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J/53  作者: 池金啓太
二十七話「所謂動く痕跡」

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別れ

静希とエドのロリコン談義はさておき、実際何時帰るかという話になった時、アイナとレイシャの反応は以下の通りだった


「え・・・?もう帰るのですか?」


「え・・・?もうお仕事ですか?」


よほど日本が、というより雪奈と一緒にいるのが気に入ったのか、少しどころかかなりがっかりした様だった


この反応にはさすがのエドも苦しそうにしていたが、こればかりは仕方のないことだと二人も半ばあきらめているようだったが、雪奈がいつでも遊びにおいでというと何とも言えない表情で抱き着いていた


本当にこの数日で随分と懐かれたものである


「エド、二人にそろそろ留学の件教えてあげてもいいんじゃないか?」


「そうだ、あんな顔をしているのを見てはさすがに心苦しい、教えてやるべきだろう」


「・・・い、いや、確定していない話をするわけには・・・明日ミスジョウシマと話をしてから決めるよ・・・!」


エドとしてもぬか喜びさせるのは嫌なのか随分と慎重になっている、静希とカレンは二人があんな顔をしているのはあまり見たくないのだが、こればかりは仕方がないかもしれない


アイナとレイシャの気持ちも分かるが、エドの気持ちも分からないでもないのだ、なにせもしこれで留学そのものができなくなった時、二人はとても悲しむだろう、そんな表情を見るくらいならまだ黙っておいた方がいいというのは十分理解できる話である


「とはいえどうしたものか、あの状態では・・・」


「ん・・・まぁ雪姉の手腕に期待するか、もしかしたら被害がそっちに行くかもしれないけど、その時は任せた」


カレンと静希が小声で話している中、いつの間にかアイナとレイシャのことを任されていたとは露と知らない雪奈はどうしたものかと悩んでしまっていた


なにせ彼女たちの境遇を考えればいつまでも一緒にいられないというのは最初から分かっていたことでもある、とはいえこのように悲しそうにしているところを放置しておけるほど雪奈は薄情ではないのだ


どうにかして笑顔にしてあげたいのだが、そう思う中雪奈はよしと意気込む


「アイナちゃん、レイシャちゃん、今日もうちにお泊りにおいで」


「・・・いいのですか?」


「・・・お泊りですか?」


雪奈の提案にアイナとレイシャは顔を上げる、せっかく仲良くなれたのだから一緒にいたいという気持ちもあるのだが、一緒にいられる時間も短いのだ、どうせなら笑って過ごしたいという気持ちの方が大きかった


