精霊と魔素
週末の金曜日、静希達は授業の終わった後、多目的室に集まっていた
各自装備と着替えなどを持って集まっていた
「よし、ではこれより校外実習を始める、目的地はエルフの村、任務完了は村に召喚された神格の鎮静化、私が付き添いおよび審査員、監査員は前回と同じ先生だ」
城島の言葉にみんな気を引き締めるが相変わらず監査員の先生は姿が見えない
「先生、思ったんスけど監査員の先生の名前とか教えてくれないんですか?」
「あぁ、教えると色々と便宜を図ってもらったりと交渉する生徒がいたことがあってな、監査員に関しては名前等は教えられない」
なんともどう呼んだらいいのか困る話ではあるが、前回と引き続きどうやらこの班の引率の先生はこの二人に決定してしまっているようだ
悪魔に関わってしまった以上仕方がないとも思えるが
「では石動、村まで案内を頼むぞ」
「はい、ここから電車に乗って途中から各駅に乗り換え、途中でバス、そこからは歩きです」
「どのくらいかかる?」
「そうですね、夜までには到着します」
どうやら前回の牧崎村と同じくかなり時間がかかるようだ
しかも途中から歩くとは、到着までが大変そうだ
「今回は前回の反省を含めてトランプを持ってきたぞ、暇は持て余さないぞ」
「私はおかしも持ってきたわよ」
陽太はトランプを、鏡花はスナックやいくつかのお菓子を取り出す
「行楽気分はいいけど、引き締めるタイミングわかってるよな?」
「「もちろん」」
こいつらやっぱ仲がいいのではと確信めいた物を感じながら静希は荷物を背負う
時刻は十六時、今から出発して夜には着くということはやはり三時間近くはかかりそうだ
各駅停車の電車に乗ってゆられて数分、あたりの風景に緑が増えだしたころ
「そうだ石動、エルフについてもうちょっと教えてくれよ」
電車の中で陽太がジョーカーを引きながら石動にそんなことを言った
「と言われても、何を話せと?」
「精霊とか、身体の違いとか、あとはそうだな、何でそんな侍みたいな口調なんだ?」
「陽、身体の話を女の子にするのはあまりほめられたことではないぞ?」
陽太からジョーカーをピンポイントで引き当てながら雪奈がぼやく
「で、でもちょっと気になるよね」
雪奈から受け取ったハートのAを手札に加え、明利は捨て場にAを二枚捨てる
「まぁいいたくないなら言わなくてもいいけど、精霊とかファンタジーじゃない?気になるでしょ」
明利からスペードのJを受け取りながら鏡花は何も捨てずに悔しそうにする
「確かに、精霊などは気になるところではあるな、見たこともないから興味深い」
鏡花からスペードのJを受け取りそのまま捨てる熊田が嬉しそうにほほ笑む
「なんだ?精霊などは信じられないか?」
「いんや、いてもいいと思うぞ、というよりうちの班は全員いると思ってるだろうな」
熊田からハートの8を引きながらそのまま捨てる静希
なにしろこの班の全員が精霊どころか悪魔を見ているのだ
そしてその悪魔は静希と共に暮らし生活までしている
そんな状況を知っていて悪魔がいることを知っているのに精霊がいないとは思えなかった
「そうか・・・では精霊のことを少し話そうか」
静希からクローバーの7を受け取りそのまま陽太の方へ手札を向ける
「私達エルフが精霊を使役して能力を高めていることは知っているか?」
全員がうなずく中で石動はうむとうなずいて話を続ける
「私たちの能力によって召喚する精霊の種類が違うんだ」
「精霊に種類なんているのか?」
「あぁ、土、水、火、木、風、他にもいくつか属性がある、その中で私は水の精霊を使役している」
精霊に種類があるとなるとそれこそゲームなどの精霊のそれに酷似してきている
まるで本当にファンタジーの世界だ
「それってなんか意味あんのか?」
「もちろんある、たとえば火を発現する能力者がいた場合、火の精霊を使役できればその能力は急激に上昇する、逆に水の精霊を使役した場合能力が変貌したり、弱まったりしてしまうこともある」
「魔素にも属性がある、それがエルフの定説だったな」
別の席でその様子を見ていた城島が言葉を割り込ませて全員が顔を向ける
「魔素に属性なんてあるんですか?」
「ある、魔素はそもそも生き物や物質、あらゆるものが生み出し続けているものだ、そこにはあらゆる成分が存在する、その成分の傾向の偏りのことをエルフは属性と呼んでいる」
その通りですと石動はうなずき、再度話を続ける
「能力者は能力を使う際、無意識に自身の使う能力に最適な魔素を吸収、配合し能力を使っている、我々はその吸収と配合を自身で意図的に行うことで能力を強化している」
「使う魔素の多さだけが能力の強さの秘密じゃないんだな」
「そうだ、もっとも意図的にとはいったが、それも感覚的なものではあるからそれほどたいしたものではない、だからこそ同じ属性の精霊がいると吸収する魔素が増え、配合の効率が上がり、威力が増すんだ」
石動は巡り巡ってきたジョーカーを手にしながら静希を軽く睨む
静希はまんまとジョーカーを渡せたことにニヤニヤしていた
「ひょっとして成長につれて能力の威力が上がるのって」
「そうだ、その配合の効率と、最適な配合を身体が徐々に覚えていくからだ、無論限界はあるが」
限界、つまりそれは成熟であり円熟しているということでもある
そう考えると静希の能力はすでに円熟していると言ってもいい




