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J/53  作者: 池金啓太
二十九話「跡形もなく残る痕跡」

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決断とその結果

カールの返答を待っていると静希の携帯が急に震えだす、相手はテオドールのようだった


静希は失礼といった後でオルビアの簡易翻訳を切り通話を開始する


「もしもし、どうするか決まったか?」


『あぁ・・・アランが了承した、明日の対策会議にお前もついてきてもらう、今日中に対策本部のあるオーストリアの首都に向かえ』


「あぁ?今日中?随分と性急だな」


今日中に移動しろと言われ、静希は若干戸惑いながらも内心ガッツポーズをしていた


相手の決定を急がせるという意味では別件の仕事ができたという事は非常にありがたい、相手をあせらせ、正常な思考をできなくする、詐欺師がよく使う手だ


『それだけあっちもこっちもてんやわんやという事だ、とにかく伝えたぞ、空港に行ったら使いをよこしてやる』


「了解、空港に着いたら連絡する・・・ちなみにお姫様も来るのか?」


『当たり前だ、お守りは任せたぞ』


テオドールはそのまま通話を切る、お姫様であるセラも来る、その事実だけで静希はちょっと嫌気がさしていたが、この程度であれば問題ない、まだ許容範囲だ


通話を切ると静希は小さくため息を吐いた後でカールに向き合う


「少尉、申し訳ないが別件が入った、今日中にオーストリアの首都に行かなければいけない」


「・・・なに?どういうことだ?君の任務はまだ・・・」


「今回のこと繋がりだ、どうやら上層部の対策会議に出席しなければいけないらしい、こっちで活動できるのはあと少しだけだ」


先程まではまだ考えられるだけの余裕があったかもしれないが、肝心の静希がこの場からいなくなるという事を考えると本当に増援を待つ以外に方法がなくなってしまう


仮にすでに内側に悪魔の契約者が潜んでいた場合、静希がその場にいないと対応ができない、なのに軍だけで対応しなくてはいけないなどとほぼ自殺行為だ


内部の調査は静希がいてこそ成り立つ、さらに言えば情報を奪取した人間を探すには早い方がいい、もしかしたらこの場から逃げられることもあり得るのだ


「だ、だが依頼はまだ完遂しては・・・」


「上の判断なんだから仕方がないだろう、俺の方にいち早く伝令が来たがたぶんそっちにも話が行くはずだ」


テオドールによって先回りの形で話がこちらにとおったが、恐らくオーストリアという国を通じてカールたちにも遅かれ早かれ話が通ることになるだろう


自分ではどうしようもない上の決定、現場の人間としてこれ以上ない言い訳の材料だ


これを出されては軍人であるカールはそれ以上追及できない、今追及したところで無意味であることを彼自身理解しているのだろう


思考が頭の中でかき回されていく中、カールの額にわずかに冷や汗が滲む

いい具合に混乱してきたなと静希は内心ほくそ笑む


「少尉、決断するなら早くしてくれ、研究者の護衛をしろというなら協力は惜しまない、仮に契約者が内側にいたなら対応は俺がやる・・・少なくとも撃退くらいはして見せる」


ここにきて友好的かつ協力的な姿勢を見せた静希にカールは揺れていた


今ここで決断するべきだ、静希に協力を仰ぐにしろ、現状維持するにしろ

静希が言っているのはあくまで可能性の話だ、静希自身も確証があるとは言っていない、だが放置するにはあまりに危険な可能性なのだ


そうこうしていると通信手の部下の一人がカールの下に駆け寄り耳打ちをする


どうやら静希の案件が伝わったのだろう、苦虫を噛み潰したような表情をしているカールに静希はとりあえず追い打ちをかけることにした


「手伝いが必要ならばこの場に残るが、必要ではないのであれば早めに行動したい、今ここで決断してくれると助かる」


すでに時間は十四時を回ろうというところだ、もし今から準備してさらに索敵を行うとなると終了は早く見積もっても十七時、もしくはそれより遅くなる可能性もある


となるともう悩んでいる時間は無い、それはカール自身理解していた


