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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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悪魔との契約者

「メフィ、そこまでだ、あきらかにやり過ぎだ」


静希はしびれた足を引きずりながら何とか立ち上がり二人のところまでたどり着いていた


「あらシズキ、このジジイは貴方を屑と罵ったのよ?それだけで万死に値するわ」


「その程度のこと言われ慣れてる、これ以上はただのいじめだ」


あっそ、つまらないわと言い放ってメフィは長から手を離し光弾も消しさる


「き・・・貴様は・・・」


「あらエルフの長がまだ気付かないの?私と対等契約を交わした子、愛しい愛しい私のシズキよ?」


「誰がお前の物だ、俺はお前の所有物になった覚えはないぞ」


「あら、残念ね」


「貴様が・・・悪魔を・・・!?」


長は信じられないという様子で静希を見上げている


「そうよ、正真正銘、この子が怒り狂う私を止めたのよ、貴方偉そうなこと言ってる割に人を見る目がないのね」


腰を抜かしている長を見下しながらメフィは静希の首に後ろから抱きつく


重さがないため不快さはないが、絡まれてもいい気はまったくしなかった


「五十嵐、メフィストフェレスを連れて下がれ、話ができん」


「あ、すいません、行くぞメフィ」


「はーい」


しびれた足を引きずりながら静希は元いた場所へと戻っていく


「エルフの長、悪魔のいうことは正しい、貴方は人を見る目がないようだ」


「・・・っ!」


自分が屑扱いした人物に救われ自尊心をズタズタにされたためか、それとも二人もの女に侮辱されたからか長の歯ぎしりが静希達にも聞こえてきた


きっと仮面の下は鬼のような形相になっているだろう


「だがこれで話も先に進む、そちらは五十嵐に何をさせたいので?」


「・・・先もいった通りだ、我々が呼び出してしまった神格を鎮静化させればそれでいい、さっさとやれ」


その言葉に城島が声をあげる前にメフィが再度前に出る


「あんたさ、それが人にものを頼む態度なわけ?人に頼む時は頭を下げてお願いしますが礼儀ってものじゃないの?」


もはやいいたい放題である、城島がやんわりと伝えたかったことをメフィは何の遠慮もなく叩きつけていく


「私はエルフだぞ、人間ごときに頭を下げるなど」


「じゃあシズキ、フーカの家に行っておいしい晩御飯をごちそうになって明日の朝一で帰りましょ?エルフ様は人間ごときに手を借りることなく自分たちで何とかするそうよ?」


元より彼女にお礼をされに来たんだからいいでしょ?とメフィは静希の近くによって来てその頭を撫でまわす


「五十嵐と言ったな、飼い犬の躾がなっていないぞ、これだから人間は・・・」


どうやら長は静希とメフィの関係を大きく誤解しているようだった


この関係はペットと飼い主などでは決してない


「お言葉ですが、俺は別にメフィを使役しているわけでも、ましてや犬扱いしているわけでもありません、ただの対等な存在として一緒にいます」


「それに、その人間ごときにできることもあんたはできないんだから、偉そうなことを言うのはやめなさいよね」


メフィの言い草に城島はすでに先ほどまでの怒りはどこへやら、顔をゆがめて必死に笑いをこらえていた


それは他の生徒も同様で、雪奈に至ってはすでに腹を抱えている


唯一明利だけがおろおろと周囲に視線を移し続けていた


「さあどうするの?村の為に頭を下げるか、くだらないプライド抱きしめてシズキへの依頼を諦めるか、二つに一つよ?」


メフィをひとしきりにらんだ後、その視線は静希に向く


まるで親の仇でも見るような目だ


「俺に矛先を飛ばさないでください、こいつは俺の言うことなんてまるで聞かないんだから、こっちだって心臓握られているようなものなんですよ?」


いつでも殺すことができるほどにメフィの力は絶大だ、そのことは長もよく知っているのだろう


静希から何とかしようと思っていたのだろうが、静希がメフィを使役していたのであればそれも上手くいっただろう


だが二人の関係はあくまで対等、互いの意志がぶつかった時は力ずくで通すしかない


今回の場合メフィは長に頭を下げさせたい


それは人にものを頼むのなら当然のこと


悪魔が言うと酷く滑稽だがその通りだ


一方静希は立場上エルフと人間の関係を悪くするわけにはいかないので穏便に話を進めたいのだが絶対に譲れないという程のものではない


今回折れるのは静希の方だった


城島としては自分の言えないことをメフィがズカズカと言ってくれるから大助かりといった様子で笑っている始末


「そこまでにしておけメフィストフェレス、こんなにたくさんの人間を前に頭の固いエルフが頭を下げられるはずがないだろう」


「あら、貴女も見たかったんじゃないの?こいつが頭を下げるさまを」


そりゃもちろんと言いかけて城島は口をつぐむ


「今は神格に対しての情報が第一だ、くだらないプライドがどうのこうの話している余裕はない」


「なかなか言うじゃない」


メフィは城島の言葉に従いすごすごと静希の後ろに戻っていく


今この場を支配しているのは悪魔メフィストフェレスだったはずなのに、城島が全ての流れを持って行ってしまった


エルフの長は何も言うことができずに悔しそうに城島を睨みつけている


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