表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
三十話「その仮面の奥底で」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

925/1032

日本の特徴?

「お前達、そんな雑談をするために職員室にわざわざ来たのか?」


「あ、いえ、こいつらにイーロンを見せておこうと思って留学したら会うことになるし」


こいつらというのはアイナとレイシャの事である、現在はイーロンに巻き付かれてテンションが上がっている、どうやら嫌いなタイプの動物ではないようだった


「ふん・・・まぁいい、この後授業もある、あまりうるさくするな、それと早目にそいつは誰かに預けておけ、ずっと移動しているとそいつも疲れるだろう」


これからまた学校内を案内するにしても外に出るとしても移動することには変わりない


城島の意外な気づかいに静希達は目を丸くしながらレイシャに巻き付いているイーロンを引き剥がそうとした


「じゃあ先生、とりあえずお願いします」


「・・・またか・・・適当に誰かに預けておくぞ」


明利の次に懐かれているのではないかと思えるほど、イーロンは城島がお気に入りだ、そして城島もまんざらでもないのだろう、イーロンに巻き付かれても特に抵抗はしなかった


それどころかイーロンの首の後ろ辺りを軽くなでている、随分と扱いが上手くなったものだと思いながら静希達はとりあえず職員室から離脱することにした


「いやぁ驚いた、まさかあんなものを飼っているとは・・・」


「あいつまだ生後一年経ってないんだけどな、あいつの親は凄いでかくてさ」


静希の説明にエドは感心しながらあることに気付いたのか、演習場や校舎の外を眺めている、何かを探しているようなのだがその何かは見つからないようだった


「シズキ、あの子の親はどこにいるんだい?すごく大きいんだろう?」


「あー・・・その・・・なんて言えばいいのか・・・」


「私達の討伐目標がイーロンの親だったんだよ、それで卵を見つけて生まれたのがあの子」


言いにくそうにしていた静希など気にせず雪奈がそう説明すると、エドは複雑そうな顔をしていた


どんな形であれ静希を敵に回してしまったのだ、となればイーロンの親の末路はすでに決まっているに等しい


「それはまたなんというか・・・皮肉だね・・・」


「俺も最初は処分したほうがいいって言ったんだけどな・・・奇形種を手懐けることができるメリットは大きいだろうってことで・・・」


あの現場では処分、研究所行き、飼うという三つの意見があった、本当に安全を考えるのであれば処分する方がよかったのだろうが、明利に懐いてしまっていたうえに委員会の方にも話が伝わってしまったのではもはやどうしようもない


幸いにして学校のほとんどが協力的であるために今のところ問題は起きていない


問題はイーロンが大きくなった時だ、きっと近隣住民や、まったく関係のない団体などから文句を言われることになるのだろう


それほどの大きさになるのが一体いつのことになるのかはわからないが、今はこのサイズのままでいてほしいと願うばかりである


「ちなみにあの子の姉弟とかは?爬虫類の奇形種なら・・・」


「あぁ、一応他の学校にも散らばってるよ、どんな外見かは知らないけどな」


研究所で生まれたイーロンの姉弟たちはそれぞれの専門学校に引き取られ、何匹かは研究所で暮らすことになっているようだった


生まれてすぐに人間に慣れれば危害を加えることは少ないかもしれないし、何よりしっかり飼育することで牙を抜くというのもある


動物園などで暮らしている生き物たちが野性を忘れるのと同じだ、基本怠惰な生活を送れば当然のように攻撃などの能力は極端に落ちる


野生に生きているからこそ身につく生存本能が薄れることで、奇形種もただの動物以下にできるのだ


「日本は本当にクレイジーな国だ・・・まさか完全奇形の子供を学校で飼育しているだなんて・・・」


「まぁ生まれたばっかならあまり関係ないって、それに人間に慣れてればそれなりに安全だよたぶん」


絶対と言い切れないところが不安の種になっているのだが、その不安は別に静希が背負い込むことはないのだ、面倒はよそに押し付ければいいだけである


「エドは完全奇形にあったことがあるのか?例えば戦ったこととか」


「一応学生時代に一回だけね・・・大きな亀だったよ・・・そりゃもう大きかった、背中に甲羅があるんだけどさ、すごくたくさん棘があってすごく危なかった・・・」


ひっくり返したらすごく暴れてねとエドは遠い目をしながらその時のことを思い出している


何でも学生時代、能力を持つ学生の中でいくつかのチームが合同で作戦に参加していたらしい、エドはそれを記録、及び補助するために同行していたのだとか


エドの能力から言って攪乱程度しか仕事はできなかったらしいのだが、巨大なカメという事もありひっくり返してしまえばこっちのものだと高を括ってその通りにしてみたところ、亀の逆鱗に触れたのか大暴れ


