表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
二十七話「所謂動く痕跡」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

862/1032

それぞれの演技

静希に銃口を向けていたビルは、直接静希の殺気を向けられたことで本当に僅かに身をたじろげたが、その銃口を静希のこめかみから外すつもりはないようだった


「・・・何度でも言ってやるよ、悪魔以外はお荷物だ、この中の誰かしらに仮契約でもなんでもさせてぬくぬくしてればいいだけだ、違うか?」


「違うね、あんたは勘違いしてる、あんた達にとって俺が足手まとい?逆だ、俺にとってはあんたらの方が足手まといなんだよ」


銃口を向けられながら静希は立ち上がり、ビルに肉薄しようと距離をつめる


「今回俺があんたたちの指揮下に入ってやるのは、今回の目的が大々的な戦闘じゃないからだ、集団の隠密行動なら俺らよりもあんたらの方がやり方を心得てるだろうから任せようとした・・・それを言うに事欠いておまけだのお荷物だの・・・よくもほざいたもんだよ」


静希の向けるそれはすでに学生がするような表情ではない、言葉も殺気も、どちらかというならテオドールに向けるようなそれに近くなっている


先程まで大人しかった学生が急遽変貌したことでその場にいた全員が理解する、こっちが悪魔の契約者である五十嵐静希の本性なのだと


直に対峙しているビルという名の隊員は静希の目が学生のものなどではなく、今まで何度か対峙してきた凶悪犯のそれに近いものであることに気付けた


本性などといっても、本当の静希はもう少し物腰が柔らかく、今は少しだけ演技している節があるが、そんなことは周囲の人間にはわかりようがない


この場を収め、静希が行動しやすくするためには少々手荒な方法をとらなくてはならないかもしれない


別に静希が舐められても何の問題もないのだが、引き連れている悪魔のフラストレーションがたまるというのはあまり良い傾向とは言えない


何より静希自身、悪魔のおまけなんて言われて何も感じないわけではないのだ


静希の纏う圧力と殺気が徐々に強くなっていくのをビルは肌で感じていた、その威圧感が静希だけのものではないという事に気付いたのは、その事情を知っている鏡花たちだけだった


静希だけではなく、静希が連れる人外たちも怒りを覚えているのだ、この部屋が吹き飛ばなければいいのだがと不安になりながらも、鏡花は引き続きただの学生のようなふりを続けている


「なんなら今ここで、あんたと俺、どっちがお荷物か決めるか?誤って息の根止めても恨むなよ?」


「・・・そこまでにしておけ五十嵐」


静希の殺気が最高潮に達しようという時、城島のストップがかかる、これはあらかじめ静希が指示したタイミングだった


もっとも静希が指示した本来のタイミングは、静希が因縁を付けられ、今ここで勝負をしようなどという内容の話を持ちかけられた時のことだ


まさか立場が逆になるとは思っていなかったが、城島のこの制止は正直有難かった


「余計な摩擦を作ることもないだろう、向こうの思惑にはまるだけだぞ」


「・・・どういう・・・」


制止だけではなく、助言にも近いそれに静希はようやく気付ける、周囲の人間が静希に向ける視線の種類が変わっていることに


先程までの疑いのようなものが混じった視線ではない、そしてその視線の意味を静希はほぼ正確に把握していた


それを把握すると静希は小さく舌打ちをする


「あー・・・なるほど・・・まんまとしてやられたという事ですか?デビット」


「いやいや、そんな滅相もない・・・まぁ確認というだけだよ、日本で会った君はあまりにも普通すぎたからね」


デビットの言葉に静希は大きくため息をつく、簡単に言えば上手く流れに乗せられたという事である


静希が彼らと出会った時点でただの学生の演技をしていたのがかえって裏目に出た形になる、つまり彼らは静希が本当に悪魔の契約者であるのかというのを疑問に思っていたのだ


幾つかの機関からの推薦のようなものもあったのだろうが、実物を見てその疑問が強くなり確認を急ぎたかったのだろう


「あんたのさっきまでのあれも演技ですか?」


「気づかれなくてほっとしたがね、そう睨むのはやめてほしいんだがな」


先程まで静希に銃を突き付けていたビルは苦笑しながら両手を上げている、一人の隊員を絡ませることで、静希の本性を引き出すのが今回の目的だったのだろう


悪魔の存在というものを少なからず知っているような人間もいたようで、実際に見た静希が演技をしているという事をある程度把握していたのだろう、だからこうして一芝居うってこちらの本音を引き出そうとしたのである