「・・・ミスターイガラシ、君のデッドラインはどのくらいだ?」


「ん・・・今日中に首都近くの空港に着けばいい、ここから向こうまでの移動手段に転移能力者を確保してくれるなら・・・日が落ちるまでに終わらせてくれれば構わない」


日が落ちるまで、つまりは今日の行動可能限界まで動いてくれても問題ないという事である


それならば問題はないかもしれないとカールは口元に手を当てる、いい具合に焦り始めてきた、今こうして悩んでいる間にも時間は刻々と進み続けている


ここで決断するか否か、部隊を任されるものとしての器量が試されているのだ


限られた時間の中で何を優先するか、部隊の仲間か、それとも任務か


カールが求められているのはそれに近い、少しでも危険を排斥したいのであれば静希がいる今以外に防衛ラインの内側を調べる好機はない


逆にこの歪みの付近及び研究者の護衛を全うするのであればこのままの状態を維持するべきだ、応援を呼んで研究者の護衛を確かなものにしたうえで細かく調査をすれば仮に契約者が出たとしても多勢に無勢、研究者を守りきることくらいはできるだろう、無論犠牲は出るだろうが


どうする


その言葉が頭の中でぐるぐると回る中、カールは目の前にいる少年、静希に目を向ける


こちらの判断をじっと待っている彼に研究者たちを任せるべきか、もし何かあったとしてもすぐに対応してくれるという


信用するべきなのか、それとも


カールは悩みに悩んだ後、結論をだした


「・・・わかった、君には研究者の護衛を一時的に頼みたい、我々は索敵の準備に入る、転移能力者と連絡係をこの場に残しておく、いざという時には頼む」


「了解した少尉・・・研究者を一つの場所に集めるのも頼むぞ」


頷いた後、カールは急いで周囲の部下に指示を出し始めた、彼は任務と安全を秤にかけて安全をとったのだ


保守的な考えと言われると少々嫌な言い方かもしれないが、彼は軍人として任務を果たすことよりも、指揮官として部下を守ることにしたのだ


良い指揮官だ、静希は素直にそう思った


いざという時に仲間を切り捨てるような指揮官は、優秀ではあるだろうが従いたい上官ではない、彼はどちらかというと人徳によって部隊を動かすタイプなのだろう


周りの部下が何の反論もなく従っているのがいい証拠である


優秀ではないかもしれないが、彼は人間味あふれるいい上司となるだろう、静希がそんな評価を下しているとは知らず、カールは指示を出し続けていた


「ここからが問題だね、本当に契約者がいるのかい?」


「それを確かめるんですよ・・・もしいたら・・・たぶんお二人は置いてけぼりにするかもしれません」


「悪魔との戦闘になるんじゃ私たちは足手まといだもんね」


契約者が静希の予想通りこの付近に潜伏していた場合、まず間違いなく静希が戦うことになるだろう


相手に戦闘する意思があるかどうかも定かではないが、少なくとも追い払うくらいのことはしなくてはならない


今回のことが起こる寸前に現れ、そして今もこの場にいるかもしれない契約者、そんな怪しい存在が今回の件と無関係とは思えない


もしいるのなら捕えたいところではあるが、相手も悪魔を使役するかもしれないという事を鑑みると追い払うのがせいぜいだろう


欲を言えば、確認できないでほしいというのが本音だ、内部に誰もいないのであればそれに越したことはない


「もし何者かがいた場合はお二人には研究者の護衛をお願いします、お二人を巻き込まないように戦うのは難しいので」


「わかった、俺も死にたくないからね、そうさせてもらうよ」


「できることはするわ、もし何かあれば連絡する」


大野と小岩も人外に関わる内容が増えたおかげか、自分にできることとできないことをしっかりと把握して動いてくれている


これで無謀にも突貫するようなことがあったら面倒極まりないのだが、そのあたりは経験豊富な大人だ、自分の分はわきまえているというところだろうか


部隊の人間の呼びかけによって研究者が再び仮設テント周辺に集まりつつある、先程の攻撃の時に一カ所に集まっていたためにまだあまり散らばっていなかったのが幸いしたか、これなら早めに一カ所に集めることができそうだった


