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J/53  作者: 池金啓太
二十三話「世界に蔓延る仮面の系譜」

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三人の契約者

「・・・はぁ・・・あのバカの予想がこんなところで当たるなんて・・・災難だ・・・」


「・・・私の目的は答えた・・・次はお前の目的を明かせ、私を捕えて話を聞くだけが目的ではないだろう」


悪魔の契約者を捕える、それだけ聞けばあらゆる面で利益や対応を思いつくだろう


武力的でも、勢力的にも悪魔の契約者が一人いるだけでずいぶん変わる、それを表しているのがこの現状だ


軍は相手にならず、静希とほぼ一対一の状態になってしまっているのだから


「俺の目的は言ったとおり、お前を捕まえて話を聞くことだよ、もっと言えば俺はさっき言ったリチャード・ロウを追ってる、お前がその手がかりになればと思ったんだけどな」


当てが外れたよと静希は肩を落として見せる、せっかく手がかりが得られるかと思ったのに自分やエドとそこまで境遇が変わらなかったことを知り落胆してしまっていた


振出しに戻るとはこのことだ、何のためにフランスまでやってきたのかわからなくなってくる


「・・・信じると思うのか?そんな言葉だけで」


「信じる信じないは勝手にしろ、少なくとも俺がリチャードの仲間だったなら自分をかぎつけようとしてる奴がいたなら即始末する、そこの悪魔、未来が見えるんだろ?俺がこいつにこれ以上危害を加える未来は見えてるか?」