どの段階で城島がそのことに気付いていたのか知らないが、静希ももう少し早く気付いてもよかったかもしれない、まんまと敵対用の性格を引き出されてしまった


この辺りはさすが大人というべきか、静希とは年季が違う、本格的な演技に完全に騙されてしまっていた


「で?こんなことをした理由についてお聞きしましょうか?」


もう演技をする必要がない静希はテーブルの向かい側にいるデビットを睨む、自分の手の内を見ようとしたわけではないだろう、どちらかといえば静希に対する不信感を取り除きたかったかのように思えた


「簡単な事だ、短い時間とはいえ一緒に行動するんだ、取り繕った関係は軋轢を生む、演技じゃなくてきちんと話してほしかったわけだ」


「・・・はぁ・・・無駄にこいつらを怖がらせたのはさておき、下手したらこの辺り火の海ですよ」


一応鏡花のただの学生演技が続いているために、自分だけが特殊であることを強調したうえで静希はため息をつく


こういう頭が回る大人というのはなかなかに厄介だ、そしてそんな人間が数多くいる場合があるのが現場である


完全に味方ならありがたいのだが、今回ばかりは少々面倒な状況かもしれないと静希は小さく息をついた


「だが、ミスターイガラシの先の啖呵を見れば、万が一悪魔がいても恐れることはないな、安心したよ」


「こっちは安心できませんよ・・・面倒なことを・・・」


人外達を無駄に刺激したせいで静希は無駄に疲れてしまっていた


これで静希は完全に戦力としてカウントされたことになる、まず間違いなく勝手な行動はとれないだろう


まんまとしてやられた形になるが、鏡花たちはまだ今のところはただの学生という印象の方が強いようだ、周りの視線は静希に対する畏怖に似たものと、鏡花たちに対する同情が含まれたもので満ちている


静希のような破天荒な存在に巻き込まれて可哀想にと言ったところだろうか、その反応と考えはあながち間違いではないだけに静希としてもどうリアクションしたらいいか迷うところだが、鏡花と明利が普通の学生扱いされているのであればまだ問題はない


「さて、では彼の本性も分かったところで、本題に戻ろう、先に言ったようにミスターイガラシとミスターヒビキは犯人と人質の確保、ミスシミズ、ミスミキハラは企業関連へのアプローチだが、まぁホテルで待機してくれていても構わない、この配置になにか疑問は?」


「ない・・・といいたいところだけど、もし企業側に悪魔、ないし契約者がいた場合はどうする?俺を急遽そっちに配置するのか?」


静希のいうことは間違ってはいない、企業ではなく別の場所にリチャードらしき人物を見たために企業付近には悪魔、あるいはその契約者はいないと踏んだのだが、確証も保証もないのだ、その場合どう対応するかが問題である


「こればかりは何とも言い難いが、優先度は企業側よりも犯人と人質側の方が大きい、何より我々はジャン・マッカローネ氏を徹底マークしている、同時攻略が理想だが、連絡を付けさせないようにできるなら連続攻略でも構わないと考えている」


要するに、急いで犯人と人質は確保したいけれども金を流していた企業側に関してはそこまで緊急性が高いわけではなく後回しでも問題ないという事だろう


話を聞く限りジャン・マッカローネの周囲に特定の人物が張りついているとか、うろついているとか言うことは確認できていないようだ


まず間違いなく彼はフリーの状態で日々を過ごしているであろうというのが捜査チームの見解なのだろう


静希もその案には賛成だし、何より捜査している人間たちの中でジャン・マッカローネの優先順位がそこまで高くないというのもある意味好都合だった


静希達が手こずっている間に少々厄介な影をちらつかせればその分確保に時間をかけられる、そして時間をかければエドたちが行動できる時間的余裕ができる


後はどうやってうまくエドたちと連携するかである


現段階で静希の行動がかなり制限されることを考えると、本格的に今回はエドの支援に回る必要があるかもしれない


「じゃあ、今後のスケジュールについて聞きましょうか、具体的な決行日は?」


「現段階では何とも言えないが・・・数日中とだけ言っておく、君たちもそこまで拘束されるのは本意ではないだろうからな、可能な限り早くするさ」


具体的にと進言したつもりだったのだが、まったく具体的ではない返答に静希は僅かに眉間にしわを寄せる、この反応を見る限り相手には自分の方に正確な情報をよこすつもりはないようだった


