解決への道筋
「それじゃあ邪薙、とりあえずここで拘束されているふりをしていてくれ、朝に回収する」
「わかった、できる限り連中がこの辺りを近付かないようにしてくれると助かる、あの顔を見るだけではらわたが煮えくりかえりそうだ」
わかったよと相槌を打って静希はスペードシリーズのトランプを邪薙の周囲に展開しゆっくりとその身体を中心に円運動させる
「これで拘束してるってことにしようか、でもどうやってエルフたちを遠ざける?」
「今力をそいでいるところだから邪魔するな的なことを言えば大丈夫じゃない?」
よしそれで行こうと皆がうなずき、邪薙は拘束されているかのように膝をついて前かがみになる
「早めに頼むぞ、私としても我慢の限界という物はある」
「了解、明日の朝一で回収するよ」
静希は邪薙の肩を叩きながら安心させようとする
「ではこのまま上に出て報告するか、一応この姿を長に見せた方がいいだろうか」
「見せた方が安心もするしある程度牽制にもなるんじゃないっすか?ほら近付くと攻撃されかかるとか演出があればなおさら」
「なるほど、奴が近付いてきたら襲いかかればいいのだな?」
「いかにもこのトランプに封じ込められているような演技ができればなおのこと」
「これでばれなければ千両役者になれるな」
「さあ、では開演と行こうか」
城島の掛け声とともに全員が頷き、ある程度準備を終える
呼ばれてきたエルフの長は暗闇の奥で宙に浮くトランプによって囲まれた神格邪薙をみて喜々として声をあげる
「おぉ!見事じゃないか!あれほど猛っていた神格をおとなしくさせるとは!悪魔を手懐けただけはある」
「気をつけてください、まだ力を弱めている段階なので暴れる可能性もあります」
「なに、こうなってしまっていては所詮は哀れな獣風情だ、問題は」
数歩近付いた瞬間に邪薙が咆哮し勢いよく長めがけて爪を振るう
だがトランプに遮られてそこから先に動けない
『千両役者ね』
『まったくだ』
あれが全部演技であると思うと素晴らしい役者ぶりだ
いや、実際は演技どころではないのかもしれない
息は荒く、腕は痙攣しているかのように震え、歯を強く食いしばっている
理性と怒りの間で激しく揺れているようだ
「近付かないでと言ったでしょう!貴方達が近くにいるとそれだけで神格を刺激します、極力近づかないで」
「あ、あぁそうさせてもらおう、いつ完全に鎮静が終わる?」
「そればかりは何とも、まぁ遅くとも明日の夜までには終わるでしょう」
城島の言葉に、その場にいる生徒全員が理解した
明日の夜までにはこの一件を全部終わらせる気なのだと
「それじゃあ行きましょう、貴方がいると神格が活性化してしまう」
「あぁ、そうしよう、この化物の顔を見なくてよくなると思うとせいせいする」
わずかに邪薙の身体が震える
屈辱に必死に耐えているのだろう、今の段階では邪薙にできることは耐えることだけだ
目配せをして静希も地下から地上に移動する
「せいぜいあいつが暴れないように気を配れ、私達に害のないようにな」
「了解していますよ、長」
長はこちらを睨みながら部屋に戻っていたようで、周囲には誰もいなくなる
「あぁいう人を見ると反吐が出ますね」
「滅多なことを言うものではないぞ五十嵐、気持ちはわかるがお前は口には出すな」
とても小さい声で言ったはずだったが、城島には聞こえていたようだ
「先生はいいんですか?」
「私は大人だ、責任を持てるものがそういうことを口にするべきなんだよ」
長の家の玄関先には石動が待機していた
恐らくずっと待っていたのだろう
「遅かったな、無事仕事は終わったのか?」
「ひと段落ってところかな、まだやることはあるけど」
「・・・そうか・・・!」
なにはともあれ、まずは無事であったことと村が救われたことに安堵しているらしい
結果的に騙すことになって心苦しいが、余計な心配をかけるよりはましだろう
それが身内の問題ならなおさらだ
「ようやく風香ちゃんのところにいけるよ、ご飯何かな」
「深山、あまり羽目を外し過ぎるなよ?俺達の品格に関わる」
「確かに雪さんはちょっと抑えた方がいいかもね、食事は特に」
「陽太、あんた人のこと言えないわよ?」
「確かに陽太君も雪奈さんも、あまり上品とは・・・」
「まったくだ、陽太も雪姉も少しはおとなしくしてくれると助かる」
「「なんだと!?」」
二人して憤慨してはいるが、やはり自分でも認めている部分があるだけにそれ以上の追及はできなかったようだ
根が単純なだけに扱いやすい
「五十嵐、東雲の両親への聞き込みは私と二年が担当する、東雲姉妹への聞き込みはお前が担当してくれ、方法は任せるが直接的な言い回しは避けろ」
「わかりました、それとなく聞いてみます」
正直なところ、あの姉妹にこれ以上事件の事を思い出してほしくはないが、今回の事件が人為的に行われたのであればまた発生する可能性がある
悪性の芽は摘んでおかなくてはならない
それができるのはこの任務期間中しかないのだ
エルフは外界からの接触を極端に嫌う
わざわざ人の入らないような場所に村をつくったのも人間社会と隔離するためだろう
徹底しすぎていると言えばそこまでだが、それはエルフの教育を行いたかったからでもあるのだろう
ここにある学校はすでに廃校になっていると聞いたが、それも仕方のないことなのかもしれない
いまは確か集会場代わりとして使われているのだったか
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