情報収集と処理
「それでは何か用があれば呼んでくれ、明日は村を案内しよう」
「あぁ、ありがとう石動」
石動と別れ、静希達は東雲家に向かうことにする
「ただ今戻りました」
「あ、みなさん、おかえりなさい」
東雲家に入って一番に迎えに来たのは風香だった
そして遅れて優花もやってくる
「ただいま、ご両親は?」
「父さんと母さんはリビングにいます」
「私達はここにいます」
「そうか、よし、それじゃ一緒に部屋に行こうか」
「はい」
静希は城島に目配せをしてさりげなく二年生と自分達を別行動させ、静希達一年生は東雲姉妹とともに用意された客室へと向かった
「そういえば五十嵐さん、今回のお仕事ってなんだったんですか?」
「あぁ、村長さんにちょっとお願いされてね、内容は内緒だ」
ええーと不満そうな声を出す風香とは対照的に優花はその様子を見てほほ笑むだけだった
どうやら双子といえど性格まで似るというわけではないようだ
「そういえば風香ちゃんと優花ちゃんは双子なんだよね?能力とかも一緒なの?」
「いいえ、私は圧縮した空気の発現」
「そして私は地面の形状変換」
エルフの一族は一族全てが能力者という稀有な存在だ、その中で双子でも能力が変わるのだなとしみじみと感じながら静希はレポートを書きだす
「そういえば風香は精霊をつけてもらったんだろ?どうやってつけたんだ?」
「えと、前にやったところは事故で使えなくなっているので、予備のところで召喚してもらいました」
「予備?」
「はい、四か所ある召喚陣のうち、二つ主に使う場所があってもう二つは予備なんです」
四か所の召喚陣、そのうちのひとつで悪魔の召喚は行われたようだ
「風香ちゃんの精霊ってどんな感じなの?」
「私の精霊は風の精霊で、鳥みたいな外見をしています」
見てみたいとうらやましそうにしながら鏡花は風香を抱きしめる
「優花は?もう精霊をつけてもらったのか?」
「はい、五日ほど前に、ですがどうやら私の時も事故があったようで、先日予備の場所で召喚してもらいました」
「どんな精霊なんだ?」
「土の精霊で、外見は・・・大きな蛇みたいな感じです」
おぉぉと全員が感心する中で静希は聞きながらも頭の中で情報を整理していた
四つの召喚陣のある場所、そのうちの二か所で召喚が行われ、そして二人は意識を喪失、後日予備の場所にて正式に精霊の召喚に成功
そして二人の召喚が最初に行われた場所、一か所か二か所は分からないが、恐らくその場所で悪魔メフィストフェレスと神格邪薙原山尊の召喚が行われたとみて間違いないだろう
後はその場所の確認と、石動に召喚陣の変化を見てもらい、それがなにを呼び出すための陣なのか知る必要がある
それは画像に残しておいた方がいいだろう、交渉の材料にもなりえる
『メフィ、お前召喚の陣見てそれが何を召喚するためのものかわかるか?』
『特定の存在召喚までは分からないけど、どの種類の存在を召喚するものくらいならわかるわ』
十分だと思いながら静希はどうやってその場所に侵入するかを思案していた
以前石動に聞いた話では召喚の陣は龍脈とリンクさせて発動する、そしてそれを描くのにも消すのにも時間がかかるという
メフィが召喚された二週間前と違い邪薙が召喚されたのは五日前、消されている可能性は低い
何とかしてその証拠だけはつかみたい
「その召喚の陣って見ることできるかな、せっかくだから一度見ておきたいんだけど」
「えと、予備の場所なら大丈夫だと、でも事故が起こった場所は危険だから入っちゃいけないって」
さすがによそ者に見せるほどガードは甘くないようだ
何とかして侵入する方法を考えなくてはならないだろう
「そういえばこの村ってどうやって生計立ててるの?特に畑とかがあるわけでもないのに・・・」
鏡花の質問はもっともだ
山の中にある村には畑などの生産物資があるわけでも何か特殊な工場があるわけでもないのに、生活ラインは確保されているようだ
外で輝いている球体が電気なのかは疑問だが、先ほど見たところによるとガスも通っているようだし、ここにいるのはそれなりに年をとった者たちばかり
唯一若い人は東雲夫妻くらいしか見ていない
「皆の家族が働きに出ていて、中にはなにかのとっきょ?をとった人もいるから、それで生活しているって聞いたことあります」
「なるほど、エルフもちゃんと働いている人がいるんだな」
働いていなければ何をしていると思ったのか、霞でも食んで生きているとでも思ったのだろうか
陽太の素っ頓狂な発言はさておき、明利は首をかしげる
「でも二人のご両親はここにいるよね?お仕事は?」
「あ・・・それは・・・」
「私が行方不明になってしまったのと・・・精霊召喚の事故が原因で・・・」
「ひょっとして、仕事休んで様子を見に来てくれてるの?」
二人は無言でうなずく
なるほど、両親もエルフといえど人の親
人並みに自分の子供の心配はするらしい