「そ、まだ時間はあるんだから、たくさん遊ぼうよ、その方が楽しいって」


表裏もなく雪奈はそう言うと、二人もそれに同意したのか頷いて雪奈の体からいったん離れ二人でその両手を掴む


「よし、そうと決まればあそこにいるカレン軍曹を捕えるのだ!捕虜として強制連行するぞ」


「イエスマム!」


「ミスアイギス!覚悟!」


いきなり自分が標的にされたことでカレンは全く反応できなかったのか、アイナとレイシャに抱き着かれながら強引に雪奈の下へと引きずられていく


引きずられた先で待機している雪奈は邪な笑みを浮かべながらカレンを待ち構えていた、その両手はまるでタコの足のように滑らかに動いている


「ま、待て!待つんだ!何をするつもりだ!」


「心配しなくていい、ちゃんと捕虜の扱いは心得ているつもりさ、アイナ二等兵、レイシャ二等兵、カレン軍曹を拘束せよ!尋問を開始するぞ!」


「「イエスマム!」」


強制連行するのではなかったのかと突っ込みたくなるところではあるが、最初からあまり考えて物を言っていない雪奈のことだ、矛盾なんてことすら考えていないだろう


二人に拘束された状態で体を弄られていくカレンに同情しながら、何とも可愛らしくもえげつない光景だと眺めている静希は苦笑する


「子供ってのは相変わらず切り替え早いな、見ていてどうよお父さん」


「ハハハ、見ている分には微笑ましい限りさ、あの笑顔を持続させるには、やっぱり僕ががんばらないとね」


自分たちは関係ないと高を括っている男性二人はこの光景を良いものであると判断したのか談笑しながら美談にしようとしていた


人外達もその光景はさすがに混ざりたくなかったのか遠巻きにながめているばかりである、唯一それに混ざろうとしているのはメフィだけだ


「あら、カレンって結構肌綺麗なのね・・・良い触り心地じゃない」


「き、貴様メフィストフェレス!どこに触っている!やめろ!シズキ!このバカを止めろ!」


「・・・いやぁ今日は天気がいいなぁ」


自分が契約している悪魔がそんなことをしているという事実を直視したくなかったのか、静希は遠い目をしながら視線を逸らしている


あんな場所に関わっていったらまず自分が餌食になるのは目に見えている、ここは傍観するのが最善であると静希の直感が告げていた


カレンには申し訳ないが生贄になってもらおう


さすがに見ていられなくなったのか途中でオルビアがカレンを救出するが、そのころにはだいぶいじられたのか、半ば涙目になっているカレンがその場にいた


その後助けてくれなかったことを恨んでか、じっとりとした目でにらんでくるカレンが非常に印象的だったのは別の話である







翌日、城島とエドの留学についての話し合いが催され学内にエドが招かれたのだが、その結果は静希もよく知らない


万が一伝わらない日本語などがあることも考慮して一緒にその場にいようかと提案もしたのだが城島から却下されてしまったのである


当人の問題は当人が解決するべきであるという方針なのはわかるのだが、事情を知っている静希からすれば少々気がかりな状態だった


結局話し合いは静希が帰った後も続き、エドが静希の前にやってきたのは静希が入浴を終えた後だった


「やぁシズキ、今日の事は本当に助かったよ、今度日を改めてお礼をさせてもらう」


「いやそれはいいけど・・・ひょっとしてもう行くのか?」


「あぁ、そろそろお暇するよ、むしろ長く世話になりすぎた」


あらかじめアイナやレイシャ、カレンにも連絡してあったのか、静希が風呂から出るとすでに全員が荷造りを始めていた


パンツ一丁で髪を拭いている静希はさすがにこの状態で見送るのはまずいなと思い着替えようとするのだが、そんな静希をエドが制止した


「あんまり時間をとらせても悪いから、僕らはもう行くよ、急ですまないね」


「いやこっちこそ、こんな恰好ですまん、前もって言ってくれればもうちょっとタイミング考えて風呂に入ったんだけど」


「ハハハ、そこまで気にする必要はないさ」


まさか城島との相談を終えてすぐに帰るとは思っていなかっただけに、いつもの調子で風呂に入っていたのだが、まさか戻ってすぐに帰ることになるとは静希も予想できなかった


アイナとレイシャはチラチラと隣の雪奈の家に視線を向けている、いろいろといいたいこともあるのだろう、呼んだ方がいいだろうかと思っていると勢いよく扉が開く


鼻歌交じりに家から出てきたのは雪奈だった、こちらの様子に気付いたのか不思議そうな表情をしている


「あれ静・・・にエドモンドさんたちも・・・」


半裸で玄関口に立っている静希に荷物を持って並んでいるエドたち、それを見て状況を察したのか複雑そうな表情へと早変わりしてしまう


「うぇぇ・・・もう帰っちゃうの?」


「ごめんね、こっちにもいろいろあって・・・ほら二人とも」


雪奈と特に仲良くしていたアイナとレイシャを前に出させると、二人は雪奈に勢い良く抱きつく、一瞬体を揺らされるが、雪奈はしっかりと二人を受け止めて抱きしめた


「ミスミヤマ・・・また遊んでくれますか?」


「またお泊り会がしたいです、してくれますか?」


「・・・うん、いつでも遊びにおいで、待ってるよ」


年上のお姉さんらしく優しい笑顔を浮かべながら二人の頭を撫でると、アイナとレイシャはより一層強く雪奈に抱き着く


これ程懐かれるのも珍しいなと思いながら静希とエドはしみじみとその光景を眺めていた


「エド、そろそろ」


「そうだね、二人とも、そろそろ行くよ」


恐らくは飛行機などの時間もあるのだろう、二人にそう告げるとアイナとレイシャは名残惜しそうに雪奈から離れ、エドたちの下へと駆け寄った


「それじゃあまた、シズキとはすぐに会うと思うけど」


「何かあったら連絡を頼む」


「「お二人とも、またお会いしましょう」」


エドたちはそれぞれ挨拶を交わした後で自分たちのいるべき場所へと帰って行った


エドはこれからとてつもなく忙しくなるだろう、なにせ件の企業の事だけではなくアイナとレイシャの留学の件についてもやることができてしまったのだから


恐らくそのあたりはカレンがフォローするだろうが、休む暇があるかどうかも分からない


父親というのは大変なのだなという事を実感し、静希はその背中をしっかりと眺めていた


「うぅ・・・こんなに急に帰っちゃうなんてなぁ・・・もうちょっと遊びたかったのに」


「こればっかりは仕方ないだろ、向こうにも向こうの都合があるんだから」


雪奈はエドたちを見送りながら残念そうにしている、アイナとレイシャと一緒に遊んでいた雪奈からすれば名残惜しいのだろう、もう少し遊びたかったという気持ちがひしひしと感じられた


「ところで静、いつまでもその格好だと風邪ひくよ?」


「・・・そう言えばそうだった・・・着替えるか」


静希は風呂上り、パンツ一丁の状態のままだった、あまりにも唐突過ぎる別れだったために着替える時間すらなかったのが原因とはいえ、長時間過ごす格好ではない


「静のその様子を見る限りいきなりだったんだね」


「あぁ、エドが帰ってきたと思ったらいつの間にか帰り支度が済んでるんだから驚いたよ、前もって言ってくれればよかったのに・・・」


もしかしたら気を遣ったのかなと思いながら静希は雪奈に視線を送る、アイナとレイシャは良くも悪くも雪奈と仲が良くなりすぎた、きっと会えば別れにくくなるだろうと思って別れを告げる前に帰るつもりだったのかもしれない


運悪く、いや運よく雪奈が家から出てきたからこそしっかりと別れを告げられた、結果的にはあのような別れ方でよかったのではないかと思える


何も言わずに別れればその分雪奈の不満は静希にぶつけられるのだ、そう考えるとあのタイミングがベストであると言わざるを得ない


「あぁ、今日から一体何を抱いて寝ればいいのか・・・静、一日でいいから抱き枕になって」


「抱き枕は明利担当だ、俺の役職じゃない」


軽く雪奈をあしらいながら静希はとりあえず着替えるべく家の中へと入っていく


エドたちが帰っても自分にはしっかりやっておくべきことがある、気は抜けないなと静希は自分を叱咤した


ちょっと私用が入っているので数日間予約投稿します


反応が遅れてしまうのでご了承ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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