下手に動かれるよりも情報を制限してこちらを動かしやすいようにするのが目的だろう、主導権を握っているのが向こうなのだ、仕方がないともいえるが、少々面倒だ


必要な時だけ使われてそれが終われば用済みで即帰国なんてことになったら目も当てられない、エドたちに頼みっぱなしにするというのはリスクが高い

何とかして自分たちがある程度動けて、なおかつこちらに主導権を少しでも動かせればいいのだが


「じゃあ期日がわかったら連絡しろ、それまでは街をぶらぶらさせてもらう、どうせやることはないんだからいいだろ?」


「・・・相手に気付かれることを考えてくれ、ホテルでおとなしくしていてくれるとありがたいが」


「ホテルに引きこもってたって暇でしょうがないだろうが、目標の場所付近には近づかないようにするさ、それなら文句はないだろ?」


相手に気付かれる可能性があるからホテルで待機、そして都合のいい時だけ呼び出す、それができれば相手としては最高だったのだろうが、静希だってそんな無駄な時間を過ごすほどバカではない


まずは自由に動けるだけの状況を確保する、見張りがつこうが振り切ればいいだけの話である


仮に静希の携帯に連絡が来たとしても、静希の翻訳はその場にいなければ効力を発揮しない、向こうが何語で話そうと日本語での通話以外に意思伝達手段はないのだ


相手が自分を封じ込めたいように、こちらはそれを防ぎたい、依頼する側とされる側でもいろいろと思惑があるようでデビットはどうしたものかとため息をついていた


「わかった、せっかくのイタリアだ、見て回りたいところもあるだろう、だが一応連絡係はつけさせてもらうよ、そのくらいは了承してくれるとありがたいな」


「そのくらいなら構わないよ、こちとら歩き回れればそれでいいんだ」


この反応は半ば予定調和に近い、今まで関わってきた組織全てが静希に見張りを付けようとしてきたものだ、それを毎回振り切ってきた静希にとって見張りが一人や二人付こうが何の問題もない


後は確認するべきことをしっかりと確認するべきである、静希達の第一目標であるジャン・マッカローネ、彼の一日のタイムテーブルが確認することができれば容易に行動に移れる


可能ならその行動開始を静希達が行動開始するのと同時にしたいところである








その後、可能な限り情報を伝えてもらった静希達はその情報を一通り頭に入れた後小さく息をついていた


明利と陽太は若干瞼をこすり眠そうにしている、かなり話し合っていたようですでに周囲は暗くなり始めていた


「っと・・・もうこんな時間か・・・デビット、俺たちは今日は引き上げる、ホテルに案内してくれる人員を用意してくれるか?」


「あぁわかった、今日はもうお休みか?」


「時差ぼけを早めに修正しないとな、だから今日と明日でコンディションを万全にしておくよ、それまで作戦の決行はしてくれるなよ?」


小さく釘を刺してから静希達はその部屋から退室する、釘を抜かれるかどうかはわからないが彼らからしても妙な博打は打ちたくないだろう、恐らく今日と明日はまだ行動を開始しない可能性が高い