静希はすでにカロラインに攻撃するつもりはない、少なくとも彼女から攻撃を加えない限りは自衛以外での攻撃はしないつもりだった


そしてオロバスはメフィに視線を向けた後能力を使ったのか、小さく集中した後でゆっくりと首を振る


「君が彼女に攻撃する未来は見えない・・・少なくとも危害を加えるつもりはないのは真実だ」


静希の言葉は信じられなくても、自分が契約する悪魔の言葉は信じられるのか、カロラインは先程までむけていた強い疑いの視線を僅かにやわらげた


だがその視線には未だ疑念が残っている


「・・・ならなぜおまえは奴を追っている・・・お前も悪魔の契約者のようだが・・・何が目的で」


「・・・そうだな・・・どこから説明したもんか・・・」


そう考えを巡らせていると足音と共にその場にさらに悪魔が増える


現れたのはエドとカロラインの弟を乗せたヴァラファールだった


悪魔がさらに現れたことでカロラインとオロバスは警戒の色を強めたが、静希とメフィは全く動揺していなかった


「お疲れエド、首尾は上々みたいだな」


「あぁ、最初暴れてたんだが急におとなしくなってね、頼まれた通り連れてきたよ」


ヴァラファールからフリッツを下ろすと、彼は姉であるカロラインの元へと駆け寄る


そして傍に立った状態で静止した、感動の再会にしては少々薄い印象を受けたが、今は後回しだ


「それで、彼女が例の?」


「あぁ・・・聞いたところによるとお前と同じ境遇らしいぞ」


その言葉にエドは向けていた敵意をわずかにおさめる、自分と同じ境遇という言葉に少なからず思うところがあったのだろう


「その言葉に確証は?」


「ないな、言葉だけじゃ信用には値しない、判断するのはこれからだ」


静希とエドがそう話す中、悪魔の契約者三人がその場に集合した今、カロラインは完全に劣勢となっていた


単純換算でも二対一、もはやカロラインが勝つ目は万に一つもないのだ


「お前たちは一体何なんだ・・・なぜ悪魔の契約者が協力し合っている」


普通ならあり得ない光景だと思ったのか、声を震わせながらカロラインは二人を睨んでいる


どう説明したものかと静希とエドは少し困った顔を浮かべ、視線を合わせた後で小さくため息をつく


「カロライン、お前の家族が殺された召喚があったのは六月、間違いないな?」


「・・・そうだ・・・それがどうした」


急に話が変わったものの、彼女はすんなり答える、恐らくこの言葉には嘘はないだろう


もっとも、先程言ったことをすべて信用するわけにはいかない、警戒は怠らずに静希はさらに言葉を続ける


「俺が関わった召喚事件が起こったのは四月、こっちのエドが関わった召喚事件が行われたのは八月だ、そしてエドの事件の時はお前の時のように何人も死人が出てる」


ここまで言えばわかるか?と静希はかぶっていた仮面を外し素顔を見せる


信用させるために必要なのは手の内を明かすこと、顔も見せずにこちらの話を信じてもらうつもりはなかった


静希の話を聞いて、思い当たることがあったのかカロラインは目を見開いて僅かに口を開閉して見せる


「・・・まさか、お前達も奴に・・・?」


「俺の場合は本当にただ巻き込まれただけだったけどな、こっちのエドは友人を殺されてる・・・間接的にではあるけどな」


「二か月おきに行われた召喚事件、それに関わってる人間がいるという事で何か情報を得られないかと思って、僕とシズキは君に接触しようとしたんだ」


結果はまぁ空振りに近い形だったけどねとエドは小さく肩を落とす、彼としても手がかりを得られるのではとかなり気合を入れていただけに落胆の色は隠せないようだった


静希もそうであるように、また彼もリチャード・ロウにはいろいろと返さなければいけないものがあるのだ


「つまり、三人は良くも悪くも同じ境遇の仲ってことよ・・・さっさと敵意向けるのやめてくれると助かるんだけど?」


「そういうなメフィストフェレス、口で言ってすぐ理解できるような状況ではないのはお前にもわかるだろう」


オロバスとにらみ合いをしていたメフィと先程やってきたヴァラファールが静希達に声をかける、さすがにこの状況を長時間つづけているのは問題があるだろう、少し場所を変えたほうがいいかもしれない


「エド、こいつの保護を頼んでもいいか?こっちはこっちでやる事がある、こいつの処遇も考えておかなきゃいけないし、何より周りの軍を黙らせないとな」


「わかったよ、とはいえ少々無理矢理突破して来たからなぁ・・・どうしたものか・・・」


さすがにここまで来るのに誰も見られずに来たわけではないようだった、無理もない、軍と真正面からやり合っているエルフを半ば強引に引き連れてきたのだから


だがそれなら取れる方法はいくらでもある、こちらが動かすことのできる駒はいくらでもあるのだから


「手はずはこっちで整えるよ、少し時間はかかるけどな」


そう言って無線で鏡花たちに連絡を取りながら静希はカロラインの前に片膝を立てて座る


「カロライン、今からお前の監視にこいつがつく、話を聞くなり事情を確認するなり好きにしろ、今夜こいつと一緒に俺たちの部屋に来い、そこで話をしよう、異論はあるか?」


「・・・他に条件は?」


さすがに悪魔の契約者だけあって条件を隠していることくらいはお見通しのようだった


静希はメフィとにらみ合いをしているオロバスに近づいてトランプを一枚取り出す


「お前の悪魔を一度俺の能力の中に入れる、それとお前達に変装を施す、それだけだ」


「・・・入れる・・・それに何の意味がある?」


「答える義務はない、異論は?」


グダグダ言わずにいう事を聞け、静希の言葉は有無を言わさない圧力があった


相手をまだ信頼しきれていない以上、警戒は必要である、自分に対しても、そして監視をするエドのためにも


カロラインはオロバスに視線を向けるが、どうやら彼はこの条件に異論はないようだった、恐らく未来を見たのだろう、信頼する悪魔が大丈夫だというのであれば異論はないとでもいうかのように彼女はしぶしぶ了承して見せた

