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J/53  作者: 池金啓太
二十三話「世界に蔓延る仮面の系譜」

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契約者の遭遇

『静希、そっちは大丈夫?』


「問題ない、ぶっちゃけお前らがいないのがかなり面倒だな、動きにくいったらありゃしない」


普段信用できる手札しか使おうとしない静希からすれば、信用ならない上に挙動の遅い部隊を扱う事での戦闘はやりにくさに満ちていた


この状況でもし鏡花たちが近くにいたのなら、静希は間違いなくあそこにいる弟のフリッツの相手を陽太と鏡花に任せていただろう


あの二人であれば、仮に大人のエルフが相手でもいい戦いをするだろう、相性によっては捕えることも可能だと断言できる


自分の指揮する人間の戦力を正確に把握していればどこまで無茶をさせられるかがしっかり把握できるのに、指揮し慣れていない人間を扱うとなるとこうまで面倒だとは思わなかった


「そっちはどうだ?そろそろ前段階が始まるか?」


すでに時刻は九時半を過ぎ、あと十分ほどで十時になろうとしている、そろそろ召喚陣の準備ができていてもおかしくない時間である


『えぇ、今お偉いさんの話をやってるところよ、陽太がやたらと警戒してるわ・・・まぁ私もだけど』


「何が起こるかわからないからな、気を付けろよ」


了解よと鏡花は答えた後で一度無線を切る


気を付けるのは今この場だけではない、鏡花たちのいる場所にも悪魔が現れようとしているのだ、あちらもこちらも強敵がやってくることを考えると頭が痛くなりそうだった


とはいえ相手もそろそろ動き出すだろう


せっかく無関係な子供たちまで巻き込み、弟まで戦場に出して軍の動きをかき乱したのだ、時間が経ってその混乱が無くなるまで待つ必要性がない


そろそろ来る、本体が


そう予想していると同時に、明利からの無線が届く


『新たな侵入者有り、東南東から・・・かなりの速度で移動中です』


「了解、軍の対応は間に合うか?」


『ぎりぎり間に合うと思います、近くの部隊にすでに指示が送られているようです』


こういう時だけは指揮系統が自分の所に無くて安心する、行動するより早くすでに指示が出されているのだから


とはいえ今静希がいる場所とはまた別の方角から来ているところを見ると、恐らく近くにいるこのフリッツは完全に囮だろう


とはいえ可能性を考えれば無視もできない、そこで静希は携帯を取り出しエドに連絡を始めた


「エド、今俺がいる場所の近くに例のエルフの弟がいる、こっちに悪魔がついてる可能性もあるから万が一の時は対応を頼む」


『了解したよ、シズキはどうするんだい?』


「もう一人侵入者が来ててな、たぶんそっちが本命だろうからそっちをチェックしてくる、頼んだぞ」


手札の多さが今の静希の武器だ、こういう時に頼りになる味方がいてくれるとありがたい


位置情報を送った後で静希は通話を切り、フィアにまたがって移動を開始する


明利のナビに従いながら高速で移動すると、その姿を一瞬ではあるものの確認することができた


バイクらしき乗り物に乗っている女性、フルフェイスのヘルメットをかぶっていたために顔までは確認できなかったが、この道を突っ切ろうとしているのは間違いなかった


フィアを走らせ、その先に回り込もうとしたところで、丁度軍の人間がそのバイクを止めようと能力を発動するところだった


だが女性は止まらない、まるで能力がどこに来るか、何をしてくるのかがわかっているかのように回避して見せている


動体視力だけであれだけの動きができるとは思えなかったが、このままでは侵入を許しかねない


相手の速度が速いためにこちらの軍の展開が追い付いていないのだ


組織が大きくなればその分動きも鈍くなる、対して一人だけなら高速で動き、小回りも利く、数の利があるのは向こうも同じという事だろう


だがそう易々と通すほど静希も甘くない


銃を構え、バイクの移動先めがけエドから譲り受けた銃を連射する、正面からの能力とほぼ側面からの銃撃の同時攻撃、物理的によけることができない状況にすることでその動きを止めようとした


