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J/53  作者: 池金啓太
二十三話「世界に蔓延る仮面の系譜」

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目的とお土産

静希は考察する、一体悪魔の契約者カロラインは何を目的にやってくるのだろうか


召喚自体を止めるため?


可能性はある、犯罪者でありながら他国からの依頼を受け召喚自体の妨害を命じられた可能性も十分考えられる


召喚自体は目標ではなく、それを護衛している軍への干渉が目的?


これも可能性としては十分あり得る、召喚という一大的な実験を前に、それを目的としていると見せかけて軍部への攻撃を目的としているとしたら


他国から軍部への攻撃を命じられ、相手の軍事力を減退させることが目的となればこれもあり得ることだった


召喚実験の関係者に接触するため?


可能性としてはある、召喚自体は目的ではなく、召喚に関わる研究者こそ最大の目的である可能性は否めない、召喚自体に間に合うよりも研究者を攫うことが目的だとしたら


召喚が可能な研究者の利用価値はかなり高い、それこそ他国にわたるようなことがあればかなり面倒なことになるだろう


考えれば考えるほどに厄介な事案だと思いながら、今回自分たちがやることがどんどん明確化していく


仮にどんな目的があったとしても、悪魔の契約者を拘束してしまえばそこまでだ


静希にかかるプレッシャーと負担がその分増えることになるが、そのことは承知で今回のことに首を突っ込んだのだ、もう覚悟はできている


「そのことに関しては一応予想をいくつか立てておくとして・・・まぁ向こうの情勢とかもチェックしておいた方がいいのかもな、召喚実験に参加してない他国の介入である可能性も捨てきれないし」


「あー・・・なるほどね、そう言う考えもあるのか・・・」


今まで国際的な問題に巻き込まれたことがなかった鏡花からすれば静希の考えは目から鱗だったのだろう、口元に手を当ててさらに思考を進めている様だったが、ここでそのことを予測していてもしょうがないのだ


相手の目的を予想することで、行動から次に相手が何をしたいのかを予測する


熟練した将棋や囲碁などの棋士は一手を見ただけで相手が何をしたいのかを予測することができるというが、静希や鏡花がやろうとしているのはまさにそれである


実際それができるかどうかはさておいて、予想するというのは非常に大事なことだ


もし相手が意味不明な行動や、こちらの想定外の動きをした時、事前に予想した目的の中からその動きにどのような意味が込められていて、相手が何をしようとしているのかをわずかながらにだが予測することができる


そうすれば相手にとって都合の悪い行動をとることで、その目的を阻むことだってできるのだ


動物などには通じない、思考する人間を相手にするからこそ必要なことである


今まで奇形種などの動物などを多く相手にしてきた鏡花と違い、静希は良くも悪くも人間相手の行動がやや多めである


経験の違いと言えばそこまでだが、そこは静希と鏡花の思考の方向性の違いだろう


鏡花は物事を理論的に考えることに終始し、あくまで理屈で物事を進める


対して静希は、物事を理屈で進めることは鏡花と同じだが、その理屈の中には狂気にも近い物が含まれる、その為普通の人間なら思いつかないような策や考えを思いつくのだ


「ねぇ静希、仮にその契約者が召喚自体が目的じゃない場合、私達はどう動くべきなの?」


「・・・ぶっちゃけ召喚自体は邪魔されてもいいから相手の目的を邪魔しながら捕縛したいな」


静希にとって今回の召喚実験は何ら興味のない事項であり、はっきり言えば後回しにして何の問題もない物である


これで召喚が邪魔され静希の評価が落ちたとすれば、それはそれで有難い、下馬評が高くていいというのは本当に実力があるものだけだ、静希のように大して実力もない人間にとっては高すぎる下馬評など邪魔でしかない


そう言う意味ではわざと召喚を潰させるのもありだと思ったこともある


だからと言ってさすがに露骨に手を抜くのもあまり良いことだとは言えないだけに複雑だった


「これは統一しておきたいんだけど、召喚の成功とか向こうの研究者の身の安全とかよりもカロラインの確保を最優先にしてほしいんだ、話したいことが山ほどあるし」


その話したいことというのは勿論彼女の背後関係についてだ


もしこれで彼女が口を割らないというのであれば静希の強引な質問で答えさせることもあるかもしれない


「相手は悪魔だってのに、無茶言うわね」


「まぁ無茶ではあるかもだけど、無理ではないだろうからな、なるようになるさ」


静希のいうように勝ち目が全くないというわけではない


こちらにも悪魔の契約者はいる、それにこちらには悪魔などの人外に対して友好的手段と言える静希がいるのだ


もしカロラインが悪魔の心臓に細工をして、悪魔を意のままに操っていたとしたら静希の能力でそれを解除することもできる、そこはメフィのお墨付きだ、実際試したことがないのが少し不安ではあるが、そこはメフィを信じるしかない