了承が取れたところで静希はオロバスに自分のトランプを触れさせる、瞬間その体がその場から消えトランプの中に収納される


もしカロラインが悪魔の心臓に細工をしていた場合、これで取り除けたことになる、そして一度トランプの中に入れたことで遠隔での収納も可能になった


最低限の警戒としては必要不可欠なことを終え、静希はオロバスをこの場に取り出して見せた


そして先ほど言ったとおり、静希が仮面を外したカロラインとフリッツに変装を施している中、先程無線で呼び出された鏡花がこの場にやってくる


「静希、首尾はどう?・・・ってなんか妙なことになってるわね・・・」


その場に悪魔三人がたむろしている状況に鏡花はいやそうな声を出しながら近づいてくる


カロラインとオロバスが一瞬警戒の色を強めたが、こちらに敵意がないことを知るとすぐにそれを収める


「鏡花、これからこいつとエドを警戒区域外に逃がす、手伝ってくれ」


「はいはい、また面倒が増えたわけね・・・どうする?地下を進むの?」


「いや入り組んだ場所を迷路みたくしながら一直線に進んでくれ、閉鎖してるところの軍人にあったら迷い込んだ夫婦ってことにしておけ、そうすりゃ問題ないだろ」


鏡花の言う通り地下から進んでもよかったのだが、完全な密室状態で危険人物を鏡花と共にいさせるわけにはいかない、たとえエドが一緒にいても守り切れない可能性だってある


それなら逃げ場があり消耗も少なく済む外で移動したほうが楽だと判断したのだ


「そう言えば陽太は?あいつもこの辺りにいるんだろ?」


「陽太は明利の警護に当たらせてるわ、邪薙だけじゃ不安だしね、なんか用事でもあったの?」


「あぁ、あいつの勘が見事的中したってことを教えておこうと思ってな・・・こっちとしちゃ災難だよ全く」


静希の言葉に鏡花は気の毒そうにしながらその場にいるカロラインの様子を見る


血が滲んでいるとはいえ、いまだ右腕は骨折したままだ、軽く添え木がされているが万全とは言えないようなものだった


「あんたもうちょっとちゃんと手当してあげなさいよ・・・適当過ぎよ」


「仕方ないだろ、止血はできても骨折は慣れてないんだから、エド、こいつの治療も任せていいか?」


「あぁ構わないよ、知り合いに頼んでさっさと治してもらうよ、さすがに即日ってわけにはいかないだろうけど」


こういう時に大人のコネがあると楽なものだ、明利に治療させてもいいのだが、しっかりとした施設で専門の医者に任せた方が成功率は高い


何より今回明利は非常によく働いてくれた、これ以上負担を強いるのは心苦しいのだ


「よしできた、それじゃお前たちは鏡花の案内で外に行ってくれ、鏡花、明利に通信して一般人が紛れ込んでるって報告してナビしてもらえ、ヴァラファールたちは姿隠しておけよ」


てきぱきと指示を出した後で静希は再び仮面をかぶりメフィをトランプの中にしまい込んだ、そして立ち上がるカロラインに顔を近づける


「今日の夜、俺のところに来たら情報共有だ、どうせ相手が同じなら協力も一つの手だ、よく考えておけ」


「・・・」


カロラインはあえて何も答えなかったが、すでに頭の中はぐるぐると何かを考え始めている様だった


それが一体何のことなのかは静希は知る由もない








鏡花の案内でエドとカロラインは無事警戒区域から脱出することに成功した様だった


一般人を装っていたため、外に出るのは容易だったがその後が面倒だった


静希が状況終了を告げ一度研究所に戻るとそこはもう酷い有り様だったのだ


報告としては鏡花たちが上手く悪魔と交渉したとしか知らされていなかったために、まさか機材全て破壊するような状況になっているとは思わなかったのである


召喚自体は成功、だが召喚による結果はほとんどなくなったようなものだ、これを成功と呼んでいいのかは微妙なところである


もっとも静希達は召喚自体を安全に行えるようにすればよかっただけであり、そこまでカバーしなくてはならない義務はない、何より悪魔の存在を軽視した研究側に問題があっただけのことである


「お疲れ、ずいぶん酷い有り様だな」


「あぁ、さすがに肝が冷えたっつーの、そっちはどうだった?」


まぁまぁだなと返すと、陽太はそうかと興味なさそうに呟き、静希を明利の傍に引っ張ってくる、彼女はすでに仕事を終え、通信を終了し索敵に集中していたが静希が来たことで状況が終了したことを悟ったのか安堵の息を吐く


「お疲れ様、無事でよかった」


「あぁ、今回は収穫は微妙だけど、まぁ怪我は少なかった、不安にさせて悪かったな」


明利の頭を撫でながら静希もようやく緊張の糸が切れたのか頬を緩ませる、今まで面倒な敵を相手にしていただけにその消耗は大きい、まだ完全に終わったわけではないとはいえ一息つくことはできたようだった


明利にあった後静希は機材の塊の置いてある場所に近づく、そこには現場に指揮を送り続けているモーリスと、機材の残骸を見つめ続けているハインリヒの姿がある


「侵入者は無事『排除』しました、そちらの成果は・・・微妙だったようですね」


「ミスターイガラシ・・・今回の召喚は・・・成果はほとんどないと言っていい・・・上にどう報告すれば・・・」


「人的被害がないのならまた次やればいい、悪魔を軽く見過ぎたのが原因でしょう・・・むしろこの周辺に悪魔が複数いたのにもかかわらず人的被害がゼロだったのは運が良かったという言葉では片づけられませんよ」


