタイマン張ってくれるさ」


「ほう・・・そうなのか幹原」


陽太の言葉を真に受けたわけではないが、思えば明利とはほとんど手合わせをしたことがなかったなと城島は思い立ったのか、その視線を明利の方に向ける


蛇に睨まれた蛙というのはこういう状況を言うのだろうか、城島の鋭い視線を向けられたことで明利は若干硬直してしまっていた


主に後方支援が明利の仕事であるために、訓練の際も城島と直接拳を交わすようなことはしてこなかったのだ、それが今この状況においてまさか影響するとは明利も予想できなかった


「あ、あの・・・私はその・・・体術とかはあんまり得意じゃなくて・・・その・・・」


「得手不得手は誰にでもあるものだ、これもいい機会だな、お前もこの二人と一緒に鍛えてやろう、なに大したことはない、いつもの訓練と似たようなものだ」


まさか自分にも城島の魔の手が伸びることになるとは


明利は項垂れながらなぜこうなってしまったのかと強く思っていた


「まぁ・・・あれだ、明利、頑張れ、お前がストッパーだ」


「うぅ・・・私じゃ止められないよ・・・」


いっそのこと人外の中の誰かを明利に預けようかとも思ったのだが、さすがにそこまですることでもないかと静希は項垂れる明利の頭を撫でる


城島の標的になってしまったが最後、教育指導される以外の道はない、明利は基本優秀だから問題はないだろう、たぶん


そんなことを考えながら静希は明利を慰め続けていた













夕食をとり、休息を経て静希達はまだ太陽も登っていない頃、司令室に集まっていた


実際に行動する人間だけが集められたようで、静希達を除けば十数人程度しかいない


二個小隊といったところだろうか、静希達を合わせれば三個小隊の部隊編成になるだろう


「ではこれから作戦を説明する、これから目標となる敵拠点へと移動するが、各小隊にそれぞれ移動要員を手配した、現地までの移動は彼らが担当してくれる」


転移系統、そして収納系統の能力を有していると思われる隊員が数名、それぞれの部隊を移動させるために配置されるようだった


十数人とはいえぞろぞろと動くよりも、少人数で移動して一気に部隊を配置することができたほうが発見もされにくい


やはりというかなんというか、数の力は偉大だ、静希達だけならかなり強引な方法でアジトまで接近しただろう


後方支援の素晴らしさを実感する反面、こういう能力があるとこれから移動するのが面倒になるなと思ってしまうのが難点だ


「それとミスターイガラシ、ミスターパークス、君たちにも一応いくつか装備を用意させてもらった、必要ならば使ってくれ」


用意されていたのは暗視装置一式と防弾チョッキなど、不意打ちにも対応できるようにいくつもの部位で用意してあるようだった


「ありがとう、使わせてもらうよ、必要にならなければいいんだけどな」


そう言いながら静希達はそれぞれ装備を装着していく


何時戦闘が行われてもいいように準備を進め、全員の装備確認が終了したところで部隊の全員が整列する


「ではこれより敵拠点への急襲を決行する、契約者二人の足を引っ張らないように尽くせ、以上」


どうやら契約者が二名いるという事もあって部隊の人間も少々浮き足立っているようだった


特に昼間の戦闘を目の当たりにした人間もいるらしく、チラチラと静希とエドの方に視線を向けている


あれほど大規模な戦闘だったのだ、気にならない方がおかしいのだろう、さすがの静希もこの視線ばかりは仕方がないだろうと割り切っているようだった


部隊の人間が出発準備を始める中、ラルフが静希達の元へと歩み寄ってくる


「ミスターイガラシ、ミスターパークス、こんなことを君たちに頼むのはどうかとは思うが、部下を頼む、万が一の時は気にかけてやってくれ」


一応上司として部下の安否を気にしているのか、ラルフは妙に真剣な声音だった


「相手が悪魔の場合周りを気にしていられるような余裕はないけど・・・まぁ最低限死なせないようにはするさ、ここで吉報を待っていてくれ」


「こちらも全力を尽くすよ、これまでの支援に感謝する」


どうやら移動の準備ができたのか、それぞれ能力者によって移動を開始する


収納系統の能力者によって収納され、転移系統の能力者で一気に移動する、単純だが確実な方法だ


生物を収納できるタイプの収納系統はこういう時に本領を発揮する、特定の場所に小規模な部隊を送り込むときには最適と言ってもいい


「随分と殊勝な心掛けね、死なせないようにだなんて」


「間違ってはいないだろ・・・それができるかどうかはさておいて・・・お前達は自分の身を守ることに専念してくれればいいよ」


鏡花や陽太にそこまで多くの仕事を任せるつもりはない、陽太は屋外で待機、鏡花は屋内に入り開けられない場所など、物理的に閉ざされている場所の開通などどちらかというと裏方の仕事がメインになる


静希達だってこの場にいるのは戦闘の為ではなく情報が欲しいからなのだ、もちろん戦闘が行われる可能性は低いとはいえ油断はできない


部隊以外の人間でこの場にいるのは静希、鏡花、陽太、エド、カレンの五人、悪魔の契約者が二名いるような状態だ、万が一にも負けは無いと思いたい


「あの・・・ミスターイガラシ、ミスターパークス、一つよろしいでしょうか」


「ん?何か?」


静希達と一緒に収納されていた部隊の一人が恐る恐る二人に話しかけてくる

一体何の用だろうかと静希とエドがそちらを向くと、隊員はどういったものかと悩んでいるようだった


「今回の作戦ではお二人はどのように行動されるつもりでしょうか・・・それによって我々も行動を変えなければいけないのですが・・・」


どうやら静希達はラルフの指揮下にないという事を理解しているのだろう、だが勝手に動かれると自分たちも困る、その為どのような行動をとるか、どう動くかを確認しておきたいらしい


突入時に素人がいては邪魔になるという事なのだろうが、相手が悪魔の契約者では自分たちが邪魔になりかねないという事を理解しているあたり、恐らく静希達の戦闘をその目で見ているのだろう


「こっちは一人だけアジトの外側に待機させる、それ以外は内部に侵入、敵対勢力があれば殲滅する、やってほしいことと言えば索敵と牽制くらいだな」


「なるほど・・・了解しました、足を引っ張らないように努力します」


この言葉が皮肉なのかそれとも本心からなのかは静希にも判断できないが、少なくとも近くにいる部隊の人間が静希とエドに畏怖の目を向けているのは確かだ


悪魔の契約者という強大な存在に対してどのように接したらいいのかわからない、そう言う空気を肌で感じていた


自分は随分と危険人物の扱いをされているのだなと、今さらながらに自覚する、もはや静希はただの学生ではないのだ


誤字報告を十件分受けたので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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