神格との対峙
「では任務の内容を聞こうではありませんかエルフの長、我々を呼び、そしてその神格をなぜ召喚したのか、もろもろ全てお聞かせ願えれば幸いです」
「私からの依頼は神格を鎮静化さえしてもらえればそれでいい、他に話すことはない」
どうにも話が進んだかと思えばこの堂々巡り
どうやら本当に神格を何とかする以外に話をする気はなさそうだ
「それでその神格は今どこに?」
「我らの能力で封じ込めてあるが、いつそれが解かれてもおかしくない、案内しよう」
エルフの長が立ち上がり、廊下を通過し、そして地下へと移動していく
まさかその日にご対面することになるとは思わなかった
エルフでさえ持て余すような存在をどうして自分が背負うことになってしまったのか静希にとってはまったくもって遺憾だった
そこは石で固められた牢獄のような場所だった、外にあったのと同じように球状の物体が暗闇を照らしている
階段を下り、静希達を迎えたのは広い空間
円状に広がるその空間は直径二十メートルはあろうかという程に広く、壁に取り付けられている明かりではまだ薄暗さを保っていた
天井までの高さは四mほどだろうか、地下室にしては非常に高さを保った空間だ
『シズキ、気をつけなさい、いるわよ』
すでにトランプの中に入ったメフィが警告を飛ばす
目を凝らしてあたりを見回すが、静希には何も見えない
だがエルフの長が一歩前に進んだ瞬間、肌を刺す強い殺意がその場にいる全員に襲いかかる
何かの金属音、そして獣が呻くような独特の声
暗闇の奥に、それはいた
地面から伸びた鎖に身体の自由を奪われ、それでもなお敵意を向け襲いかかろうとしている
犬の顔をし、大きな人間の体を持つ、半人半獣
その身を見たことのない紋様のついた衣服で包み、首には勾玉をつけた首飾りが付けられている
だがその眼は怒りに我を忘れ、獣その物となってしまっている
「あれがその神格だ、何とかしろ、それが依頼だ」
依頼だなどと簡単に言ってのけるが、目の前にしてようやくメフィのいっていた意味がわかる
メフィは遊び程度でしか静希達と戦っていない、だが目の前の神格は違う
全力を持って自分たちに襲いかかろうとしている、その圧力は、恐怖は悪魔に立ち向かったあの時の比ではなかった
「五十嵐、何とかできそうか?」
「無茶言わないでくださいよ、あんなのどうやって落ちつけろっていうんですか」
猛々しくも荒ぶっている神を前に静希は完全に萎縮してしまっていた
いや、萎縮しているのは静希だけではない、その場にいる全員が手足の震えを訴えている
「召喚はここで行ったのですか?」
「いやここではない、召喚するべき場で事故が起こり神格が召喚され、神格を宿した少女ごとここまで連れてきた」
敵意を放ち続けている神格を前に静希がおびえていると、頭の中でメフィの声がする
『大丈夫よシズキ、何とかなるわ』
『勝手なこと言うなよ、あれどうしろっていうのさ、鎖につながれた野生動物並みだぞおい』
『大丈夫よ、私にやったようにすればきっとうまい方向に話が進むわ』
何の根拠もなさそうなことを言っているが、彼女は実際静希によってその怒りを鎮められた
ならば彼女の言葉には何かがあるのだろう
『信用するからな』
『あら嬉しいわね、でもいいの?悪魔の言葉を信じちゃって』
『今このまま呆けてるわけにもいかないだろ』
この状態のままを維持していたところでなにも状況は変わらない
ならば一手加え、そこから考える
「陽太、鏡花いつでもフォロー入れるようにしておいてくれ」
「お、おう」
「なによ、何するつもり?」
歩きだす静希に全員が警戒の色を強める
「エルフの長はいない方がいいかもしれないです、もし失敗したら真っ先に殺されるかも」
「で、ではここは任せよう、上で報告を待っているぞ」
まるで逃げるようにその場から立ち去る長を見送った後で、静希はカードを一枚取り出す
それは使い切ったまま、まだ水素の補充ができていないスペードの三番
荒ぶる神の額にトランプを押しつけて深呼吸する
どうやら触れられる、メフィのように自分の体を透過させる能力は今は発動していないようだ、あるかどうかも定かではないが
メフィと同じように、存在だけの存在なら、重さが一切ないのなら静希のトランプの中に収納できるはず
できると思い込め
何度も頭の中でそう念じて能力を発動する
エヴァ見てきました
面白かった・・・!




