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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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険悪な言葉と空気

何秒ほどそうしていただろうか


もうどうにでもしてくれと静希達が嫌気がさしていると、やがてエルフの長が折れる


「いいだろう、この者たち以外は席を外せ、石動の、お前もだ」


「は、はい・・・」


長にいわれ、その場にいた石動はゆっくりとお辞儀をしてその部屋から出ていく


どうやらここからの話は誰かに聞かせたくはないようだ


ようやく本題かと全員が身構えていると、長が全員を品定めするように視線を移す


その視線は鏡花と熊田の二人に注がれているようだ


「うちの生徒が何か?」


「そこの黒髪の女児か、またはそこの姿勢のいい男子か?」


「ですから何のことやら」


「未だに白を切るか、忌々しい」


だんだんと長も苛立ちが募ってきたのか、脚を崩しながら城島を睨む


「東雲の娘には悪魔がついていたはずだ、その悪魔を滅ぼしたのは誰だ?」


「さあ、誰なのでしょうか、私はその場にはいませんでしたのでわかりかねます」


「いい加減にしろ、私の目は節穴ではないぞ!そこの女児と男子の漂わせる魔素は他のものとは一線を画す!この二人のどちらかであろうが!」


魔素を操り、その力の恩恵を一身に受けるエルフ、その長ともあれば他人の魔素の違いさえ知覚できるようで、この中の確かな実力者を鏡花と熊田に絞ったようだった


声を荒げる長に対し、城島は笑ったままである


「では、そのどちらかが貴方の言う悪魔を滅したのだとして、何をさせるつもりですか?書類には神格の鎮静化としか書かれていませんでしたが」


「そのままの意味よ、我々が誤って召喚してしまった神格をこの村から消しさえすればそれでいい、で、どちらがやったのだ!?」


老人は辛抱強いなどと誰が言ったのだろうか、目の前の長は辛抱のしの字も知らないとでもいうかのように怒鳴り散らしている


普段は温厚などと言われてももう信じる気にはなれないなと思いながら静希はため息をつく


「ですから私もわかりかねます、そう目くじら立てないで」


「ふざけるな!あの下賤な悪魔を退治した者でなくては神格の相手など務まらん!さっさと吐かんか!」


『なんか偉そうねあのジジイ』


メフィが頭の中に意識を飛ばしてくる、その声は少々苛立ちを含んでいる


目の前で下賤呼ばわりされたのだ、腹が立つのは当然だ


『お前までヒートアップしてくれるなよ?事態がややこしくなりかねないんだから』


『わかってるわよ、でもあぁまで粋がってると潰したくなるわね』


何を潰したいのかは聞かない方がよさそうだと顔をしかめながら静希はだんだん正座の体勢が苦しくなってきた


脚の感覚がなくなりつつあり、しびれてきているのがわかる


「静、お前もか・・・」


「雪姉もか・・・」


「俺もだ・・・」


静希も雪奈も陽太も正座になれておらず、脚のしびれを訴え始める


小声で何とかやり取りするがその中でも長と城島の口論というより長の一方的な怒号が響き渡る


「足崩しちゃだめかな・・・?」


「お偉いさんの前でそれはまずいだろ、我慢しろ」


「でも静、もう感覚ないよ・・・」


「あんた達静かにしてなさいよ」


三人とは対照的にしびれをまったく感じさせずに背筋をぴんと伸ばした鏡花は美しくすらある正座を見せていた


「何でお前は平気なんだよ・・・脚・・・」


「こんな物慣れよ、いろんな場所で正座すること多かったから慣れたのよ」


「くそ、なんかずるしてるんじゃないだろうな・・・」


「変な因縁つけないでくれる?ただでさえあのお爺さんに睨まれておびえてるっていうのに」


どこがおびえているのだと突っ込みたくなるがここはこらえているがそろそろ限界だ


「先生、そろそろ本題に入ってください、不毛な言い合いはもう十分でしょう」


「あぁすまないな少し熱くなっていたようだ」


静希の言葉に城島は少し冷静さを取り戻したようだったが、長は違った


「不毛だと・・・?よりにもよって一番弱そうな魔素を漂わせる小僧が生意気を言いよる、貴様程度の屑が口を出すな愚か者!」


その言葉に城島は笑い、そして城島の後ろにいる静希を除く生徒の顔色が変わる


そしてその言葉に反応したのはこの場にいる者だけではなかった


「へぇ・・・よくぞ言ったわエルフ如きが・・・」


静希がトランプの確認をする暇もなく、長の後ろに今最も見たくなかった存在がいた


背後の存在に静希達より数瞬遅れて気付いた長はあわてながら後ずさりする


「き・・・貴様・・・!」


「ふふふふ、お久しぶりねエルフの長、下賤な悪魔が現れてやったわよ?」


おびえながらメフィを見上げる長を見て城島はあーあまったくと額に手を当てながらも非常に嬉しそうな顔をしていた


それは静希以外の班員も同じだった


「なぜお前がここに・・・そうか退治したのではなく服従させたのか・・・誰だ!?この悪魔を使役しているのは!?さっさとこの売女を下がらせろ!」


長が全員に向けて怒号をあげるが、誰も動こうとはしない


「無駄よ、私は誰に従っているわけでもない、私は私の意志で貴方の前にいるのよ?」


「ふ、ふざけるな、ならばなぜ私の前に来た?何が目的だ」


「あら知りたいの?私をあんないたいけな少女に宿らせた貴方を殺したくて仕方がないのよ?ただそれだけ」


右手の指を長の首元に添えて、左手で光弾を作り始める


「や、やめ・・・!」


「エルフは高尚な生き物なんでしょう?下賤な悪魔ごとき払って見せなさいよ、ほら、ほら、ほら!」


あまりの恐怖に長が顔をゆがめていると、メフィと長の間に手が伸びる


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