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J/53  作者: 池金啓太
一話 「引き出し」
8/1032

決着

「勝負あり、予想通りの結果になったわね、イノシシ君」


地面から首だけ出した陽太を見下ろして鏡花は勝ち誇る


「んだとこらぁ!何が最高の壁だ!あっさり砕けてんじゃねえか!なめんのも大概にしろ!」


「やめとけ陽太、お前の負けだよ、どう見ても」


監督役二人が駆け寄ると陽太はますます出せだのふざけんなだの首だけで暴れ出した


「だいたい何でお前が俺の後ろにいたんだよ!壁の向こう側にいたんじゃなかったのかよ!」


今だ状況を理解できない陽太は顔から上だけ炎をたぎらせて怒り心頭だ、冷静さを完全に失っていらっしゃる


「お前が壁に突っ込む寸前で清水は壁を飛び越えたんだよ、傾斜をつけたのはお前の攻撃を防ぐためじゃなくて、ただ飛び越えやすくするためだ、御大層に階段まで作って」


砕けた階段の破片を持ち上げると壁には直角の階段があった形跡がある


先ほどの再現をするならこうだ


あらかじめ階段のできている傾斜付きの壁を作り出しておく、陽太が突っ込んでくるのを見計らって壁をかけ上がりちょうど壁の真上、壁への攻撃の瞬間からは陽太から死角となる一瞬に陽太の頭上を軽々と飛び越え悠々と着地、砕け散った壁ごと全身をコンクリートで包みこむ


「つまりお前は誘われてまんまと罠にかかったんだよ、手を抜かれたままな」


その言葉に鏡花は少し驚いた表情を見せていた


「んだと!?お前手抜いてたのか!?」


未だ首のままの陽太は怒りが加速していく、負けただけならまだしも手を抜かれた状態で負かされるのは屈辱以外の何物でもなかった


「へえ、よくわかったわね」


「形状変換だけのしかもあの程度の質量変換の能力ならSランクはつかない、それにあんだけハイレベルの形状変換使える人間が他の変換能力を使えないっていうのもピンとこなかったし、一瞬だけ状態変換を使ってたとこみると他にも隠し玉があるんだろ?どうやって陽太の突撃のタイミングを読んだのか、そこまではわからないし」


黙って聞いていた鏡花は笑いをこらえながら拍手する


「すごいわ、ちょっと見ただけでよくそこまでわかったわね、このイノシシ君とは違いそうね」


「誰がイノシシだ!」


「なら闘牛の方がいい?」


「どっちもどっちだ!」


「とにかくお前の負けだ、こいつの言ってることももっともだって十分わかっただろ?わかったら能力解除しろ」


未だ頭だけで燃え続けている陽太は納得いっていないようでもあったが、このままではこの状態から解放してくれないと察したのか渋々能力を解除する


「で、でもよく陽太君の能力の弱点に気付いたね」


明利の言う陽太の能力の弱点、それはつまり炎の依存だ、この藍炎鬼炎は炎がなくては自身の肉体強化が行えない、つまり炎が消えてしまうと何もできなくなってしまうのだ


「確信はなかったんだけどね、こいつを石の手で握りしめた時、身体を石で覆ってる分ちょっと炎の量が減ったでしょ?その時あの手を壊すの時間がかかってたからもしかしたらってね」


「よくそれだけでわかったな、もし違ってたらどうするつもりだったんだよ」


「その時は反撃の隙を与えずに地面に引きずり込むつもりだったわ」


この自信はさすが天才というか、やはり静希たちとは格が違うのだなと確信した


「どうでもいいからこっから出せよ!いい加減この体勢きついんだけど!」


「あ、忘れてたわね、ごめんごめん」


短い集中の後に手をコンクリートに置くとゆっくりと陽太の体が地面から生えるように摘出されていく


「で、二人としちゃどうなのさ、すっきりしたわけ?」


「すっきりできるか!こっちはフラストレーション溜まりまくりだっつーの!」


「私はすっきりね、やっぱり間違ったことは言ってないし、こんな直線的で突っ込んでくるだけなら中学生だって勝てるわ、もう少しテクニックを学びなさいよイノシシ君」


「んだとこるぁ!」


だめだ、このままいくとまた喧嘩になる


静希はもうすでに諦めかけている


明利に至っては言い争いする二人への恐怖で静希の後ろに隠れてしまっている


こいつらの相性は最悪、直線的で攻撃的な陽太に技術が高くいいたいことはまっすぐに言う鏡花、互いが互いに売り言葉に買い言葉、いやどっちかというと陽太が一方的に言われているような印象を受けるが、どちらにせよこの二人は相性が悪い、能力の相性はよさそうなのに性格が合わなさすぎる


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