後は部隊の再編成と索敵の開始だ


索敵は二時間ほどを予定しているらしい、この調子なら日が暮れる前にはギリギリ終わるかもしれない


この歪みのせいで人外の気配を感じ取れないというのが一番厄介だった、これさえなければ静希が自分で動いて索敵を行うというのに


町一つを覆い込むほど巨大な歪み、これを起こした犯人がどんな人間で何を目的としていたのかは静希も分からない


だがこれが一体何を表すのか、その程度はわかる


はっきり言って大量殺戮よりも性質が悪い、関係無関係にかかわらずその場にいただけで巻き込まれるのだ


まだ悪意を持って爆弾を作動させた方がましだ、なにせ爆弾ならまだ対策が練れるし何より爆発し終わった後もいろいろと手を打てる


だがこれはあまりにもどうしようもない、千年近く残るかもしれないというこの傷跡を前にいったいどうすればいいのか


『メフィ、邪薙、オルビア、フィア、もしもの時は頼んだぞ』


自分が引き連れる人外たちに檄を飛ばしながら静希は集中を高めていく


『シズキ・・・私は何もしなくてよいのですか?』


トランプの中からウンディーネの声が聞こえてくる、先程名を呼ばれなかったためか、この後どうすればいいのか困惑しているようだった


『お前は力がかなり弱ってるんだろ?無理して頑張る必要はない、今回は俺たちに任せておいてくれればいいよ』


『・・・ですがこれは私の問題でもあるのです・・・何もしないでというのは・・・』


メフィの知り合いという事もあってもう少し破天荒な性格かと思っていたのだが、どうやら随分と礼を重んじるタイプのようだ、どちらかというと邪薙やオルビアに近い性格と言えるだろう