研究所の周囲にいた悪魔の数は四、そのうちの半分は静希とエドだが、敵対する可能性のあった悪魔が二体もいた状態で死人が出ておらず、機材の被害だけだったのは幸運というにふさわしい


鏡花が上手く立ち回ってくれたおかげで随分と楽になった、後ほど個人的に礼を言わなくてはいけないだろう


彼女がいなければそれこそ四体の悪魔が交戦状態になるかもしれなかったのだから、彼女の功績は計り知れないものがある


「あなたたちの上の存在がどういう意図で今回の実験を行ったのかは知りませんが、もし次があるのであればもっと戦力を増やし、なおかつ専門家を呼んだ方がいいと思います、次もまた自分たちがいるとは限りません」


「・・・忠告痛み入る・・・とはいえ・・・どうしたものか・・・」


モーリスとしてもどう報告していいものか悩んでいる様だった


何ヵ国かで共同で行っていた召喚実験だっただけに、実験結果はその場にいた人間しか知りませんではお話にならないだろう、実験の結果はデータとして残り、それをまとめて報告してこそ意味がある


生き残ったという意味では彼らの存在自体がデータのようなものかもしれないが、彼らに召喚を命じた人間はそれだけでは納得しないだろう、形として残る結果が必要なのだ


この場にいた各責任者たちも納得していないのは表情を見ればわかる、召喚を主導で行っていたフランスとしてはこの失態は大きいだろう


とはいえここにいても静希達ができることはない、すでに召喚が終わったのであれば後片付けが終わるまでは護衛をするつもりだった


「少佐、俺たちはひとまずこの近辺の警戒をしています、後片付けは迅速にお願いしますよ」


「・・・あぁ、わかっている」


静希達の役目はすでに終わった、後は今回の事の後始末が残るばかりである

こうなってしまえば静希達一班がこの場にいる意味はないのだ


警戒区域外にいる城島達にもこの状況を知らせなければいけない、今回のことも早めに報告しなければならないし今後の対応だって考えなければいけないのだ


後片付けを悠長に見守っておかなければいけないほど彼らは未熟ではないし、静希達もいちいち面倒なことはしたくない


ただでさえ各国の人間が集まっている中でいつまでも顔を晒していたくないのだ、仮面はつけているとしてもその場にいたいとは思わない


「明利、陽太、ここからは外に行くぞ、もうここに用はない」


「了解」


「オーライ、撤収するか」


すでに護衛としての最低限の仕事は終えた、召喚陣も徐々に光を失いつつある、この場所にもはや脅威は存在しない


それに召喚を無事に行わせることこそ静希達の表向きの目的なのだ、静希達が行動するとすればあとはアフターサービスの警備くらいのものである


ともかく警戒区域に人が入らないように注意するだけだ、そしてその間にこまめに外と連絡を取りたいところである


そう言えば自分についてきていた監視を振り切ったまま放置していたなと思い出しながら、静希は明利に預けていた邪薙のトランプを回収する、緊張状態に晒していたために邪薙にも後で礼を言っておかなければならないだろう

小さくため息をつきながら静希は鏡花と合流するためにその場を後にした






静希達と鏡花が合流してから数十分後、通信役の軍人が運よく静希達を見つけ今回はもう切り上げていいとの報告が入った


どうやら責任者たちへの弁明は何とかなったのだろう、後回しにしたかどうかはさておき今日はもう静希達に出番はないようだった


「ったく・・・本当に死ぬかと思ったわよ、あんな交渉もう二度としないからね」


「わかってるって、今回は本当に助かった、お前らが上手くやってくれたおかげで随分と楽になったんだ」


嘘偽りのない静希の賛辞に鏡花はわずかに照れ臭そうにする、事実鏡花はそれだけのことをやってのけたのだ


直接的な攻撃でも能力でもなく、対話によって悪魔を引き下がらせたのだ、その胆力は大人にも勝るものがあるだろう


その気になれば、いやもし機会があれば彼女は静希と同じように契約者になれるかもしれない


「ていうか、あいつ俺らのこと気に入ってたみたいだし、あのまま契約しちまってもよかったんじゃねえの?」


「バカ言わないで、静希みたいに面倒事抱え込むのはごめんよ、それにうちにはベルがいるのよ?悪魔の気配で怯えちゃって生活もままならなくなるわよ」


そう言えばと陽太は鏡花の家にいる犬のことを思い出す、動物は悪魔のような存在に機敏に反応する、単純に危機察知能力に長けているというのもあるが、言葉を介さないが故に自分にとって危険か否かという考え方しかないのだ


