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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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深夜の思考

「それだけ?馬鹿を言うな、これだけ手掛かりがあるんだ、あぶり出すのにそう時間はかからないよ」


自信満々に、笑みを浮かべる城島の表情にも声にも一切の迷いはない、確信めいたものを感じる


経験の差か、それともただ単に静希の思考能力が城島に劣っているのか


「まぁ今回の件に関しては私も協力は惜しまない、大船に乗ったつもりでいろ」


「はぁ、でもいいんですか?先生がこんなことして」


「いいんだよ、少しは羽目を外さないとやってられないのが教師ってもんだ」


どうやら静希の想像している教師という生き物と目の前の城島とは全く違うものらしい


特に静希が今まで世話になった教師はこんな目はしていなかった


少なくとも、長い前髪からのぞく獣のような鋭い眼は見たことがなかった


「でもどうするつもりなんですか?結局俺達にできるのは召喚陣を確認して記録するくらいで」


「あぁ、お前たちはそれでいい、そもそも人為的に何の報告もなしに行われたのなら立派な犯罪だ、お前たちの出る幕じゃない」


召喚どころか精霊の存在や悪魔の存在さえも知らなかった静希には初耳だ


だとすれば事はずいぶんと大きくなってしまっている、正直何でこんなことに自分が巻き込まれているのかすらわからなかった


「事態が進めばお前たちの出番はない、そこからは私たちの仕事だ」


その笑みは教師のものではない、そして恐らくは軍人のそれとも違う


寒気がすると同時に頼もしくも思う


そして非常に嫌な予感がするのもまた事実だった


「明日はさっきの指示通りに、少々お前達、いやお前が危険になるかもしれないが、その場合何とか切り抜けろ、ただしメフィストフェレスは呼ぶなよ?」


「わかってます、あいつじゃ村を破壊しかねない」


メフィは遊びならば人間でも相手ができるレベルまで手加減は可能だろう


だが少なくともエルフに対して強く苛立ちを感じている状態でメフィの戦闘を許せば、何が起こるか分からない


なにせ静希はまだメフィの本気を目の当たりにしていないのだ


どれほどの威力があるか分からないようなものを安易に使うわけにはいかない


「先生は明日は別行動ですか?」


「あぁ、邪薙を回収したらすぐに連絡をくれ」


派手に火遊びさせてもらうからなと付け加えて城島は女子の部屋の方に戻っていく


『どうなの?あいつに任せていいの?』


『どうだろうな、でも現状を何とかしてくれるって言ってるんだし、何とかなるんじゃないか?』


あくまで自然に話しかけてくるメフィにそろそろ慣れてきた


完全にプライバシーの欠片もない環境も一週間もたてば慣れるものだ


『メフィ、お前はどう思う?犯人について』


『さあね、エルフの考えることなんてさっぱりよ、根本から考え方が違うんだから』


さすがに悪魔に人間社会のことを聞いたのが間違いだったかとため息をつきかけるが、メフィの言葉はまだ続いた


『でもねシズキ、いいこと教えてあげるわ、いつの時代も、どんな場所でも、権力者の考えは共通するところがあるのよ』


『どういうことだよ』


『ここから先は別料金、そうね、キス一回でどう?』


『遠慮する、そこからは考えてみるよ』


あら残念と楽しそうに笑いながらメフィの声は消えていく


静希は思考する


権力者の考えなんて静希にはわからない


今まで何か権限を持ったことなどないし、誰かを従えたこともなければ誰かが自分より格下と思ったこともない


今までの経験では静希にはこれ以上の思考はできない


では切り口を変えたらどうだろうか


もし仮に静希が誰をも動かすことのできる力、権力を得たら


静希の思うように、望むように、全てが静希の采配次第に


そうなったら、きっと嬉しく思うだろう


今までの苦労が報われるかもしれない


だがそれ以上にむなしいという気持ちも浮かんでくる


困難が訪れないことも、自分が苦労しないというのも少しさみしいと思う


だが彼らは静希ではない


ではその権力者がその権力を失いかけたらどうなるだろう


また何も思うようにいかない、情けない存在になるとしたらどうだろう


なりたくないと考える、何をしても権力にすがりたいと考える


ならば、この村で権力をふるっていた人物とは誰か


第一に挙げられるのは村の長だ


この村をまとめ、あらゆることを指示してきたのだろう、最も怪しい容疑者とも言える


そして他にいるだろうか、人間社会に強い影響力を持つエルフ


いるとするならその人物が第二の容疑者


そしてその考えに賛同する人もいるだろう、そういうエルフたちが結託し今回の事件を起こしたという仮説はすでに出来上がっている


ある程度の筋も通るし、辻褄も合う


では彼らはどのような場面で尻尾を出すだろうか


いやいい方がよくない、どのような場面でなりふり構わなくなるだろうか


彼らは一度悪魔の召喚で失敗し、そして神格の召喚で失敗し、すでに学園を通して委員会にある程度の報告をされてしまっている


悪魔の方は偶然の事故で通せても、神格の方はもはや偶然とも事故とも言えないだろう


今回はエルフのコネを使って委員会の上層部の方にも内密に事を進めているようだが、静希達がこの村の失態を暴けばそれも無に帰す


エルフと人間との関係悪化を防ぐために公表は防ぐだろうが、どちらにせよある程度の処罰は加わる


後がない


その時静希の頭の歯車がカッチリとはまり、動きだす


教えていただいた誤字を訂正しました


穴があったら入りたいです・・・


誤字の報告は有り難い限りですが恥ずかしくて顔から火が出そうでした


これからも誤字脱字たくさんすると思いますが楽しんでいただければ幸いです

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