だが銃弾がバイクに直撃する寸前で、バイクに乗っていた女性は車体を捨てて飛び降り、受け身をとりながら建物の陰に隠れてしまった


銃弾と能力を受けたバイクは当然のようにその車体に穴をあけ、燃料タンクに穴が開いたのか大きく爆発した


その動きを見て静希は僅かに眉をひそめる


銃弾は音や射撃の状態を見てから回避できるほど遅くない、なのに彼女は静希が銃弾を放ち、着弾するよりも早く回避行動に移っていた


『今の動き、妙ね』


『気づいたか・・・厄介な相手かもしれないな』


トランプの中からその挙動を見ていたメフィもその不自然さに気付いたのか不穏な声を出していた


静希としても、想像しうる上でもかなり厄介なタイプの能力者であることに気付いていた


はっきり言って、前衛タイプと同じくらいに静希の能力との相性が悪いタイプの能力者であることは間違いないかもしれない


「明利、さっき入ってきた奴を目標1とする、今そいつはどのあたりを行動してるか教えてくれ」


『了解、対象を敵対勢力と認定、目標位置としてナビを始めます、現在静希君の現在位置から距離四十メートル、方角は南南西です』


明利のナビに従い、目標を補足しようと動き出すと、周りの軍もそれを追っているのか包囲網を構築しようと動き始めていた


だが明利の声を常に聴いている静希はさらに強い嫌な予感を覚えていた


軍の動きをまるで知っているかのように、その穴をすり抜けていくのだ


これは確定的だなと静希はため息をつく


「明利、目標1の能力は予知系統である可能性が高い、それを少佐に報告、その上でナビしてくれ」


『了解しました、追跡を始めます』


予知系統


現在判明している系統の中でも最も不可思議であり、同時に判明が難しく恐ろしい能力とされている


本人しか自覚できないタイプのものもあれば、大勢にその予知を見せることができるタイプのものも存在する


自身でしか自覚できない能力であれば判明も難しく、隠すことも容易な点から無能力者として振る舞う人間も多い


そして予知系統の能力者は未来が見えるという事以外一般人とほぼ変わらないため、収納系統や転移系統、同調系統などといった後方支援系の能力に分類されるが、その中でも最も戦闘力が劣る系統である


時間はもうすぐ十時、相手からすれば最高のタイミングで、こちらからすれば最悪のタイミングでのアクションだ、あちらもこちらも手一杯でこれ以上対応する相手が増えれば面倒なことになりかねない


もうすぐ召喚が始まろうという中だというこのタイミングで相手が何をしようとしているのか


軍の機動力だけでは心もとない、ここは静希が一度足止めをするしかないだろう


ファーストアクションは可能なら静希はしたくなかったが、もし相手の目的が侵入だったのならこれ以上研究所へ近づかせるのは危険だ


明利の指示通りフィアを高速で移動させ、走っていたその方向に先回りする


唐突に現れた巨大な獣と、それにまたがる仮面をつけた男が現れたことでヘルメットを付けた女性は僅かに狼狽した後、こちらに銃を放ちながら細い路地へ入っていく


すぐさま建物の影に隠れ銃弾をやり過ごすと、再びその先に回り込もうとフィアを走らせる


銃弾を使ってきたという事は能力による攻撃ができないのか、それともしたくないのだと予想できる、まだ悪魔を出すようなことはないのか、それとも悪魔は出せないのか


どちらにせよ静希がやることは決まっている、あのフルフェイスのヘルメットを外す、それが最優先だ


「オルビア、今度はすれ違いざまに一度接触する、お前は一瞬体を出して相手のヘルメットを奪ってくれ」


「了解しました、そのまま組み伏せても構いませんか?」


「あぁ、可能ならそうしてくれ」


ヘルメットの留金を付けていた時、一瞬の接触では外すのは難しいかもしれないが、静希の姿しか見せていない状況で予想できない第三者からの接触があれば隙は生まれるかもしれない


この行動には相手の能力がどこまで有効なのかを確認する目的もあった


予知系統といってもその効果はさまざまである、不特定な未来が見える人間もいれば、一定時間以内の未来しか見ることができなかったり、見える状況や場所が限られている場合がほとんどなのだ


彼女の未来予知がどこまでのものなのかを確認するという意味でも、この行動は必要である


明利のナビに従い、今度は背後から急襲する形で高速で接近すると、距離がゼロになるより前にヘルメットの女性は振り返り、銃をこちらに向けてくる

この程度は予想していた、フィアを縦横無尽に駆けさせて銃弾を回避しながらすれ違いざまにその頭部へと剣戟を与えようとする


だが、女性はまるで剣の軌道がわかっているかのようにゆっくりとその剣を避けて見せた


完全に回避したと思ったのだろう、そのまま路地に入ろうとしたその動きを、剣から姿を現したオルビアの手が頭部を掴むことで阻んで見せた


「逃げる前にその御尊顔拝ませてもらうぞ、侵入者」


オルビアは拘束を振り払おうとする女性の腕をかわし、第一目標であるヘルメットの除去を最優先にその体を動かした


そしてそのことをわかっていたからか、女性はヘルメットを守るよりもとにかく組み付かれないようにオルビアを蹴り飛ばした


蹴り飛ばされ、地面を転がったオルビアの腕には、確かに女性が被っていたヘルメットが存在した


主の命令を完遂したオルビアは満足そうに剣の中に戻っていく、そして静希も自らの剣の行動に満足しながら笑みを浮かべる


ヘルメットをとったことで見ることができたその顔は、資料にあったカロラインに相違ない、半分だけ割れた仮面と、そこから覗く顔が、彼女がカロラインであることを告げていた


「ようやく会えたな、悪魔の契約者、カロライン・エレギン」


800回目なので二回分投稿


予約投稿が続いています、きっと誤字が溜まっているんだろうと予想しています、申し訳ありませんがもう少々お待ちください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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