「んじゃ俺が案内してやるよ、近くの宿だ、まぁそこそこってところだな」


「・・・あんたか・・・確かビルとか言ったっけ?」


静希達を案内するのは、先程静希の頭部に拳銃を突き付けていたビルという捜査員だった


筋肉質な体と浅黒い肌を持つ彼は得意げに笑っている、どうやら彼の中では静希の印象はそこまで悪くはないようだった


「俺の演技はどうだった?それなりに真に迫ってただろう」


「あぁそうだな、あれを拳銃なしでできるようになればいう事なしだ」


自ら悪役、というか静希の本性を引き出す役を買って出ただけあってそれなりに演技や表情を変えることには自信があるらしい


よく言うじゃねえかとビルは笑みを崩さずに静希の体を肘で小突く、といっても軽くつつく程度のものだ、痛くもかゆくもない


彼としても静希のただの学生の演技には多少騙されたところもあるのだろう、静希の技術の一端を垣間見て随分とその実力は買っているようだった


「にしてもお前の班員たちは気の毒だな、振り回されてばっかりじゃあ、それとも日本の学生ってのはみんなこんなのなのか?」


「いいや、こいつらが気の毒ってだけだよ・・・本当にな」


静希の演技に騙されていただけあって鏡花の演技は全く見破れていないようだった


自らを強く見せるだけではなく、自らを弱く見せることにも立派な意味がある


相手の目を欺くだけではなく、油断を誘う事だってできるのだ、静希の班のような不意打ちを得意とするチームにとっては相手を油断させることこそ必須技能といえるだろう


ビルの運転する車で移動する事十数分、静希達はあるホテルにやってきていた


今まで宿泊したそれと比べれば多少ランクは落ちるかもしれないが、それでも立派と称するには値するホテルであることは間違いなかった


「んじゃ俺は帰るけど、くれぐれも余計なことはすんなよ?一応何人かローテ組んで見張るらしいけど・・・」


「それって俺らに言っていいのか?普通見張るなんて言わないだろ」


「いいんだよ、どっちにしろお前言わなくても何とかしそうだしな」


そう言ってビルはそのまま車に乗って颯爽とどこかへと走って行ってしまった


直接静希の殺気を向けられたからか、それとも静希から何かしらのものを感じ取ったからか、現時点で捜査員の中で一番静希という人物を理解しているのはビルのようだった


「案外話が分かりそうな人ね、脳筋タイプかと思ってたんだけど」


「勘が鋭いのかもな、あぁいうタイプは敵に回すと怖いけど、今は味方だからまだいいだろ・・・んじゃチェックインしますか」


城島がホテルにチェックインすると、通された部屋は二つ、一つは女子が、一つは男子が泊まるための部屋で女子部屋は男子部屋と違い四人部屋だった、どうやら城島もこちらに宿泊するようだった


「・・・今回は先生と一緒ですか?」


「不服そうだな、まぁ気持ちはわからないでもないが」


教師と一緒に寝泊まりするというのはなかなかにプレッシャーがかかる、何よりその相手が城島という事実が鏡花と明利を心理的に圧迫していく


静希と陽太は二人に同情しながらも自分の部屋に入っていくことにした


「いやぁにしてもあっちの連中なかなかめんどくさそうだったな、話が難しいのなんの」


「お前からしたらそう言う認識なんだな・・・ところであのビルって人どう思った?」


「ん・・・静希の本質?に気付きかけてるって感じじゃね?少なくとももうただの学生とは見てくれないだろ」


陽太もおおよそ静希と同じ意見のようだった、ビルは静希がどういう人間かに気付きかけている、それは彼の独特の観察眼によるものか、それともただの勘か、どちらにしろ注意が必要なのは言うまでもない


「こっち二人部屋なのね・・・部屋交換してほしいわ」


「鏡花、ひとまず盗聴器とかのチェック頼む、それができたらちゃんと話しよう」


静希の申し出に鏡花は了解よと言ってからあたりを調べ始める


この部屋に今回の味方のポジションである捜査員たちが監視カメラや盗聴器の類を仕掛けていないとも限らないのだ、この部屋で情報を交換しても問題ないという確証が得られるまでは滅多なことを話すわけにはいかない


味方のはずなのに信用してはいけないというのは何とも不便なものである、自分の懐の内に抜身の刃物を入れているような感覚だ


取扱に注意すればむしろうまく利用できるが、一歩間違えれば怪我をする、これほど厄介なものはない、静希の場合危険なものはその刃を潰すか折るかしてから懐に入れるなりしているために、こういう面倒な事案は初めてだった


いや正確に言えば面倒はいつもの事なのだが、上手く動けない事案というのが初めてなのだ



鏡花の厳重な捜索により静希と陽太の泊まる部屋と女子たちの泊まる部屋に盗聴器の類がないことを確認すると、静希達は眠いのを我慢した状態で男子部屋で話をすることにした


もはや演技をする必要のない鏡花は大きくため息をついている


「あー・・・今日だけで穢れのないころの自分の姿を思い出せるようだわ」


「おいおい、今がすでに汚れてるみたいな言い方じゃんか、ただの人間アピールなかなか面白かったぞ?」


陽太の言葉に静希と明利が苦笑する中、鏡花は再度大きくため息をついて見せた


「だってさ、あんな風に銃突き付けられてビクビクするとか私のキャラじゃないじゃない?正直銃位じゃもうびっくりしないわよ、昔の私だったら涙目で怯えてたかもしれないけど」