確かに四大精霊の一角が力を貸してくれるというのは非常に心強いところはある、だがそれは彼女が万全であった場合の話だ


八割近い力を失った彼女は恐らく普通の精霊と同じかそれ以下の力しか持ち合わせていないだろう、それだけの力を回復させるのにはまた長い時間がかかることがうかがえる


今無理をしてまた危険な状態になっても困る、さすがの静希も関わってしまった以上、そしてメフィに頼まれた以上、見て見ぬふりはできない


『なら余計な手間はかけさせないでくれ、勝手に動かれるとそっちの方が困る・・・もし力を貸してもらうようなら、その時にまた言うよ』


『・・・わかりました』


ウンディーネは不承不承ではあるが納得してくれた、彼女自身今の自分の状態を理解しているのだろう、物分かりが良くてありがたい限りである


静希のいる仮設テント付近に研究者が集められてから軍の人間は一斉に動き出していた


静希の付近に連絡要員一人と転移能力者を一人配置し、それ以外の人間はすべて防衛ラインの範囲内を徹底的に調査しているようだった


これで何も見つからなければ有難いのだが、どうやらそう簡単にはいかないようだった


連絡要員には定期的に無線連絡が入り、状況を知らせてくるのだがその度に緊張感が走る


話によるとどうやら近くに何者かがいた痕跡は確かにあるらしい


それがテオドールの部下のものでないことを祈るばかりだが、自分の考えが的中してしまい静希の胃が痛くなり始めるのも時間の問題だった


索敵を本格的に始めてから一時間ほどが経過した頃、その連絡はやってきた


「ミスターイガラシ、索敵中の部隊が不審人物を発見したそうです」


「そうか、そいつは今どこに?」


「現在位置から北に行ったところを逃走中、悪魔を出すような素振りはないそうですが」


まさか本当に不審者がいるとは思っていなかったために静希は内心頭を抱えてしまった


ここで動くべきか、それともまだ不審者がいることを想定してこの場に留まるべきか


どちらにしろ軍で対応できるのであればそれに越したことはない


「その不審者の特徴は?」


「・・・えー・・・仮面をつけているそうです、恐らくエルフではないかと」


エルフ、仮面をつけている、以前ウンディーネが言っていた不審者と同一人物だろうか


仮にエルフだったとしても人数差で押しつぶせるかもしれないが、ここは少し強気の姿勢でいたほうがいいかもしれない


「その場所に行けるか?」


「問題ありません、ですがよろしいのですか?」


「さっさとそいつを片付けてまた戻ってくればいいだけの話だ、大野さん、小岩さん、この場はお任せします」


静希の言葉に二人は了解と軽く答えると周囲の警戒を始めた


幸いにして後ろは黒い歪みがあるおかげで背後を取られるという心配がない、そう言う意味ではこの歪みは非常に有効に働いていると言っていいだろう


「移動する、少尉にもそのように伝えろ、近くの部隊と連携してその仮面の不審者を捕縛、あるいは撃退する」


「了解しました」


静希の指示に従って部隊の転移能力者は能力を発動した


どうやら彼の能力は距離に制限はあるが効果範囲内であればどこにでも転移できるタイプの能力であるらしい


何度も転移を繰り返していると静希の耳に銃声が聞こえ始める


「もう発砲してるのか、相手の方が先か?」


「この発砲音は我々が使用している銃のものです、恐らくは警告の後に射撃したのだと思われます」


すでに攻撃を開始している、周囲が森林地帯であるためにこんな場所で相手に射撃をしても効果は薄いのではないかと思える


木の密度はそこまで高くはないが視認性はあまり良くない、しっかりとその目で確認するにはギリギリまで近づくか索敵によって確認するしかないだろう


「・・・木の上に転移してギリギリまで近づいてくれ、間違っても落ちてくれるなよ?」


「了解しました、掴まっていてください」


静希の指示通りに木の上に転移し、木の葉などを隠れ蓑に何度も転移を繰り返し一気に接近していくと、静希の目にもその人物を一瞬ではあるが捉えることができた


一瞬すぎてその体躯などは確認しきれなかったが、確かに仮面をつけていたように見える


後方から部隊の人間が追っているところを見るとどうやらあの歪みから遠ざかろうとしているようだった


悪魔も出さず、逃げようとしているのであれば自分が手を出すことはないかもしれない、だができることはするべきだろう


「もう少し近づいてから上空に転移してくれ、そこから狙い撃つ」


「了解です・・・高度維持はどうしますか?」


「俺がやる、何もしなくていい」


指示通り近づいてから上空に転移すると、邪薙の能力により作り出された障壁に乗り、静希は目を凝らす


『メフィ、見えてるな?』


『えぇしっかりと・・・直撃させる?』


『いや、足場を狙って動きを止めるだけでいい、後は部隊の人間が何とかするだろう』


この近くにはすでに数えられる程度ではあるが部隊が集結し始めている

自分はあくまでフォローだけだ、手柄は軍に与えても問題はない


『狙い撃つぞ、しっかり頼むぞ』


『了解よ、任せておきなさい』


トランプを体から出して右腕に集中させ目隠し代わりにすると、静希の右腕からメフィの腕だけが外に出てくる、まるで銃のように人差し指と親指を伸ばした射撃体勢に静希は苦笑してしまう


指先に光弾が作り出されるのを確認すると、静希はトランプを動かしてさらに目隠しの効果を高くする


近くに転移能力者がいるのだ、余計なものを見せるわけにはいかない


勢いよく放たれた光弾はまっすぐに不審者の進行方向の足場へと直撃する


丁度足を踏み出そうとしたところに光弾が直撃し、体勢を崩すことでその動きを完全に止めて見せた


ナイスショット、静希が内心そうつぶやくとメフィは嬉しそうに腕を静希の体の中に収めて行った


足止めされ体勢を崩したすきに周囲の部隊は一気に不審者を包囲していた


これが静希の援護であるかどうかはわかっていないようだったが、相手の不利な状況を利用するという考えは染みついているらしい


静希は転移能力者に指示して何とか目標の見えやすい位置に移動すると、ようやくその全身を確かめることができた


黒い外套に身を包み仮面をつけた、恐らく男性、体勢を崩しているためにその身長などはわからなかったが、身体的特徴などよりも静希はその仮面に目を引かれた


それは静希が何度も目にしてきたものだった、正確に言えば、実際に見るのはこれが初めてだが、その紋様は忘れようもない、ずっと静希が追ってきたものだった


「・・・あぁそういう事か・・・」


「・・・ミスターイガラシ?」


横にいた転移能力者は静希の変化に気付くことができた、先程まではただ相手の動きを止めるだけに専念していたその表情が、強い殺意と怒気を含めているのだ


横にいるだけで肌を刺すようなその殺気を受け、僅かにたじろぐ中、静希は視線を移して小さくつぶやく


「周辺の全部隊に通達してくれ、あの侵入者は絶対にとらえる、俺も前線に出る、後退しながら包囲網を形成してくれと」


それだけを言い残して静希はトランプの中からフィアを取り出し能力を発動させる


もはや隠しているような暇はない、あそこにいる仮面の人物を確実にとらえなければならない


唐突に現れた巨大な獣に転移能力者は怯えているようだったがそんな事すら気にする余裕もなく、静希は一気に仮面の人物の前へと躍り出る


目の前に出るとわかる、しっかりとみることができる、その仮面の紋様を

それは、ずっと前から静希が追ってきた『リチャード・ロゥ』の仮面だ


巨大な獣にまたがった静希が唐突に現れたことで仮面の人物は若干狼狽えているようだったが、静希のその表情を見て、そして静希という人物を認識してその狼狽は僅かながらに減衰しているようだった