相手はエルフ、多勢に無勢で物量で押しつぶすことができればいいのだが、それができないことがあるのが能力戦だ


相性と言うものが重視される能力者同士の戦いにおいて絶対はない、だからこそ戦略が必要であり、連携が必要なのだ


なるようになると言ったものの、実際どうなるかは静希も分からない


実際起こってみてのお楽しみ、というには少々物騒な内容であるのはここにいる全員が把握していた






それぞれの実習の準備と、一日の猶予を終え、今年度最後の実習の日


普通の生徒たちは今日は授業があるというのに静希達だけ早朝に大荷物をもって校門前にやってきていた


静希と明利が一緒に到着すると、そこには珍しくすでに城島が立っている


いつもなら全員が集まったところで静希達を見つけてくるのだが、今日はどういう風の吹き回しだろうか


「おはようございます先生、今回もよろしくお願いします」


「あぁ・・・清水と響はまだか」


「多分もうすぐ来るかと・・・あ、来た!鏡花ちゃん!陽太君!」


明利が視線を向ける先には並んで校門へ向かってくる陽太と鏡花の姿を見つけることができる、二人とも静希と明利に負けず劣らず大荷物だ


「あー・・・ひょっとして僅差だった?早めに出たつもりだったんだけど・・・」


「二人ともおはよっす、先生もおはざっす」


二人の二人らしい反応に静希と明利は苦笑し城島はため息をつくと、紙を一枚取り出して読み上げ始める


「えー・・・これから一年B組一班の校外実習を始める、最後の実習だからくれぐれも気を抜かずに全力で事に当たること・・・それから・・・えー・・・もういいか」


恐らく校長か教頭あたりに渡された校外実習を始める際のありがたい長時間スピーチだろう、城島が途中で面倒くさくなって懐にしまったその紙にはびっしりと文字が記してあったのを静希は目ざとく見つけていた


城島が面倒くさがってくれて本当によかったと思える、これから長期の実習に行こうというのに出鼻をくじかれてはたまらないと言うものである


「ではこれから移動を開始する、各員忘れ物はないな?パスポートは全員持っているな?」


城島の言葉に全員が手元にパスポートを用意し提示する、これがなければ日本から出ることもできないのだから無くすわけにも忘れるわけにもいかない

とりあえず今のところは順調に事が進んでいるようで何よりである


「一番の心配だった響が大丈夫なら問題なさそうだな、それでは空港に移動するぞ」


「なんかひどい扱いな気がするぞ鏡花姐さん、こんな時俺はどうすればいいんだ」


「とりあえず笑っときなさい、とびっきり微妙そうな顔で」


鏡花の突き放す一言に陽太はいわれた通り微妙な笑みを浮かべていた、いわれた通りに微妙そうな顔を作ることができるというのもなかなか技量がいるような気がする


「ところで先生、大野さんたちは空港で合流ですか?」


「一応その手はずだ、今のところ予定変更の連絡などはない、予定通りの飛行機でフランスに向かうぞ」


フランスに向かうぞなどと言うことを簡単に言ってはいるが、一体何時間かかるかわかったものではない


イギリスのほぼ隣にある国であるためにイギリスと移動距離と時間はほぼ変わらないだろうことを考えると半日近く移動に費やすことになる


少しげんなりしてしまうが、飛行機に乗るのは実に久しぶりだ


静希以外の人間は日本での行動が主だったために飛行機に乗るのは海外交流会以来という事になる、その為三人とも少しテンションが高い


「そういやせんせー、フランスの土産って何がいいっすかね」


移動を開始して数十分、あと一時間も経たない内に空港に到着するであろう頃に陽太が自分の財布を見つめながらそんなことを聞いてきた


「なんだ藪から棒に」


「いやせっかくフランスに行けるんだし、なんか買っておきたいなと思いまして」


陽太の気持ちはわからないでもない、実際静希達はブリーフィングの際に土産物に関して調べていた


静希もイギリスには行ったことがあってもフランスはないのだ、興味がないと言えば嘘になる


「フランスか・・・私も一度しか足を運んだことがないな・・・」


「へぇ、その時は何を買ったんですか?」


まさか城島がフランスに行ったことがあるとは思わなかったために静希達は全員少し驚いた表情をする


城島は案外フットワークが軽い、そう思える一面だった


「その時は・・・何を買ったんだったか・・・食べ物だったのは覚えている」


「・・・ひょっとして結構前の話ですか?」


「あぁ、私が高校生の頃の話だ」


城島が高校生の頃の話、丁度城島の父親が再婚して間もないころだろうか、城島が一番荒れていた時期でもあるという


そんな時期にフランスに行くなどと一体何をしに行ったのだろうかと不思議になるが、とりあえずはスルーしておくことにした


「あぁ思い出した、確か高級チーズの詰め合わせだとかを買った気がする、なかなか美味かったな」


「チーズっすか・・・高級とか言われてもなんかパッとしないっすね」


食と言うものに強い関心のない陽太からすれば、食えて美味いか否かが食事において重要な点である、仮にそれが高級な素材を使われていようと、スーパーで売られている安物だろうとうまければ問題はないという思考をしているのだ


だからこそ高級品などの違いが分かるとも思えない、仕方がないと言えばそこまでだが鏡花とのこれからが不安になる一面だった


「まぁ、高級というだけあってスーパーなどで売っているそれとは違ったのを覚えている、どこが違うかまでは覚えていないがな」


その言葉に静希達は苦笑する、恐らく城島も陽太と限りなく似た部類であることがわかる一言だ、素材にあまり興味のない部類の人間であることが露見し、少し城島のことがわかったような気がした


土曜日なので二回分投稿


引き続き予約投稿中です、反応が遅れますのでご容赦ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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