「そうだな、鏡花だったら銃向けられても容赦なく叩き伏せるかも」


無駄に面倒事に巻き込まれたせいで鏡花のメンタルもだいぶ成長しているようだ、もちろん良い方向ではなく多少マイナス方向に鍛えられてしまっている感はあるが


静希が常日頃から銃の手入れなどをしている姿を見かけているせいか、もはや鏡花は銃程度では驚きすら感じることができないのだ、むしろまたかという感想しか出てこない


仮に拳銃ではなく突撃銃のような両腕で構えるような銃ならまだ感想くらいは抱けるだろう、それでもこの前見たのとはまた別の銃だな程度のものだろうが


「可能ならあれね、昔の自分に会って面倒事に関わるから気を付けなさいって助言したいわ、心の準備ができてたほうが幾分か楽だとおもうし」


面倒事に関わることになったとしても、静希達とは関わるなという指示を送らないあたり、鏡花は今の関係を気に入っているという事だろう


言葉だけ聞けば誤解を生むかもしれないが、鏡花はこれで結構静希達に出会って感謝しているのだ


「鏡花姐さんもずいぶん立派になって・・・あのころはあんなに情けなかったのにねぇ」


「本当にねぇ・・・小鹿みたいにプルプルしてた頃が懐かしいわぁ」


「そこのバカ二人、ひっぱたかれたいならそう言いなさい?全力でビンタしてあげるから」


陽太と静希が悪乗りして懐かしき頃の鏡花の姿を思い出しているものの、鏡花もそれなり以上に順応性が高いのかほとんどすぐに静希達との関係と、巻き込まれる面倒事にも慣れてきていた


相変わらず唐突の事態に対して処理能力が低い傾向があるが、一年前とは比べ物にならないほどである


「で?私達は今回はエドモンドさんの手助けがメインなわけだけど・・・どうするの?実際私達だけじゃたいしたことはできないわよ?」


「いいんだよ、お前たちはエドたちへの情報共有とちょっとした補助だ、向こうは向こうでいろいろ手はずを整えてるんだ後は何時決行になるかってことだよ」


今回の目標であるジャン・マッカローネは資料によれば無能力者だ、普通の家庭で育ち普通に結婚し、子も授かり、会社に勤めてかなり長いようだったが、何故今回危険な橋を渡ったのか不思議でならない


そしてそんなただの無能力者ならば誘拐するのにさしたる苦労は無いだろう


「日時はいいんだけどさ、さっきの話し合いの時にあんたが言ってたみたいに企業側・・・今回の目標の方に悪魔とかがいたらどうするのよ、例えばもう悪魔が宿ってるとか」


「・・・近くの動物の挙動を見てみるってのはどうだ?悪魔が宿ってたらすぐにわかりそうなものだし、俺が近くをうろつく・・・のは止められてたか」


直接静希がジャン・マッカローネと接触することができたのならその気配を探って悪魔の有無を確認できたかもしれないが、事前に釘を刺されているうえに捜査チーム自体が警戒している人間に接触しようとするなど、今後動きにくくなりに行くようなものである


「何とかして悪魔の確認をしたいところだけど・・・近くに俺たちは近寄れないからな」


「あの・・・それならアイナちゃんかレイシャちゃんにお願いしちゃダメかな?気配の有無くらいならわかると思う・・・けど・・・」


明利からまさかの良案が出たことで静希はおぉと手を叩く


アイナとレイシャもエドと行動を共にしてかなり長い、エドと共にいるヴァラファールの気配から悪魔のそれに敏感になっていて不思議はない


多種多様な人外を引き連れる静希には劣るかもしれないが、彼に直接宿っているか否かだけでも判別すれば静希達にとっては大きなアドバンテージになることは間違いない


「明利お手柄だ、確かにあの二人なら気付けても不思議はないな、ちょっと今聞いてみる」


静希が携帯でエドに連絡をかけている間、鏡花と陽太が明利のファインプレイに賞賛を浴びせていた


「明利からこんな案が出るとは思わなかったわね、さすが静希の家に入り浸ってるだけあるわ」


「明利も結構気配に敏感になってる感じあるけどな、なによりあっぱれだ明利」


褒められてうれしいのか恥ずかしいのか明利は照れながら頬を軽く掻いている


静希と長く一緒にいたためか、人外たちへの多少の気配程度であれば明利も感じ取れるようになりつつある


ほぼ毎日一緒にいる雪奈に関してはほぼその気配の有無がわかるらしい、その為に静希が帰ってきて人外たちの気配がすると静希の家に向かうという図式が成り立つ


毎回毎回タイミングよく雪奈が現れるのはそう言うからくりがあるのだ


そして毎日ではないにせよ一緒にいる明利や雪奈たちでさえ人外の気配に敏感になるのだ、毎日一緒にいるアイナとレイシャは確実にその気配を察知できるだろう


エドやカレンは悪魔の契約者であるために直接の接触は危険だが、アイナとレイシャはただの能力者でただの子供だ、接触しても害はないし、目標側も、こちら側も何の干渉もできない存在なのだ


誤字報告五件分に評価者人数が335人突破したので二回分(旧ルールで四回分)投稿


早く生放送の動画上がらないかなぁ・・・


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