能力を発動するわ辺りのものを破壊し始めるわで大変なことになったらしい

日本でもイギリスでも、動物が暴れると大変なことになるのに違いはないらしい


そして日本のクレイジー度合いが随分とエドの中で上がっているようだった

実際に住んでいる静希達からすればそんなことはないのだが、外の国から見ていると明らかにおかしいことをしているらしい


確かに完全奇形を飼育するという事に関してはおかしいことをしているというのはわかるが、そこまで強調するような事だろうかと思えてならない


もはやクレイジーというのは一種の褒め言葉なんじゃないかと思い始める反面、自分の住む国は本当に大丈夫だろうかと心配になる静希だった











学校の案内もほどほどに、静希達はエドが一番気になっていたであろう源蔵の下に向かうことにした


本物の刃物を扱っていることもあり随分とテンションが上がっているようで妙にそわそわしていた


そしてそれはエドだけではなく、外国人全員だった、実際にこういう場を見ることができるというのはかなり貴重な経験なのだろう


静希が源蔵の営む大峡刃物店にやってくると、外人グループは目を輝かせていた


もう店の前からすでにいろんな刃物が見えているのだ、無理もないかもしれない


「源爺!いる?」


「あれ、静希君、それに雪奈ちゃんも、どうしたの・・・って妙に多いね」


静希と雪奈を先頭にやってきた一団を迎えてくれたのは源蔵の息子の武彦だった、珍しい大人数の客に何やら怪訝な表情をしている


なにせ昔から知っている少年少女が外人の客を連れて来たのだ、この反応も無理からぬものである


「武彦さん、源爺は今」


「奥で仕事してるよ・・・この人達なんだい?旅行者?」


「あー・・・いや父の仕事の関係の人でして、まぁ結構お世話になってるんですけど・・・奥行ってていいですか?」


それは構わないけどと武彦は若干不安そうにしていたが、静希達が一緒にいるという事で問題ないと判断したのか、一団を奥の仕事場へと通してくれる


表の店においてあるのは一般的な刃物ばかり、武器などはすべて仕事場兼保管庫にしまわれている、過去雪奈が使った大剣もここにしまわれているのだ


「ここが雪奈さんたちの刀を作ったところだったのね・・・初めて来たかも・・・」


「そっか、鏡花ちゃんは初めてなんだ、私はそれなりに来てるけど・・・爺ちゃん元気かね」


奥の仕事場にやってくると中からは金属を叩き付ける音が聞こえてくる、今はまだ仕事をしているようだった、せっかく来たのだからいろいろと見せてやりたいものがあるのだがと思い扉を小さく開けると中から熱風が吹き荒れる


奥ではどうやら何かの刃物を作っていたのだろう、源蔵が真っ赤になった金属を特製のハサミのようなもので掴んで様子を見ていた


「源爺、今平気か?」


「あぁ?なんだ静坊、それに雪嬢ちゃん・・・ってなんだなんだぞろぞろと・・・」


静希と雪奈だけではなく他にもずいぶんたくさんいるという事に気付いたのか、源蔵は眉間にしわを寄せる


一旦仕事を止め静希を迎えると、源蔵は陽太の方を睨む


「おう、火種の小僧もいたか、今から手伝っていくか?」


「ふふん、俺はもはや火種だった頃とは違うんだよ、試してみるか?」


久しぶりに陽太が来たことに喜んでいるのか、源蔵は鼻で笑いながら鏡花の方を見る


「こっちは見ん顔だな・・・」


「あぁ、こいつ去年こっちに越してきた清水鏡花、俺らの班の班長をやってるんだ」


「は、初めまして、清水鏡花です」


鏡花が頭を下げるとふんと鼻を鳴らした後で小さくため息をつく


「こいつらを引き連れるとなると苦労もあるだろうが、まぁ頑張ることだ」


源蔵が困ったような表情を浮かべる中、いつの間にかその場にいなくなっていた雪奈は仕事場を歩き回っていた


「爺ちゃん!これ何!?また新しいの作ったの?」


「このクソガキ・・・勝手に触るなと何度言わせる!」


ある程度の刃渡りのある刃物であれば能力を発動することでどんな性能を持っているか瞬時にわかる雪奈だ、昔からこのように刃物に触れては源蔵に怒られていたのである


そして高校三年生になった今もそれは変わらない、なんというか成長のない姉貴分である


「す、すごい!こんなにたくさん武器がある!ファンタスティックだね!」


「あー・・・まぁ使うのはほとんど雪姉だけどな」


源蔵が雪奈の首根っこを掴んで静希達の下に引きずってくると、源蔵はようやくエドたちに目を向ける


外人がこんな所に来るのは初めてなのだろう、目を丸くして観察していた


「静坊、この外人さんたちは?家族連れか?」


「いやその・・・ちょっといろいろ都合があるんだけど・・・」


エドとカレン、そしてアイナとレイシャにリット、そしてセラがいる場面では確かに家族と思われても不思議はないのだが実際血縁関係があるのは一人もいない


日本人は外国の人間の顔を見分けられないというのもあるのだが、どう説明したらいいのか困ってしまっていた


「とりあえず右から、父さんの仕事関係の人エドモンド・パークス、同じくカレン・アイギス、その弟子アイナ、レイシャ・・・んでうちに遊びに来てる子供、セラ・レーヴェだ」


「あー・・・まぁなんだ、いろいろってことだな」


どうやら源蔵は最初から覚えるつもりがないのか適当に話を聞き流している感がある


自分がわざわざ関わることでもないと半ば理解しているのだろう、長年の勘というものだろうか、関わらない方がいい人間というのは理解しているようだった


「で?こんなところに何故連れて来た?観光か?」


「まぁそれもあるんだけど・・・その、武器を色々見せておきたくてな」


静希が視線を向けると保管してある武器群を見てエドたちは目を輝かせているのがわかる、それを見て源蔵は状況を理解したのかなるほどなと呆れながらつぶやく


外人のセンスはよくわからない、それを彼自身理解しているのだろう、それ以上言及することはなかった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