餌食と捕食者
そんなことを話していると陽太の腹の虫が豪快に悲鳴を上げた
「さすがに腹減ったな、今何時だよ」
「二十時ちょい過ぎだな、腹が減るのも仕方ないか」
全員昼食以来何も口にしていない、しかも荷物を持って山を歩いてもいるのだ、空腹にならない方がおかしいだろう
「じゃあご飯にしましょう、リビングに用意してあります」
「よし、じゃあ皆で行くか、待ってるだろうし」
静希の言葉に全員が客間からリビングへと向かう
リビングではちょうど食事の準備が進められているところだった
そしてソファには城島と雪奈が座り、熊田は床に胡坐をかいて楽にしていた
「おうお前ら遅かったな、そろそろ食事だそうだ」
「あぁ、有り難いです、もうお腹ぺこぺこで」
「鏡花がお腹ぺこぺこって言うと違和感あるな」
「なによ、なんか文句あるっての?」
「お前らそう噛みつきあうな」
「きっとお腹がすいてカリカリしてるんだよ」
明利のフォローもあるが、陽太と鏡花はいつもこんな感じなのだ、今更という感じもある
「そっちはどうでしたか?」
静希は城島と雪奈の座るソファに寄りかかり誰にも聞こえないように小声で話しかける
「さすがに娘のことが大切らしくてな、いい親御さんだ、聞いてて砂糖を吐きそうになったよ」
「何ですかそれ・・・そうじゃなくて」
途中までいいかけて城島は静希を睨んだ
それ以上何も言うなという無言の圧力
今ここで話すのはさすがにまずいということだろうか
そう判断して、ソファから離れて静希は床に腰を下ろす
するとそれを見計らって風香が近くに座ってきた
どうやら相当懐かれたらしいようで近くにいるだけでなく静希に身体を預けている
顔を見れないのが非常に残念だと思う反面、見えない方が彼女にとってはいいのだろうという想いもある
何とも微妙な心持だ
「あら静希、女の子が近くにいて嬉しそうじゃない」
「まったくうらやましいなぁ、代わってくれよ静希」
普段いがみ合っているくせにこういう時だけ妙に結託する、陽太も鏡花も、やはり仲がいいのではないか
「からかうなよ、代わってほしいならほれ」
「え?」
静希は風香を抱き上げて鏡花に渡す
「やっぱ小さくて可愛いわね~、ほら雪奈さん、可愛いですよ」
「いいなぁ、私も妹がほしかった・・・小さな妹がほしかった!」
「いやあぁあぁ!」
鏡花と雪奈に捕獲されてしまった風香のご冥福を祈りながら静希はそれを眺めている優花に気付く
表情は分からないが、少し離れたところからその様子を眺めているようだった
「よし、二人とももう一人追加だ、可愛くて小さい女の子だぞ」
「え!?あの!?えぇ!?」
優花は突然自分に火の粉が飛んできたことに驚きを隠せず、静希の腕の中でじたばたするが、少女の力で静希の拘束を抜け出すことはできなかった
「ほうほう、これはまた風香ちゃんとは違う抱き心地・・・!これもまたいいね!」
「あぁ、私も妹がほしかったわ・・・!」
「いやあぁあぁ!」
姉妹そろって鏡花と雪奈の慰み者になり静希は何も言わずに手を合わせる
「楽しそうだね」
「明利も混ざるか?」
「わ、私はいいよ」
普段から雪奈にはいじられているのだからこういうところではさすがにやられたくないのか、明利はうつむく
「とりあえず今日はゆっくりしよう、もうできることはないからな」
「うん、そうだね」
「ということで」
「え?えぇぇ!?」
明利を軽く持ち上げて高々と掲げる
「さあ二人とも、メインディッシュのお出ましだぞ」
「お、待ってたよ明ちゃん!」
「私はこの二人の方が抱き心地良いわぁ」
「「離して下さいぃぃぃぃ!」」
すでに女子陣はカオスになりつつある
だがその様子を男子陣はニヤニヤと眺めていた
現在書きためている方が四話が完結し五話を書いています
それにしても丸々三カ月更新してこれほどしかストーリーが進まないとは・・・
更新速度を上げることを視野に入れる必要があるかもわかりません
これからもお楽しみいただければ幸いです