話が通じればもっと別な行動もできるかもしれないが、そこは考えてもしょうがないことである


『メフィとしてはどうだ?鏡花と悪魔は契約できると思うか?』


こういう事は直接悪魔に聞いてみるのが一番手っ取り早い、鏡花が悪魔の契約者としての適性があるかどうか、今後面倒に関わってくる中でこれは案外重要なことだ


『そうねぇ・・・好みによるだろうけど、まぁ悪くないと思うわよ?天才肌でありながら人間らしさが無くなってない、そういうのが好みの悪魔はいるわ、ただ苦労するとは思うけどね』


「よかったな鏡花、場合によっては契約者としての適性ありだそうだ」


静希の言葉に鏡花は嬉しくないわよと吐き捨てながら先頭を歩く、今回無駄に精神的に疲れているせいで鏡花はわずかに気が立っている様だった


悪魔だけではなく、敵対関係にあるかもしれない契約者の送迎までやらされたのだ、無理もないかもしれない


これは本当に後日何か奢らなくてはならないなと思いながら静希達は警戒区域の外へと移動し、ホテルに戻る道すがら仮面を外して近くの店に入った

そこには事前に連絡しておき、待っていてもらった大野と小岩、そして城島の姿がある


疲れた様子の静希達を見て、とりあえず大変だったのだろうことを把握したうえで笑顔で迎えてくれた


「お疲れ様、首尾はどうだった?」


「まぁまぁってところです、詳しいことは後ほど話します」


とりあえず昼食をとるべく静希達はそれぞれ注文を済ませ、体よりも疲れた精神を休ませようと大きく息をついた


その様子に城島は大まかにではあるが状況を察したのか、小さく安堵の息を吐いた


「とりあえず、御苦労と言っておこう、私がやることがなかったのは良かったというべきか」


「えぇ、今回は鏡花が上手くやってくれました、今回のMVPは鏡花で決定ですね」


「褒められてる気がしないのは何でかしらね」


静希の言葉を素直に受け止められない鏡花は口を尖らせながらそっぽを向いてしまう


無理をさせたのは理解している、この反応も致し方なしだろう


とはいえ、今のところ一番の懸念だった召喚が終了したのだ、後はエドが監視しているカロラインから話を聞くだけである


その前にいろいろと準備をしておかなければならないなと思い返し、静希は若干嫌気がさしていた


夜までの間に準備を進めておいた方がいいだろう、事前連絡含め重要なことだ


「五十嵐、一つだけ聞いておく、収穫はあったのか?」


「・・・それはまだわかりません、それも含めて今日決まります」


すでにことは終わったはずなのにまだわからない


静希の言葉の意図を察したのか城島はそうかとだけ答えてカップに注がれていた紅茶を口に含む


近くに監視の目がないとも限らない、言葉は最低限に、そして意思疎通は限られている中で行うのが良いだろう


城島も質問を急がなかった、そうできるだけの余裕が幸いにして生まれているのだ、情報が漏れる危険を冒してまで結論を急く必要もない


「せっかく時間ができたんだ、フランスの町でいろいろと観光したいもんだな」


「そうだな、大野さんたちも自由行動でいいですよ、今回はもうやることなさそうですし」


「そりゃありがたい、荒川たちにも伝えておくよ、あいつらも喜ぶ」


せっかくフランスまで来たのだ、この空気を味わっておくためにも羽を伸ばすことも必要である


幸いにして静希達には時間的な猶予ができた、少し位遊んでも誰も咎めないだろう


引率の城島としても静希達がしっかりと実習をこなしたのであればこれ以上何か言うつもりはないようだった


実際の時間で言えばすでに実習三日目、最終日のそれと同義だ、集中を持続していられるのも今日が限界だっただろう、そう言う意味ではいいタイミングで時間が空いたというものである


日曜日で二回、誤字報告五件分で一回、ユニーク累計が1,000,000人突破したのでお祝いで一回、合計四回分投稿です


要するに百万人の人がこの作品を見てくれたってことでいいんでしょうか?同じ人でも累計は貯まるのかな?まぁめでたいことには変わりありませんね


これからもお楽しみいただければ幸いです



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