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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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東雲家

目の前に広がるエルフの村に、全員が息をのむ


こんな山奥で電気が通っている様子もないのに村のところどころで設置されている街灯のようなものが周囲を照らしている


電線もなく地面は土がむき出し、何か配線があるわけでもなく、柱の先に取り付けられた球体は煌々と光を放っている


そしてその球体はところどころにある家の玄関先にも取り付けられており、エルフの村の異様さを全員が実感していた


家の外観は木でできているのにもかかわらず現代の家屋と何ら遜色なく、みな一様に広く大きな家を構えていた


あたりを歩いている人々はみな着物にも似た不思議な衣服を身にまとい、なおかつ仮面で顔を隠していた


「藍姉さん!」


村の一角から小さな影がこちらにやってくる


その姿とその仮面に静希達は見覚えがあった


牧崎村であったエルフの少女東雲風香だった


「五十嵐さん達もようこそいらっしゃいました、先日のお礼、こちらから出向くところをこちらまでごそ、ごそくろう頂き、誠にもうしわけありません、どうぞゆっくりとお過ごしください」


恐らく今までこの言葉をずっと考えて用意していたのだろう、途中たどたどしくなりながらも礼儀正しく頭を下げる


「あぁ、その後どうだ?身体の調子は」


「はい、幹原さんの言うとおりにしていたらすぐによくなりました、本当にありがとうございます」


深々と頭を下げる東雲の後ろで、もう一つ影が動く


「東雲、後ろにいるのは?」


「あ、この子は双子の妹の優花です、優花、私を助けてくれた人たちよ」


「は、初めまして、東雲優花です・・・この度は姉が本当にお世話になりました」


風香と同じく礼儀正しくおしとやかな女の子だ、背格好も声もまったく同じようで口調すら似ている、仮面の模様でしか判別ができない


「そうかしのの・・・二人とも東雲だもんな・・・どう呼び分けたものか」


「で、でしたら名前で、どうぞ名前で呼んでください」


「そうか?じゃあ風香、無理しないで療養しているんだぞ」


「はい」


頭をなでると風香は嬉しそうに肩をすくめながら石動の後ろに姉妹そろって隠れてしまう


「そういえば風香と一緒に優花も学校は休んでるの?」


「は、はい、私も姉と一緒に精霊の召喚の儀を・・・」


なるほど以前城島のいっていた資料通りだ


だが療養中の風香と違いなぜ優花まで公欠を続けているのだろうか


「で石動、今日の宿は?野宿は御免だぞ」


「それなら私の」


「私の家に来てください」


石動の言葉を風香が遮って城島に向けて声を飛ばす


「お世話になったのは私です、少しでも恩返しがしたいです、どうぞ今日はうちでくつろいでいってください」


「・・・というわけらしいぞ」


城島も少し面食らっているようだ、言葉にいつものような勢いがない


「だが風香、お前のご両親は納得済みなのか?」


「はい、すでに話はしてあります」


どうやら静希達が来ることになってすぐに説得したらしい、なんとも逞しい少女だ


「じゃあ、東雲姉妹、案内を頼む」


「「はい」」


東雲姉妹の後に続きながら案内されていると何人かのエルフとすれ違い、こちらを見ているのに気がついた


その誰もが大人のエルフ、しかも年配のようでこちらを見る目は鋭く、まるで威嚇する獣のようだった


「気にするな、エルフはこういう生き物だ」


その視線に気がついた静希に、城島が小声で声をかける


「あいつらは自分たちが高尚な生き物だという誇りを持っている、そして我々人間は下賤な生き物だと蔑んでいる、ああいう目をするのはそれが常識になってしまっているからだ」


「・・・昔の名残ですか・・・」


「そういうことだ」


小声で言葉をかわしながら数人のエルフをやり過ごして一つの家の前につく


しばらくして門柱に東雲と書かれた家の前につき、姉妹はその中に先に入っていく


「本日はようこそいらっしゃいました」


「どうぞ我が家と思い、存分にくつろいでいってください」


どうやらそれが言いたかったらしく、玄関先で指をそろえて深々と頭を下げていた


姉妹二人がそんなことをやっていると奥から両親らしき二人が現れる


「これはどうも喜吉学園のみなさん、遠いところご苦労様でした」


「先日は娘が大変お世話になったとかで、本当に申し訳ありません」


出てきたのは姉妹と同じく仮面をつけた夫妻らしき人物


これも外にいた人物達同様着物のような特殊な衣服を身につけている


やはりこうも丁寧な言葉を仮面をつけて言われると非常に違和感がある


「いえ、こちらも大事がなくて何よりでした、それより申し訳ありません、突然ぞろぞろと押しかけて」


「いえいえ、たいした家ではないですがくつろいでいってください」


「客間へご案内します」


「ありがとうございます」


東雲夫妻との対話中、城島はずっと丁寧な言葉を作り続けていたが、静希や他の班員は気付いていた


主人がご苦労さまでしたと言った瞬間から、城島からわずかにではあるが殺気が飛んでいた


それに主人が全く気付かなかったのは不幸中の幸いだろう


だが見ている静希達からしたら気が気でなかった


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