「・・・初めまして・・・っていうのはおかしいかな?別人だったら悪いけど、ここで捕まえさせてもらう」


自身の内側にいるメフィを外にだし、静希は大量のトランプを、メフィは光弾を作り出す


手加減も小手調べなどもありはしない、ここで確実に捕まえる


もはやメフィを隠しておくなどという状況でもない、一気に捕まえて終わらせる、そうしなければまた逃げられる


トランプからは銃弾や釘などが飛び交い、その間を縫うように光弾が一気に襲い掛かった


仮に相手が死のうと構わないつもりで放った攻撃は、地面を砕きそのあたり一帯に存在する事すら許さないほどの破壊を作り出していた


轟音が辺りに鳴り響くなか、静希は反射的に腕を動かしていた、いや静希の目にはほんのわずかながらに見えていたのだ、だからこそ左腕を盾のように動かした


瞬間、静希の体に衝撃が走り『蹴り』とばされる


静希の体は何度か地面を転がり、数メートル距離を離されるが即座に体勢を整え再び攻撃態勢をとった


雪奈との訓練のおかげで反射的な防御を身に着けておいて正解だった、あの一瞬で仮面の人物は回避行動をとり、静希に攻撃を仕掛けてきたのだ


身体能力強化、誰がどう見てもそうとしか思えない速度で静希は蹴られた


能力者だろうと予想はしていたが、よりにもよって静希が苦手とする強化系統の能力者だとは思っていなかった


再び銃弾と光弾を射出するが、その危険性を相手も理解しているのだろう、周囲にある木々を盾にするように横の動きをし続け回避していく


さすがに射撃系の攻撃だけではあの動きを止めることはできなさそうだった


「メフィ、念動力であいつの動きを止めてくれ、できるか?」


「オーライよ、任せなさい!」


光弾の射出をいったん止め、メフィは能力を切り替え周囲のものを操るべく集中する


動きを止めろと静希は言ったが、次の瞬間に起こったことは、止めるというレベルのものではなかった


周囲の地面や木々が一斉に宙に浮きあがったのである


強化系統、特に身体能力強化を得意とする能力者への対処法は、宙に浮かせること


そうすることで確かにその動きを制限し、何より行動できなくすることはできる


だがまさかこの辺り一帯の地形ごと浮かせるとは思っていなかった


だがお膳立てとしては最高の状況だった


静希は太陽光と水素カッターの入ったトランプを飛翔させ狙いを定める、手や足の一本でも失えば行動はできなくなる、まだあの仮面がリチャード・ロゥであるという確証はないが、これも仕方がないことだ、あんな仮面をつけている方が悪い


太陽光と水素カッターが同時に射出され、両方が仮面の人物に着弾する、太陽光は右足に、水圧カッターは左腕に吸い込まれていった


太陽光の力によって右足は焼け焦げて、いやそんな生易しいものではない、一気に炭化していた


液体水素カッターの効果で左腕に穴が開いていくが、対象が動いているためか表皮に傷をつけなおかつ凍らせる程度の効果しか発揮していない、だがあれでいい、あの周囲にはすでに水素がまき散らされた


そして近くには高温をまき散らしている太陽光、その結果どうなるか


噴出してから数秒後、地形ごと浮いていた場所が唐突に小規模な爆発を起こす、液体だった水素が太陽光の熱で気体へと変化し周囲の酸素と反応して爆発を起こしたのだ


誤字報告が五件分、そして評価者人数が355人を突破したのでお祝い含め二回分(旧ルールで四回分)投稿


だんだんいつもの調子に戻ってきた、この誤字のテンポ、いつもの調子ですね


これからもお楽しみいただければ幸いです

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